「どういうこと? 」が口癖のことこさん。iDeCo(イデコ)に加入したものの、掛金が変更できるのか気になっています。
そこで、FP(ファイナンシャルプランナー)にiDeCoの掛金変更について教えてもらうことにしました。
iDeCoは掛金を変更可能
iDeCoは途中で掛金を変更することも可能です。ただし、掛金変更は年1回(12月から翌年11月)までと決まっています。
たとえば、2023年2月に掛金を変更したら、2023年11月までは掛金の変更はできなくなります。2023年12月以降は、また掛金の変更が可能です。
掛金変更のほかに、以下の変更もできます。こちらの変更は、回数の制限はありません。
● 住所・氏名の変更
● 種別の変更
● 勤務先の変更
● 引落口座の変更
● 運用商品の種類・配分の変更
次項以降で、iDeCoの掛金変更についてくわしくみていきましょう。
【手続き方法】iDeCoの掛金変更をしたい
では、実際にiDeCoの掛金変更の手続き方法を解説します。
STEP①掛金額変更届を入手する
iDeCoの掛金を変更したい場合、まずは加入先の金融機関などから「加入者掛金額変更届」を入手します。入手の方法は金融機関によって異なりますが、Webでダウンロードできたり電話で取り寄せたりすることができます。
三井住友銀行では加入者専用サイトおよびコールセンターでお問合せ頂けます。
▼三井住友銀行でiDeCoをご加入頂いている方へ
三井住友銀行のiDeCo(イデコ)ご加入後の各種手続 : 三井住友銀行ここで注意したいのは、
「加入者掛金額変更届」は加入者区分によって種類が違うことです。年金区分に応じて、第1号被保険者用・第2号被保険者用・第3号被保険者用、任意加入被保険者用の4種類があります。
自分の加入区分に応じた書類を入手するように注意しましょう。
STEP②掛金額変更届に記入し提出する
必要な「加入者掛金額変更届」を入手したら、見本を参考に記入していきます。iDeCo公式サイトの「
加入者の方へ」では、被保険者の区分に応じた見本が提示されていますので、参考にして書類を完成させましょう。
完成させた書類は、指定された送付先に提出します。
提出時期によって、掛金変更の時期も変わるため、早めの手続きがおすすめです。
STEP③掛金額が変更される
提出した書類の確認が終わると、iDeCoの掛金額が変更されます。通常、毎月の掛金は登録した銀行口座からの振替によって翌月26日に納付します。ただし、26日が休業日の場合は翌営業日が振替日です。
各金融機関によって、掛金変更のタイミングは異なります。たとえば、毎月14日までに「加入者掛金額変更届」を受領した場合、翌月分から変更される金融機関の場合で考えてみましょう。
この場合、4月14日までに金融機関が変更届を受領すると、翌月の5月26日の振替から掛金の変更が適用されます。
変更届の提出のタイミングによっては、掛金変更が翌々月になってしまうケースもあるため、早めに書類を提出するようにしましょう。
iDeCoの掛金変更する前に注意したいこと
iDeCoの掛金は変更可能ですが、一方で注意したいポイントもいくつかあります。
掛金には上限がある
iDeCoの掛金は自由に設定できますが、拠出額には上限があることを忘れないようにしましょう。掛金の上限は、加入資格によって異なります。
加入資格 |
掛金の上限(月額) |
第1号被保険者・任意加入被保険者 |
6.8万円 |
第2号被保険者 |
企業年金制度のない会社員 |
2.3万円 |
企業型DCのみに加入している会社員 |
2.0万円 |
・DBのみに加入している会社員 ・DBと企業型DCに加入している会社員 ・公務員 |
1.2万円 |
第3号被保険者 |
2.3万円 |
上記表の上限を超えて、掛金を変更することはできません。
郵送での対応になる
iDeCoの掛金変更の手続きは、郵送での対応となります。Web上や電話で手続きを完了させることはできません。
必ず必要書類を手元に用意し、記入後金融機関へ送る必要があります。一般的に、書類を送り返す際の返信用封筒が同封されているため、郵送代はかかりません。ただし、返信用封筒をなくしてしまうと封筒や切手を用意しなくてはならないため注意しましょう。
