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2019.12.25

#9 スウェーデン×ヤンソンの誘惑 ~アンチョビとポテトのクリーミーグラタン~

スウェーデン×ヤンソンのグルメ 「アンチョビとポテトのクリーミーグラタン」

世界の経済を、ご当地グルメを通してひもとく連載企画。今回取り上げる国はスウェーデン。福祉のイメージが強いですが、実はイノベーション力があるIT国家です。
今回紹介するのは、伝統的な家庭料理「ヤンソンの誘惑」。スウェーデンのクリスマスの定番メニューでもあるアンチョビとポテトのグラタンです。
さて、どんなおいしい関係があるのでしょうか。

経済・福祉が充実した幸福度が高い国

スウェーデンは、スカンジナビア半島に位置する北欧三国のひとつです。人口は約1,022万人と神奈川県よりやや多い程度ですが、面積は日本の1.2倍。
デンマーク、ブルガリア、チェコと同じくユーロ圏外のEU(欧州連合)加盟国です。

2018年の一人あたりGDP(国内総生産)は、欧州諸国の中で7位と高いランクにあり、経済面で豊かな国です。

出典:欧州統計局

また、「世界幸福度ランキング2019」でも7位に位置し、福祉面も充実した国であることがわかります。
ちなみに、日本は58位です。

世界幸福度ランキング2019
1位 フィンランド
2位 デンマーク
3位 ノルウェー
4位 アイスランド
5位 オランダ
6位 スイス
7位 スウェーデン
8位 ニュージーランド
9位 カナダ
10位 オーストリア

出典:Sustainable Development Solutions Network「World Happiness Report 2019」


スウェーデンの幸福度の高さは、世界トップレベルの社会福祉制度がひとつの要因です。

たとえば、16歳までの児童手当給付、18歳未満の子どもに係る薬剤の本人負担無料、マンモグラフィー(乳房X線撮影)無料、85歳以上の高齢者の外来診療無料など。
子育てや医療に関する福祉が充実しています。

消費税は25%で、物価も高い国ですが、こうした社会保障のおかげで生活の安心感も高く、個人消費を支えています。

子育て支援などの充実した福祉のおかげで仕事と育児の両立ができるスウェーデンでは、家庭の時間を楽しむ文化が浸透しています。
今回紹介する「ヤンソンの誘惑」は、そんなスウェーデンを代表する伝統的な家庭料理です。

この変わった名前の由来は、諸説あるようですが、ベジタリアンだった宗教家・ヤンソンさんが、美味しそうな料理の誘惑に勝てずつい食べてしまったから……というエピソードが有力な説として伝わっています(スウェーデンではヤンソンはポピュラーな苗字で、このヤンソンさんはムーミンの生みの親トーベ・ヤンソン氏とは別人です)

競争力あるグローバル企業を生み出し続ける国

スウェーデンは、ボルボ、エリクソン、HM、イケアといった有名なグローバル企業を多数輩出しています。

こうしたグローバル企業の国際競争力を支えている要因のひとつが、政府の産業支援策です。

具体的には、産業に必要な航空、電力、郵便などのインフラコストを下げることで、企業がより次世代事業開発費などに資金を投与できる仕組みを作っています。

また、政府は長期にわたる財政黒字目標を定め、好況時の税収を無駄遣いせずに蓄えており、経済低迷期に景気対策として財政出動することで、経済の安定化を図っています。

つまり、景気が良い時は、民間企業が経済成長の支柱となって所得税や法人税を多く支払い、国の財政を支えます。
そして、景気が悪い時は、政府が蓄えた財政黒字分を使って景気刺激を実施します。
政府と企業の二人三脚で景気を支えているのです。

先ほど紹介したように、EU加盟国でありEU域内の貿易に関税がかからない点も、グローバル企業を生み出すのに有利に働いています。

2019年にForbesが発表したBest Country for Business(ビジネスに最適な国)ランキングでは、スウェーデンは2位にランキングされています。
ビジネスに適した環境を活かして、新たなグローバル企業が生まれる可能性を秘めています。

誰もが働きやすい!福祉&支援の充実で労働力を確保

スウェーデンは、職業訓練や就業支援制度も手厚い国です。

労働力をより生産性の高い産業や成長企業へ移動させる方が得であるという考えから、スウェーデンは、衰退産業・企業を救済「しない」産業政策をとっています。
しかし、失業者は充実した職業訓練や再就職支援が受けられるため、生産性の高い産業や成長企業へとスムーズに移動しやすくなっています。

一度仕事を失った人が早期に労働市場に復帰できる、「トランポリン型社会」を実現しているのです。

職業訓練の中でも注目されるのが、2009年に始まったYH制度と呼ばれる、高校卒業者を対象とする2年間の高等職業教育システムです。

馬の蹄鉄をつくる仕事からパイロットまで、約240種類の職業に対応したコースがあり、座学による理論の習得と企業での実地研修を組み合わせた実践的な学びの場となっています。

