iDeCoの3つの節税メリットをおさらい
まずはiDeCoの運用で得られる節税メリットを、時系列順におさらいしましょう。
1.iDeCoの掛金は全額所得控除となる
iDeCoでは毎月5,000円から、1,000円単位で掛金を決め、積み立てていくことができますが、掛金の全額が所得控除の対象になります。
所得税や住民税は、課税される所得額に決まった税率を掛けて計算されます。そのため、所得額からiDeCoの掛金が控除されると、所得税と住民税の負担が減ります。
2.iDeCoの運用益が非課税になる
iDeCoは、運用の成果に応じて利益(運用益)が発生します。
定期預金や一般的な投資信託の場合、運用益は課税対象となり、20.315%の税金がかかります。そのため、利益が増えるほど税金の負担も大きくなります。
一方、iDeCoは運用によって得られた利益は非課税なので、税金の負担が重くなる心配はありません。
運用益はそのまま再投資されるので、税金の負担を抑えたまま、より効率的に積み立てていくことができます。
3.積立金を受け取るときに大きな控除枠を使える
iDeCoは、60歳からそれまでの積立金を、年金または一時金として受け取ることができます。
受取時に適用される控除は受給方法によって異なり、年金として受け取る場合は「公的年金等控除」、一時金として受け取る場合は「退職所得控除」がそれぞれ適用されます。
年金として受け取る場合は、公的年金等控除が適応されます。公的年金等控除の計算方法は、受け取る方の年齢や、公的年金等の収入金額の合計額、それ以外の所得の合計金額などによって異なります。
公的年金等に係る雑所得以外の合計所得金額が1,000万円以下の場合、公的年金等控除額は以下の通りです。

※国税庁「公的年金等の課税関係」を参照
公的年金等に係る雑所得を計算する場合の計算式は以下のようになります。
公的年金等に係る雑所得=公的年金等の収入金額の合計額×割合-控除額
例えば、公的年金等の収入金額合計が300万円の場合、65歳未満と65歳以上ではそれぞれ次のように「公的年金等に係る雑所得」が計算されます。
① 65歳未満の場合
300万円×75%-27万5,000=197万5,000円
② 65歳以上の場合
300万円×100%-27万5,000円=272万5,000円
一方、一時金として受け取る場合は退職所得控除が適応されます。退職所得控除の計算式は以下の通りです。

※国税庁「退職金を受け取ったとき(退職所得)」を参照
職業別! iDeCoで節税できる金額をシミュレーション
iDeCoで節税できる金額は、掛金による違いだけでなく、職業によっても差が出ます。
以下では、会社員・公務員・自営業・専業主婦(主夫)の4つのモデルケースを使用して、iDeCoで節税できる金額をシミュレーションしてみましょう。
なお、当シミュレーションでは運用益を3%、積立金を一時金として受け取る場合を想定します。
※iDeCo以外の退職所得はないものとして計算しています。
ケース1.会社員
◯積立時の節税効果
60歳までの掛金に対する所得税・住民税の節税額
(所得税3,000円+住民税6,000円)×35年=
31万5,000円◯運用時の節税効果
利回り3.0%、運用期間35年の運用益:1,586,409円
→(通常20.315%の税金がかかるので)
節税額:32万2,279円◯受取時の節税効果(控除額)
積立金2,100,000円+運用益1,586,409円
=368万6,409円を全額非課税受取▼会社員の方はこちらも確認
会社員のiDeCo(イデコ)活用法! 加入条件や上限額、メリットは?
ケース2.公務員
◯積立時の節税効果
(所得税7,200円+住民税1万4,400円)×30年=
64万8,000円◯運用時の節税効果
利回り3.0%、運用期間30年の運用益:2,641,683円
→(通常20.315%の税金がかかるので)
節税額:53万6,658円◯受取時の節税効果(控除額)
積立金4,320,000円+運用益2,641,683円
=6,961,683円を全額非課税受取▼公務員の方はこちらも確認
公務員はiDeCo(イデコ)に加入すべき? 退職金のかわりになる?
◯積立時の節税効果
(所得税13万8,000円+住民税6万円)×20年=
396万円◯運用時の節税効果
利回り3.0%、運用期間20年の運用益:438万3,027円
→(通常20.315%の税金がかかるので)
節税額:89万412円◯受取時の節税効果(控除額)
積立金12,000,000円+運用益4,383,027円
=16,383,027円を全額非課税受取
※勤続35年の場合を想定
ケース4.専業主婦(主夫)
◯積立時の節税効果
掛金に対する所得税・住民税の節税額:0円
(専業主婦・主夫は所得税・住民税がかからないため)
◯運用時の節税効果
利回り3.0%、運用期間25年の運用益:積立金12,000,000円+運用益4,383,027円
→(通常20.315%の税金がかかるので)
節税額:58万7,463円◯受取時の節税効果(控除額)
積立金60,000,000円+運用益2,891,772円
=8,891,772円を全額非課税受取▼主婦(主夫)の方はこちらも確認
主婦(主夫)もiDeCo(イデコ)を始めるべき? メリット・デメリットを解説!
まとめ
iDeCoを運用すると、掛金が全額所得控除されるほか、運用益が非課税になったり、受取時に各種控除が適用されたりと、税制面で大きなメリットがあります。
ただ、いくら節税できるかは年収や毎月の掛金などによって異なります。
掛金の上限額は職業によって異なるので、iDeCoでどのくらい節税できるか気になった方は、自分の職業や掛金、年収などから計算してみましょう。
iDeCoでどのくらいの節税につながるかは、こちらでシミュレーションが可能です。
メリットを確認!税軽減シミュレーション:三井住友銀行なお、iDeCoによる節税効果を得るには年末調整を行う必要がありますので、会社員や公務員の方は忘れずに申請しましょう。
会社員や公務員の方の年末調整について、くわしくはこちらで説明していますので、気になった方はぜひご覧ください。
iDeCo(イデコ)は年末調整が必要? 控除を受けるといくら戻るのかを解説
※2021年6月現在の情報です。今後、変更されることもありますのでご留意ください。
- 執筆:金子 賢司
- 個人・法人のお金に関する相談、北海道のテレビ番組のコメンテーター、年間毎年約100件のセミナー講師なども務めるファイナンシャルプランナー。健康とお金、豊かなライフスタイルを実践・発信している。CFP、日本FP協会幹事。
https://fp-kane.com/