掛金の変更は年1回のみ
繰り返しになりますが、掛金の変更は年1回のみです。1月から12月ではなく、12月から翌年11月までの1年間で変更が1回だけなので注意が必要です。
たとえば、2023年5月に掛金を変更すると、12月まで次回の変更を待たなくてはいけません。掛金を変更する前に、しっかり考えてから手続きしましょう。
iDeCoの特徴を活かしきれなくなる可能性も
iDeCoは分散投資・長期投資・継続投資が特徴です。長期的に運用することで、複利効果やドルコスト平均法といった効果を活かした投資が可能となります。
しかし、頻繁にiDeCoの掛金を変更すると上記の効果や特徴を活かしきれなくなってしまいます。iDeCoの掛金変更を検討する際は、メリット・デメリットを十分考慮することが大切です。
一時的な相場の流れに一喜一憂しない
前述のとおり、iDeCoは長期投資です。一時的な相場の流れに一喜一憂し、掛金を変更すると、長期投資の効果を十分に得られなくなってしまいます。
相場が気になっても、一時的な上がり下がりはあまり気にせず、長期的な視点を持ち投資していくことが大切です。
iDeCoの掛金変更はいつする? 見直したいタイミング
iDeCoの掛金を変更するタイミングとして、いつが適しているのでしょうか。掛金を見直したいタイミングとあわせて解説します。
ライフステージに変化があったとき
結婚や出産、子どもの進学、マイホームの購入など、ライフステージに変化があったときもiDeCoの掛金変更のタイミングです。
「子どもが独立して手が離れた」あるいは「支出が多くなり掛金の支払いがきつい」といったタイミングで、掛金を増額・減額して調整します。
収入の変化があったとき
ライフステージの変化にも当てはまりますが、転職などで収入の変化があったときもiDeCoの掛金を見直しましょう。
転職して収入が増えたのなら掛金を増やして将来に備え、収入が減ってしまったら負担を減らすために掛金も減額を検討してもよいでしょう。
iDeCoの掛金を停止することも可能
iDeCoの掛金を支払うのが厳しい場合、支払いを停止することも可能です。ただし、掛金は60歳までは引き出せないことに注意しましょう。
万が一、iDeCoを停止する場合は加入先の金融機関などから「加入者資格喪失届」を入手し、必要事項を記入のうえ提出しなければなりません。届け出が受理されると、それまで積み立てた掛金で運用することになり、新たな掛金の振替は不要です。
iDeCoの掛金を停止した場合、再開させることも可能です。iDeCoの再開には、再度加入申し込みが必要となります。
自分の意志ではなく停止させられる場合もある
実は、iDeCoの掛金を停止したいという意志がなくても、自動的に停止されてしまうこともあります。たとえば、以下のケースです。
・国民年金の保険料に未納が判明した
・加入資格の状況が変化したのに手続きをしなかった
上記に該当する場合、iDeCoの掛金の還付または一時停止となる可能性があります。
まとめ
iDeCoの掛金は年1回までなら変更が可能ですが、掛金には上限があるため注意しましょう。
また、iDeCoの特徴である長期投資や分散投資は、掛金の変更によって十分に活かせなくなる可能性があります。掛金変更の際は、よく考えて手続きを進めましょう。
もし掛金を支払うのが難しくなったのなら、iDeCoの停止も可能です。資産は原則60歳まで引き出せませんが、掛金の振替は止められます。また、それまでの掛金はそのまま運用されます。
iDeCoの掛金変更は、この記事で紹介した注意点を踏まえたうえで、必要なタイミングで行いましょう。
※2023年5月現在の情報です。今後、変更されることもありますのでご留意ください。
- 執筆: 大木 千夏(おおき ちなつ)
- 独立系FP、金融ライター。もともとは臨床検査技師として病院に勤務、その後フリーランスライターとして独立した。ライターとして活動するうち、金融業界に興味を持ちAFP取得後、独立して横浜に事務所開設。
2級ファイナンシャル・プランニング技能士、AFP。
https://oki-fp.jp/