くらしのマネー辞典

2022.3.30 更新

#39 年金にプラスしてもらえる「加給年金」って?

年金にプラスしてもらえる「加給年金」って?

配偶者が条件に合えば、「加給年金」で年間約39万円の年金アップ

老後の生活設計で収入の柱となる、国から支給される老齢年金(65歳から支給されるいわゆる「年金」)。そこにプラスしてもらえる「加給年金」をご存じでしょうか。

加給年金は、厚生年金や共済年金に上乗せされる扶養手当のようなものです。受給のためには、受給者本人だけではなく扶養している家族にも条件があります。

定年が近づいてきたら、自分に支給される年金額を正確に把握してマネープランを考えておくことが大事です。まずは自分と家族が加給年金の条件に当てはまるかを確認してみましょう。

●加給年金とは?

加給年金とは、被用者年金(厚生年金・共済年金)を受け取っている受給者に、扶養している配偶者や子どもがいる場合、厚生年金(または共済年金)に加算される年金のことです。

公的年金には、以下の3種類あり、その人の働き方により加入する年金制度が決まっています。加給年金の加算の対象となるのは、厚生年金または共済年金の加入者です。
公的年金制度の種類
国民年金 日本国内に住む20歳以上60歳未満のすべての人。
厚生年金 厚生年金保険の適用を受ける組織に勤務し、加入要件を満たしている人。
共済年金
<2015年10月以降は厚生年金に統一>
公務員、私立学校の職員などで、共済年金の加入要件を満たしている人。

加給年金を受け取るための条件とは?

●加給年金の加算条件は?

加給年金を受け取るには、本人、配偶者または子どもそれぞれに条件があり、すべての条件に当てはまればその期間中、本人の年金に上乗せされます。

加給年金の支給条件
●65歳到達時点での厚生年金・共済年金の被保険者期間が20年以上
●厚生年金・共済年金の被保険者が65歳到達時点(または老齢厚生年金の支給開始年齢に達した時点)で、生計を維持している65歳未満の配偶者、18歳到達年度の末日までの子(または1級・2級の障害がある20歳未満の子)がいる

※該当の配偶者または子どもの収入が、年収850万円未満または所得が655万5千円未満であること。



加給年金を受け取る場合は、本人と配偶者、または本人と子どもの条件がすべて揃った月から対象期間になります。ただし、加算は翌月分の年金から始まるため、実際に年金額が増えるのは、2〜3ヵ月後です。

たとえば、受給者が7月で65歳となり、その時点で受給者、配偶者ともに条件を満たしている場合、8月分の年金から配偶者加給年金の加算がスタート。8・9月分の年金が振り込まれる、10月15日受取分から約6万5千円(2ヵ月分)が増額となります。

受給者だけでなく、配偶者や子どもにも条件があるので、自身に加給年金が加算されるかわかりにくいですよね。配偶者や子どもの加給年金の対象となるかどうか、フローチャートでぜひ確認してみてください。

配偶者加給年金の条件確認フローチャート
※「生計を維持されている」とは、次の①・②ともに満たしていること
①同居している(別居の場合「仕送りがある」「健康保険の扶養親族である」など)
②配偶者や子の前年の収入が850万円未満または所得が655万5千円未満
※日本年金機構のWebサイトを参考に筆者作成
この場合の配偶者は、戸籍上の配偶者だけでなく、基本的には同一住所の事実婚パートナーも対象です。

一方、子どもは戸籍上の子どものみが対象となっています。子どもが3人いて、一番上の子どもが条件の対象外であれば、2番目の子どもは1人目となり、3番目の子どもが2人目という数え方をします。

配偶者が対象の加給年金は、基本的には配偶者が65歳になるまで受給可能。夫婦の年の差が大きい場合は加給年金の受取総額も多額となる可能性があります。子どもが低年齢の場合も同様です。

本人が65歳時点で、被用者年金(厚生年金・共済年金)の期間が20年に満たないために加給年金が付かなかった場合も、その後、被用者年金に加入して20年に到達した場合、20年到達後の退職時または70歳のどちらか早いときにその他の条件を満たしていれば、その翌月分から加算が始まります

※2022年4月から「在職定時改定」が開始し、毎年改定に変更されます。


いずれの場合も、条件を満たす配偶者や子どもがいれば自動的に上乗せ加算されるわけではありません。年金の受け取り開始同様に加給年金加算開始の手続きが必要なので、忘れないようにしましょう。

ただし、加給年金の対象となっていた配偶者や子どもが、ひとつでも条件に合わなくなれば翌月分から加算はなくなります。

加給年金で受け取れる金額は?

