くらしのマネー辞典

2019.2.6

もうすぐ新生活。金利だけでは決められない!? 住宅ローンの選び方

住宅購入を検討する男女の写真

そろそろ春の兆しも感じる今日この頃。春といえば、お子様の入学や転勤など新生活が始まる季節。そうした変化に合わせて、住宅購入を検討する方もいることでしょう。住宅購入のツボともいえるのが住宅ローン選びです。金利の低さだけで判断するのは早計です。冷静に自分に合った住宅ローンを選びましょう。

みんなどれくらい借りている? 金利タイプは?

まずは、住宅ローンの借入について、データを見てみましょう。住宅ローンを借りる人は、どれくらいの額を借りていて、どのような金利タイプを選んでいるのでしょうか?

●物件タイプ別の借入額と購入額(全国平均)

物件タイプ別の借入額と購入額(全国平均)の表物件タイプ別の借入額と購入額(全国平均)の表

住宅金融支援機構「2017年度 フラット35利用者調査」によると、借入額は物件タイプにより幅があります。最も高いのは新築マンションの3,476万円で、最も低いのは中古戸建の2,059万円でした。購入額については、新築マンションで見ると平均4,348万円で、何と年収の6.9倍の物件を購入しているということです。ただし、あくまでもデータは全国平均のため、地域差はあります。

次に金利タイプについて見ていきましょう。直近では最も多いのが「変動金利型」で、半数以上を占めます(57%)。次いで、10年など一定期間の金利を固定する「固定期間選択型」が4人中1人(25%)で、「全期間固定型」は5人に1人程度(18%)でした。

金利タイプ別の利用率の円グラフ

2大コストに気を付けよう!

実際に住宅ローンを選ぶ際に、最も気になるのは金利ではないでしょうか。しかし、金利の低さだけで選んでしまうと、誤った選択をしてしまうこともあり、注意が必要です。忘れてはいけないのが、「事務手数料」と「保証料」の2大コストです。

「事務手数料」とは、融資を受けるための手続きコストとして金融機関に支払う費用で、保証会社の保証を利用する際の保証事務手数料としてかかる場合もあります。一方、「保証料」は、何かの都合で住宅ローンの返済ができなくなった時に、銀行に対して住宅ローンをいったん肩代わり返済してもらうための費用です。これらのコストも加味して、総返済額が最も少なくて済むものを選ぶのが賢い選択といえます。

これらの2大コストについて、もう少し詳しく見ていきましょう。

まず、「事務手数料」の基本は定額型と定率型があり、一部に、金利上乗せ型があります。同じ住宅ローン商品であっても、複数のかかり方から選べる場合もあります。

●事務手数料のポイント
・定額型は、借入額に関わらず一定の金額を支払う。
・定率型は、借入額×○%のように、借入額に応じて金額を支払う。

「保証料」については、一時金型、金利上乗せ型、そもそも費用が全くかからないものがあります。

●保証料のポイント
・一時金型は期間35年、3,000万円、元利均等払いで約62万円~250万円(信用力で異なる)などの額を借入時に支払う。
・金利上乗せ型では通常0.2%程度上乗せされる。
・全くかからない場合は0円。

こうしたコストの差があるため、たとえ金利が低くても、総返済額では逆転するようなケースも出てきます。一例を見てみましょう。

3,000万円の住宅ローンを期間35年、全期間固定で借りるケースで、金利1.4%(事務手数料32,400円)と金利1.35%(事務手数料2.16%)を比較したものが下記の図です(保証料はないものと、618,600円かかるものを想定)。

●返済総額の比較(3,000万円を35年、保証料なしで借りた場合)

住宅ローンA
(金利1.40%の場合)
住宅ローンB
(金利1.35%の場合)
元金+利息 3,797万円 3,766万円
事務手数料 3.24万円 64.8万円
保証料 0円 61.86万円 0円 61.86万円
返済総額 約3,800万円 約3,862万円 約3,830万円 約3,893万円
住宅ローンA(金利1.40%の場合)
元金+利息 3,797万円
事務手数料 3.24万円
保証料 0円 61.86万円
返済総額 約3,800万円 約3,862万円
住宅ローンB(金利1.35%の場合)
元金+利息 3,766万円
事務手数料 64.8万円
保証料 0円 61.86万円
返済総額 約3,830万円 約3,893万円

これを見ると、返済総額が低いのは、住宅ローンAの金利1.4%(保証料なし)であることがわかります。つまり、金利と総返済額の高低が、逆になっています。

ただし、このように比較をする際には、金利タイプを、全期間固定同士、10年固定同士、変動金利同士と、同じ金利タイプ同士で比べることが前提です。金利変動リスクが異なるため、異なる金利タイプでの比較は注意が必要です。

全期間固定か、変動か、10年固定か?

住宅ローン選びの際には、金利タイプの選び方も大きな選択のポイントです。先ほどのように総返済額の比較をするにも、まずは金利タイプを決める必要があるからです。では、どのような人にどのような金利タイプが向いているのでしょう。以下に整理します。

●全期間固定金利型
・金利は全期間変わらない。
⇒金利変動リスクを抱えたくない人、返済額を一定にしたい人、住宅ローンの心配ばかりして生活をしたくない人にオススメ。

●10年固定金利型
・変動金利型に10年間の固定金利期間を特約で設定したもの。
・固定金利期間が終わると変動金利になるが、特約をつけて固定金利期間を再設定することもできる(その時点の店頭金利から引下げ金利を引いた金利が適用される)。
⇒当面10年間の金利変動リスクを負いたくない人、10年経過後に金利が下がっていると予想する人にオススメ。

●2~5年の固定金利期間選択型
・変動金利型に2~5年間の固定金利期間を特約で設定したもの。
・固定金利期間が終わると変動金利になるが、特約をつけて固定金利期間を再設定することもできる(その時点の店頭金利から引下げ金利を引いた金利が適用される)。
⇒2~5年間の金利変動リスクを負いたくない人、固定金利期間が終わった頃に金利が下がっていると予想する人にオススメ。

●変動金利型
・金利は年2回見直されるが、返済額は5年間変わらない。
・6年目に返済額も見直されるが、従前の1.25倍までしか上がらないルールがある。
・急激に金利が上がり続けたときは、返済額が利息中心になり元金が減らないことも起こりうる。
⇒借入額が少ない人、15年程度でローンを完済できる見込みの人、当面は金利が変わらないか上がらないと予想する人にオススメ。

金利タイプと金利の関係では、全期間固定>10年固定>変動金利、のように金利は低くなります。単純に 金利だけでは選べない理由は、こうしたところにもあります。

将来的な返済プランを見据え、賢く選択!

住宅ローンの選び方について、返済総額や金利タイプのほかに、実際には団体信用生命保険選びなども影響しますが、金利が同程度だったら団信が充実している方を選ぶ、という順番ではないでしょうか。
また、細かくいうなら、繰上返済や借り換えをする予定の有無によっても、前述の返済総額で見て有利な住宅ローンが異なる場合もあります。事務手数料は1度払ったら戻らないため、金利が低い反面、事務手数料が定率で当初大きくかかるタイプの場合は、繰上返済や借り換えを行う予定の人にとっては結果にも影響するかもしれません。将来的な返済プランも見据えてしっかりシミュレーションをして選びましょう。

執筆:ファイナンシャルプランナー 豊田 眞弓(とよだ まゆみ)



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