産業界のニーズを丁寧にくみ取り、カリキュラムに反映させることで、卒業後の高い就職実績に結び付けています。

また、スウェーデンは女性の労働力率が高いのも特徴です。
女性の労働力率(経済活動を行っている人口÷全人口)70.2%で、これを超えるのはエチオピアの74.3%、ベトナム71.5%のみです。
ちなみに、日本は51.1%、米国は57.0%、英国は57.8%です。

この背景には、女性が結婚・出産をしても働きやすい環境が整っていることがあげられます。
育児休業中の480日分の所得支援のほか、男女平等型の育児休業制度も定着しており、男性も育児休業をとることが一般的となっています。


労働時間の男女格差も小さく、全産業平均は男性週37時間、女性34時間。その差は3時間となっています。

主要国の男女間労働時間の差を見ると、

日本:11時間(男性44時間、女性33時間)
米国:5時間(男性39時間、女性34時間)
英国:8時間(男性40時間、女性32時間)

となっており、スウェーデンの男女差がいかに小さいかがわかります。

さらに、高齢者の就業率が高いことも見逃せません。長く働き、公的年金の受給を先延ばしにすれば受給額が増えるなど、就労意欲を削がない制度設計になっています。

高齢者を雇った企業には社会保険料減免などのインセンティブが用意されており、高齢者を雇いやすい仕組みづくりがとられています。

失職者や女性、高齢者も働きやすい環境が整っていることで、豊富な労働力が揃うスウェーデン。
その労働力が、高い経済力を支える基盤となっています。

国をあげたイノベーションでさらなる成長へ

スウェーデンには、イノベーション庁があり、国を挙げてイノベーションに力を入れています。

スウェーデン人起業家が共同起業したスカイプ・テクノロジーズや、音楽配信サービス「Spotify」を提供するスポティファイ・テクノロジーなどの有名IT企業がスウェーデンから生まれています。

2011年にマイクロソフト社に買収され、同社の一事業になっています。



人口比率に対するユニコーン企業(評価額が10億ドル以上の非上場ベンチャー企業)数の割合が高く、スウェーデンの首都ストックホルムは、シリコンバレーについで2位。
また、インターネットの平均スピード(インターネットインフラの整備状況)も早く、韓国に次いで2位となっています。

さらに、欧州委員会が毎年実施している「欧州イノベーション・スコアボード」でスウェーデンはトップに位置づけられています。

イノベーションの力を活かし、次世代通信規格5Gの開発にも取り組んでいます。20153月には、民間企業のボルボ建設機械などとスウェーデン王立工科大学が、5Gの共同開発計画を立ち上げました。

また、国連が採択した「世界をよりよく変えるための17の目標」のうちSDGs(持続可能な開発目標)の達成率は、2019年時点で2位です。
福祉とイノベーションを軸に、世界的なトレンドであるサスティナビリティ(持続可能性)や環境保全も意識しながら、経済発展を目指しています。

まとめ

福祉の充実により安心して働ける基盤と、力強いイノベーション力をもとに、これからもグローバルに発展を続けていくであろうスウェーデン。

クリスマスなど家族団らんの時間に食べられることが多い「ヤンソンの誘惑」は、あたたかい家庭を象徴する伝統文化として大切にされていくことでしょう。

伝統と革新を両輪として歩んでいくスウェーデンは、中長期的な目線で投資先として有望な国のひとつといえます。

スウェーデンのおいしいレシピ
「ヤンソンの誘惑」

スウェーデンのおいしいレシピ 「ヤンソンの誘惑」

材料(3~4人分)
じゃがいも4~5個、玉ねぎ1個、アンチョビ5~6枚、生クリーム200ml、塩少々、こしょう適宜、イタリアンパセリ(みじん切り)適量

作り方

1)じゃがいもは皮をむいて5mm角の拍子木に切る。玉ねぎは繊維に沿って薄切りにする。アンチョビは、粗みじん切りにする。オーブンを200度に予熱する。

2)フライパンにサラダ油少々(分量外)と玉ねぎを入れる。しんなりとし、ほんのり茶色くなるまでよく炒める。

3)耐熱容器にじゃがいも、塩、2の玉ねぎ、アンチョビを2回ほど重ねる。生クリームを注ぐ(温めた生クリームにすると加熱時間短縮になる)。

4)オーブンに入れて30分前後加熱する。じゃがいもに火が通り、表面がこんがりしたら完成。 最後にこしょうとパセリをふる。

※2019年12月現在の情報です。今後、変更されることもありますのでご留意ください。



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