配偶者がいる人の加給年金は、年間約39万円、子どもがいる人の加給年金は、1人目と2人目はそれぞれ約22万4,700円、3人目以降は1人7万4,900円。

※2021年度額/対象となる受給者:生年月日が1943年4月2日以降の方。

対象者別、加給年金額と年齢制限
※日本年金機構のWebサイトより
配偶者が対象の加給年金には「特別加算」という加算があります。受給者の生年月日に応じて、配偶者の加給年金額に3万3,200円~16万5,800円が特別加算されるしくみです。
特別加算の額は年金を受給する人の年齢が若いほど金額が大きくなります。受給する人が1945年4月2日以降生まれの場合、2021年度に受給する金額は165,800円となり、配偶者加給年金の合計は、390,500円となります。
配偶者加給年金額の特別加算額(令和3年4月から)
※日本年金機構のWebサイトより

●加給年金の支給例

実際に加算となる加給年金額は次のようになります。

<2021年度の場合>
例1:65歳以下の配偶者がいる場合
・厚生年金加入者 66歳<1955年12月10日生まれ>
・生計を維持されている配偶者:63歳

年間加給年金額:22万4,700円+特別加算額16万5,800円=39万500円
例2:65歳以下の配偶者と18歳未満の子どもがいる場合
・厚生年金加入者 66歳<1955年12月10日生まれ>
・生計を維持されている配偶者:58歳
・生計を維持されている子ども:17歳

年間加給年金額:22万4,700円+特別加算額16万5,800円+子の加算22万4,700円=61万5,200円

加給年金の「振替加算」とは? 受け取るための条件とは?

●振替加算とは?

配偶者加給年金は、配偶者が65歳になると打ち切られます。この時、配偶者が年金を受け取りはじめると、配偶者本人の老齢基礎年金に対して「振替加算」という加算がつきます。
配偶者が65歳より後に老齢基礎年金の受給権が発生した場合であっても、一定の要件を満たしている場合は老齢基礎年金に対して振替加算が加算されます。
振替加算を受けるためには、ご本人と配偶者(配偶者加給年金の対象者)に一定の要件があります。

●振替加算の適用条件

振替加算の対象者

振替加算の対象となる配偶者は、通常、老齢基礎年金を受給する資格を得たとき(満65歳到達時)において加給年金額の対象となっていた方のうち、次の条件を満たしている人

・1926年4月2日から1966年4月1日までの間に生まれている
・老齢厚生年金と退職共済年金の加入期間が20年未満

※1951年4月1日以前に生まれた場合は加入期間の条件が異なります。



振替加算額は、加算を受ける人の生年月日によって異なります。若い方が少なくなります。詳しくは日本年金機構のWebサイトで確認しましょう。

加給年金の受給のための手続きは?

●加給年金に必要な書類は?

加給年金を受け取るためには、請求が必要です。請求するときには、要件を満たしていることが客観的に証明できる書類を、請求書と一緒に提出しなければなりません。
必要な添付資料は以下です。
・老齢厚生年金・退職共済年金 加給年金額加算開始事由該当届
・受給権者の戸籍抄本または戸籍謄本
・世帯全員の住民票の写し
・加給年金の対象者(配偶者や子)の所得証明書など


加給年金を受給するには、「老齢厚生年金・退職共済年金 加給年金額加算開始事由該当届」に必要書類を添えて、65歳誕生日の前日以降に最寄りの年金事務所へ提出する必要があります。年金事務所は、日本年金機構のWebサイトから検索できます。

