「振るだけ」で発電する充電器を電力供給が安定しない地域へ

開発中の「with1」の写真

家電製品や日用雑貨などの設計・生産管理を行う「WAVE株式会社」(前会社名:株式会社bigiu)。同社は、すでに流通している製品を安価に作る「ジェネリック家電メーカー」であり、大場さんはその代表取締役社長を務めています。

ジェネリック家電とは、大手メーカーの特許に抵触しない形で、主に中国などで生産することにより低価格に抑えた家電のことで、最新の機能をそこまで必要とせず、価格を抑えたい消費者から人気を集めています。
大場さんが社長に就任してからは既存の事業に加え、新しい分野にもチャレンジしています。現在は、同社初となる自社オリジナル製品「with1」を開発中です。

「with1は、磁石の作用を利用し、振るだけで発電する充電器です。まずは中東やアフリカなど、電力供給が安定しない地域で、人々の役に立てば、と考えています。」

独立のきっかけは「保険会社時代に会った中小企業の経営者の真剣さや熱さに感銘を受けた」こと

感銘を受けたことについて語る 大場 哲也さん

大場さんは大学卒業後、大手保険会社と知的財産権のコンサルティングファームに計20年以上勤めました。しかし、46歳で脱サラ。経営者として独立します。

「仕事で中小企業の経営者と会うことが多かったのですが、とにかく皆さんかっこよかったんですよね。次第に、自分も『いつかは一国一城の主になりたい』と思うようになりました。もちろん苦労は半端じゃないでしょうが、自分で大きな判断を下して、自分で責任を背負う。その真剣さや熱さに感銘を受けました。」

大場さんが大切にするのは「第三者から見て、自分が楽しそうかどうか」。彼は、楽しそうに働く経営者の姿に憧れ、「事業継承」という形で独立を果たしました。

「最初は自分でゼロから事業を立ち上げようと事業計画のコスチュームをいくつも考えました。でも、どれもイマイチで(笑)。ただ、事業継承の話をいただいたときは、すでに売上もあるし、とはいえまだ規模は小さく伸びしろもありそうで、これは『面白そうだな』と思ったんです。」

最初の数ヶ月は、当時の事業者に同行しながら、事業の内容やマーケットの状況を把握。2013年の夏頃、正式に引き継ぐことを決めました。それから今に至るまで、彼は経営者として事業を徐々に拡大しています。

違う分野に飛び込んだからこそ、続く縁がある

仕事について話す大場 哲也さんの写真

独立という決断に至るまでには、もちろん不安もあったといいます。「独立すれば後がないし、命がけですから」と大場さん。

「最終的に独立に踏み切れたのは、やはり外から見て『楽しく働いている人』でいたかったから。楽しくないと、何事も長続きしませんよね。そして、チャンスは長く続けなければやって来ません。だからこそ、継続するための『楽しさ』が大切だと思うんです。」

一方で、失敗したときのことも想定し、「まずは従業員に迷惑をかけない形で事業を閉じること。そのためにも、責任を取れる範囲の借金を超えたらすぐに手を引くこと」をボーダーラインとして経営しています。

「今の事業を継いでから、従業員募集のためにハローワークによく行くのですが、求人って本当にたくさんあるんですよね。ですから、もしこの事業がダメになっても、自分が再就職するチャンスはたくさんあるな、と。変な社長ですよね(笑)。」

大場さんは保険からコンサルティングファーム、そしてジェネリック家電と、その度に異分野へ転身しました。「同じ業界で転職や独立をすると、競合になることもあり、それまでの人の縁が切れてしまうかもしれません。私の場合、違う分野だからこそ、今もご縁が続いてますし、いろいろと助けてもらえました」と言います。実際、事業継承の話もかつての保険会社の上司からもらったとのこと。

2013年に引き継いだこの事業は新たなフェーズを迎えています。冒頭で紹介したwith1の販売です。「すでに海外で大きな取引が生まれ始めているので、販路を拡大したいですね。」と意気込みます。クラウドファンディングの活用にもチャレンジし、見事に資金を集めました。

「資金をいただけたことはもちろん、日本でこれだけ支持していただいたことが嬉しかったです。日本は電力供給が安定していて、with1のマーケットとしては厳しいと思っていたので。今後、先進国で発売する際の"勇気"にもなりました。」

さらに、with1に使われる発電機能について、ドローンへの搭載や波力発電への応用など、横展開も考えているとのこと。大場さんの今後のプランは尽きません。

  • 取材協力:セキュリテ(ミュージックセキュリティーズ株式会社)

大場さんからのメッセージ

あまり無責任なことは言えませんが、とにかく自分と自分の大切な人が納得してくれたら、思い切って前に進んでほしいですね。これに尽きると思います。ちなみに、私がよく思い浮かべるのは「わがままたれ」という言葉。自分の人生、最後に決めるのは自分だと思うので、納得のいく決断をしていただければと思います。

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