
くらしのマネー辞典
2020.12.25 更新
2018年の税制改正で制度に変更があった「配偶者控除」。2020年の改正では、所得控除や基礎控除に変更がありました。配偶者控除にはどのような影響があったのかチェックしていきましょう。
パートタイムで働く方がいるご家庭では、税金や扶養の制度が働き方に影響を与えていることも多いと思います。配偶者だけでなく、アルバイトをしているお子さまも同様です。
たとえば、ご夫婦で、夫が会社員で妻がパートで働いている場合、4つの壁があるとされています。
パートの 年間収入 |
① 住民税 | ② 所得税 | ③ 社会保険料(*1) | ④ 配偶者控除・配偶者特別控除 (*2) |
---|---|---|---|---|
100万円以下 | ○支払わない | ○支払わない | ○支払わない | ○配偶者控除適用(定額) |
100万円超〜 103万円以下 |
×支払う | |||
103万円超〜 130万円未満 |
×支払う | ○配偶者特別控除適用(定額) | ||
130万円〜 150万円以下 |
×支払う | |||
150万円超〜 201万6,000円未満 |
△配偶者特別控除適用(段階的に減額) | |||
201万6,000円 〜 | ×控除適用なし |
① 住民税 | |
---|---|
100万円以下 | 〇(支払わない) |
100万円超~ | ×(支払う) |
② 所得税 | |
---|---|
103万円以下 | 〇(支払わない) |
103万円超~ | ×(支払う) |
③ 社会保険料(*1) | |
---|---|
130万円未満 | 〇(支払わない) |
130万円~ | ×(支払う) |
④ 配偶者控除・配偶者特別控除(*2) | |
---|---|
103万円以下 | ○配偶者控除適用(定額) |
103万円超~150万円以下 | ○配偶者特別控除適用(定額) |
150万円超~201万6,000円未満 | △配偶者特別控除適用(段階的に減額) |
201万6,000円~ | ×控除適用なし |
*1:従業員501名以上(2022年からは101人以上)の企業のパートの場合は、年間収入106万円以上で支払う。
*2:納税者である夫の収入に応じて金額は変動する。
1つ目は、住民税の壁。妻の年収が100万円を超えると、所得に応じて支払う必要があります。
2つ目は、所得税の壁。こちらは妻の年収が103万円を超えると、支払う必要があります。
3つ目は、社会保険料の壁。こちらは妻の年収が130万円(従業員501人以上※の企業で働くパートタイム労働者の場合は106万円)以上になると、夫の社会保険の扶養から外れ、妻自身で加入する必要が出てくるため、負担が増えます。
※2022年10月以降は101人以上
●改正のポイント1
夫が一定所得以上の場合、配偶者控除が引き下げられた。
<影響が大きい家庭>
夫の所得が900万円超の家庭(増税となる可能性あり)
改正前は、一律38万円でしたが、夫の所得が900万円(給与所得のみの場合、年収で1,095万円)を上回る場合、段階的に引き下げられ、所得が1,000万円(同じく年収で1,195万円)を上回る場合、適用外となりました。これは、配偶者控除の額が上限となっている配偶者特別控除にも影響があります。
●改正のポイント2
パートの年収が103万円超から150万円以下の場合の配偶者特別控除が一定額(配偶者控除と同額)になった。
<影響が大きい家庭>
夫の所得が900万円以下で、妻の年収が103万円超〜約201万6,000円未満の家庭(減税となる可能性あり)
改正前は、夫の所得が900万円(給与所得のみの場合、2020年の年収で1,095万円)を下回る場合、妻の年収が103万円を超えると、配偶者特別控除の減額を気にする必要がありましたが、改正後は150万円までは控除の減額を気にすることなく働けるようになりました。150万円を超えた場合は、これまで同様、妻の年収に応じて配偶者特別控除は段階的に減額され、201万6,000円以上で0になります。
先述したパートタイムで働く場合の4つの壁のうちの1つ、配偶者控除・配偶者特別控除が改正されたことで、減税となる方、増税となってしまう方、両方がいるでしょう。ただし、どちらの場合も配偶者控除・配偶者特別控除を気にしてパートの就業調整をしなければいけない範囲が緩和されたことは事実です。
個人的には、働く時間を調整しながら、上手に制度を活用するという手もありますが、長い目で見ると、フルタイムで働くことをおすすめします。
ライフステージによって、たとえば小さなお子さまがいたり、介護などでお仕事に制限がかかったりする場合もあるため一概には言えませんが、短期的な損得だけではなく、長期的な視野も取り入れて、何が本当に必要なのかを検討してみる価値はあると思います。
たとえば、扶養の第3号被保険者だと、保険料を払わなくても済みます。一方で、社会保険が備わっているところで働けば、自分で保険料を納める必要はありますが、生涯で受け取れる老齢厚生年金がプラスされ、大きく変わります。
人生100年時代と言われる今、長生きした場合には世帯の資産が枯渇するケースも出てくるでしょう。そうならないためにも、できる限り年金を上乗せしておくことが得策です。
また、長生きに備えるという意味で、働き続けられるスキルを身につけることも重要。職場で出会った方と家族ぐるみでお付き合いできるなど、良好な人間関係が築けたら老後もより豊かになるのではないでしょうか。
※2020年12月現在の税制です。今後の税制改正にともない、変更されることもありますのでご留意ください。税金に関しては専門家にご相談ください。
※本記事は2018年5月30日に公開した内容を、2020年3月4日、2020年12月25日に更新して掲載しています。
執筆:水野 綾香
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