ただし、「特別支給の老齢厚生年金」(65歳未満で受け取り始める厚生年金)の請求をする時に、「加給年金額に関する生計維持の申し立て」のページに記載をしている場合は、65歳の時に出す請求ハガキに必要事項を記入して郵送するだけでOKです。

戸籍謄本(同一戸籍全員が載っているもの)、住民票(家族全員分)、対象となる配偶者や子どもの所得証明書は、すべて受給者本人が65歳になった以降(もしくは加給年金の対象者となった日以降)から6ヵ月以内に発行されたものを提出してください。

※基礎年金番号と個人番号(マイナンバー)が紐付いている人は、住民票と所得証明書が省略できます。

●支給を停止する場合の手続きは?

配偶者が、自分の年金を受け取る年齢になっても請求手続きをしないで、受け取っていなかった場合、または「離婚」や「別居」などで年齢要件以外の理由で配偶者や子どもが加算対象から外れた場合は、自分で届け出ないと加算が付いたままになり、もらいすぎた部分はさかのぼって返金する必要があります。長期間ほったらかしてしまうと、多額の返金を求められますので、できるだけ早く届け出をしましょう。

配偶者の加給年金が加算されている厚生年金を受け取っている人の配偶者が、障害年金または被用者期間20年以上の(特別支給の)老齢厚生年金を受けられるようになったときは、「老齢・障害給付 加給年金額支給停止事由該当届」(様式第230号)の提出が必要です。
また、配偶者や子どもが死亡や離縁などによって対象から外れるときには、「加算額・加給年金額対象者不該当届」(様式第205号)を提出しなければいけません。
どちらも加給年金の書類と同じように、日本年金機構のWebサイトからダウンロードできます。添付書類は不要なのですみやかに提出しましょう。

加給年金・振替加算の受け取りに際して注意すべき点とは?

加給年金・振替加算は、年金額を増やしてくれるしくみなので、忘れないように請求したいものですね。受け取りに際していくつかの注意点がありますので確認しておきましょう。

●厚生年金が全額停止となっている場合は加給年金も受け取れない

加給年金はあくまでも厚生年金(または共済年金)に対する加算です。在職老齢年金の支給停止のしくみによって厚生年金(または共済年金)が全額停止となっている人は、加給年金も全額停止となります。
一方、厚生年金(または共済年金)が一部でも発生する場合は、加給年金は全額支給されます。「どうせ厚生年金は全額停止だから……」と加給年金の手続きをしないでいると、本来加算されるタイミングが来ても自動的には加算されません。全額停止であっても加給年金の手続きはしておくことをおすすめします。

※在職老齢年金の支給停止のしくみとは、厚生年金・共済年金の受給権がある人が、厚生年金・共済年金に加入中である場合、年金月額と標準報酬月額と直近1年の賞与の平均を合計したものが一定基準を超える月は年金がカットされるしくみです。

●繰り下げ受給をすると繰り下げた期間は加給年金・振替加算が受け取れない

本来受け取り開始となる年齢より遅らせて受給を開始する、年金の繰り下げ受給を行うと、年金が増額になります。しかし、加給年金・振替加算額部分には増額が適用されません。また後からその期間分を受け取れるものでもありません。
加給年金は老齢厚生年金に対する加算、振替加算は老齢基礎年金に対する加算です。加算がある年金の繰り下げを考えているときは、加算される期間を考慮して慎重に検討してください。

●配偶者の国民年金保険料の納付が必要になる場合がある

配偶者加給年金を受けるには、原則65歳以降で、対象者の配偶者が65歳になるまでの年の差の期間に対しての加算です。加算対象者が65歳になったということは、基本的には国民年険第2号被保険者ではなくなります。
それまでは第2号被保険者に扶養されていた配偶者は第3号被保険者となり、国民年金保険料の自己負担はありませんでした。しかし、加算対象者が第2号被保険者でなくなったことによって、配偶者は第3号被保険者から第1号被保険者となり、国民年金保険料の納付義務が発生します。
ただ、国民年金保険料の納付義務があるのは60歳未満の人なので、配偶者が60歳以上なら納付義務はありません。

