一生にかかる医療費のうち、約6割が定年後に!

定年後の医療費

約1,600万円

  • 健康保険に加入している場合、自己負担率は最大3割。

当たり前のことですが、病院や診療所で治療を受けると、お金を支払います。特に、収入の減額が見込まれる定年後に、どれくらいの医療費が必要になるのかが気になる人も多いのではないでしょうか。

厚生労働省によると、日本人の生涯医療費は、約2,700万円(男性 2,584万円/女性2,822万円)。このうち約6割が、65歳以降にかかる費用(男性 1,450万円/女性1,703万円)となっています。やはり、高齢になると治療を受けることが多いのですね。

ご存知のとおり、私たちは健康保険に加入しており、上記の金額をすべて支払うわけではありません。年齢や所得によって異なりますが、かかった医療費の1割∼3割が自己負担となります。自己負担額を想定して、備えるのが良いでしょう。

さらに、その自己負担額には「高額療養費制度」によって1カ月ごとの上限額が設けられていて、それを超える高額な医療費を支払う心配はいりません。
健康保険の自己負担割合や高額療養費制度の自己負担額は、年齢や所得によって異なるので、押さえておきましょう。年齢とともに自己負担の割合は減るものの、定年後は現役時代よりも収入が少なくなります。貯蓄など流動性のある資産で、ある程度の医療費を用意しておくと安心です。

●定年後の健康保険・高額療養費制度の自己負担額

下の表は横にスクロールできます

年齢 69歳以下 70~74歳 75歳
健康保険の自己負担率 3割 2割(現行並み所得者は3割) 1割(現行並所得者は3割)
高額療養費制度の自己負担額(世帯ごとのひと月の上限額) 80,100円+
(医療費-267,000)×1%

(適用区分:現役並み所得者<年収約370~約770万円 >の場合)
57,600円

(適用区分:一般<年収156万~約370万円 >の場合)

入院したらどれくらいお金がかかる?保険適用外の医療費にも備えを

遠い道のりにむかって歩く定年後の夫婦のイラスト

  • イラストレーション:Hama-House

注意しておきたいことは、健康保険適用外のサービスは全額自己負担になること。具体的には、入院時の食事代や差額ベッド代、保険適用外の治療費や手術代、先進医療などが挙げられます。

そこで、今回は、悪性新生物(がん)・脳卒中(脳血管疾患)・心疾患(虚血性心疾患)・骨折で入院した場合の自己負担額のシミュレーションを行いました。もちろん、人それぞれ症状や入院期間などは異なりますが、1つの目安として参考にしてみてください。

●定年後の入院費について自己負担額のシミュレーション(70歳の場合)

下の表は横にスクロールできます

悪性新生物
(がん)
脳血管疾患 虚血性心疾患 骨折
1日あたりの診療費※1 64,115円 46,205円 138,218円 45,383円
平均在院日数※2 18.7日 89.5日 20.3日 37.9日
入院の診療費合計 1,198,950円 4,135,347円 2,805,825円 1,720,015円
診療費の自己負担額 57,600円 172,800円 57,600円 115,200円
差額ベッド代※3+食費※4(7,524円/日×平均在院日数) 140,698円 673,398円 152,737円 285,159円
自己負担額合計 198,298円 846,198円 210,337円 400,359円
  • 本シミュレーションは以下の資料を元に計算。
  • 厚生労働省「医療給付実態調査 報告書 平成28年度」調査結果の概要より
  • 厚生労働省「患者調査 平成26年度」表6より
  • 厚生労働省「主な選定療養に係る報告状況 平成28年7月1日現在」より
  • 厚生労働省のホームページより
  • *自己負担額について、適用区分は「一般所得者」で試算。小数点以下は切り捨て。

生命保険文化センター「生活保障に関する調査」によると、差額ベッド代や食費などを含んだ入院時の1日あたりの自己負担額は平均19,800円。同資料の入院平均日数19.1日でした。単純に計算すると、19,800円×19.1日=37万8180円。1度の入院にかかる費用は、平均約37万円となります。
一概に「いくら用意しておけばOK」とは言えないものの、保険適用外の費用を含めて、入院すると1カ月あたり40万円前後のお金が必要になると考えておくと無難でしょう。

また、「先進医療」が気になる人もいるかもしれません。
2018年現在、先進医療は102種類。平成28年7月1日∼平成29年6月30日に実施された先進医療で1番多かったものは「多焦点眼内レンズを用いた水晶体再建 (白内障の治療)」 が14,433件(581,224円/件)。続いて「前眼部三次元画像解析 (眼の検査方法) 」が11,195件(3,484円/件)。「陽子線治療 (がんの治療) 」が2,319件(2,765,086円/件)となっています。
万が一に備えたい人は、民間の医療保険などで、先進医療特約をつけると良いでしょう。その際は、給付の条件をよく確認しておくことが大事です。

適度な運動と、定期的な健康診断で病気を未然に防ぐ「未病」で、健康寿命が延びるという研究が進んでいます。できるだけ健康を維持しながら、もしものときのために医療費を準備しておくと良いでしょう。

ファイナンシャルライター 瀧 健

『PRESIDENT Online』などの経済系Webメディアでも多数の執筆協力経験をもつ。ライフプランや資産運用の提案が得意。自らも株式・債券・投資信託などの運用を行っている。社会保障にも詳しい。

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