●共働きで、配偶者が被用者年金期間20年以上になり厚生年金の受給権が発生した場合は、配偶者加給年金が打ち切られる

配偶者加給年金の要件の1つに「配偶者が、被用者年金20年以上の(特別支給の)厚生年金の受給権がないこと」というものがあります。
配偶者加給年金を受け取っている人であっても、配偶者が被用者年金に加入中で、厚生年金+共済年金期間が240ヵ月以上となり、240ヵ月以上が確定した年金を受け取ることができるようになると配偶者加給年金の要件から外れ、配偶者が65歳未満であっても配偶者加給年金は打ち切られることとなります。

●配偶者加給年金の対象者の配偶者が年上の場合は、配偶者は振替加算の請求手続きをしないといけない

配偶者加給年金対象者が年下、配偶者が年上の場合、対象者が65歳なったときには配偶者はすでに65歳以上のため、加給年金は受給できません。
しかし、その時点で、配偶者が振替加算の要件を満たしているときは、振替加算の対象となります。請求手続きを忘れがちなので注意しましょう。請求に必要な書類は、配偶者加給年金の請求時と同じです。

50代のうちから準備をはじめよう!

年金の受給額は、毎年の誕生月にハガキなどで郵送される「ねんきん定期便」や、Webサイト上の「ねんきんネット」で確認できます。

50代からは、今加入している制度に60歳まで加入した場合の年金見込み額が記載されています。厚生年金基金に加入したことがある人は、2021年4月以降に発行されるねんきん定期便からは、厚生年金基金の代行部分(国に代わって一部を支給する部分)の年金額も加算された表示に変更になったので、よりリアルな金額に近くなりました。とはいえ、加給年金・振替加算の額は、対象になる場合であっても表示されていません。

だからこそ、ぜひ、上記フローチャートで自分が加給年金を請求できるのか、できる場合はいつからいつまで、どのくらいの金額が加算されるかを把握してもらいたいと思います。年金事務所では、窓口や郵送で自分の正確な年金額を確認できるので、それを活用するのも一案です。

加えて加給年金だけでなく、年金全体としてはいくらあるのか、その他の収入はいくらあるかを含めて、定年後の全体の収入を把握しておくことがより大切です。

企業型確定拠出年金(企業型DC)や個人型確定拠出年金(iDeCo)などの資産があれば、定年後の重要な収入源となります。それらの資金は、すぐに使う用途がなければ、一括で取り崩すのではなく、運用しながら少しずつ取り崩していくのも手となります。

また、50代、60代からでも、資産運用の基礎知識を勉強しながら、少額投資を実際にやってみるのでも遅くはないのではないでしょうか。

安心で豊かな老後を過ごすためには、まず、定年後のお金の収支を「見える化」することが必須です。配偶者のいる人は、収入と支出について、これから先の推移を夫婦で共有しておけば、それぞれの老後の夢がより現実的になります。

より正確な年金受給額が把握できたら、公的年金を収入の柱としながらも、保有する資産の運用を並行して行い、足りない分は貯蓄の取り崩しで賄うなど、定年後のマネープランを具体的に立てておきましょう。

※この記事は2020年8月26日に公開した内容を、2022年3月30日に内容を変更して掲載しています。今後、変更されることもありますのでご留意ください。

執筆:小野みゆき(おの みゆき)
中高年女性のお金のホームドクター
社会保険労務士・CFP・1級DCプランナー・年金マスター
企業で労務、健康・厚生年金保険手続き業務を経験した後、司法書士事務所で不動産・法人・相続登記業務を経験。生命保険・損害保険の代理店と保険会社勤務を経て2014年にレディゴ社会保険労務士・FP事務所を開業。セミナー講師、執筆、家計・年金・労務相談などを中心に活躍中。レディゴ社会保険労務士・FP事務所 https://redhigosrfp.com/
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