住宅ローン控除は、いつ、どうすれば、いくらお金が戻ってくる?

住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)とは、個人が住宅ローンを利用してマイホームの取得・リフォームをする際に、一定の条件を満たせば、所得税からの控除が受けられる制度です。所得税額から控除できない分については、翌年の住民税から一部控除することが可能になっています。

控除を受けるには、最初の年と2年目以降で以下のような手続きを行います。

  • 初めて住宅ローン控除の適用を受ける年
    入居した年の翌年に所定の書類を添えて確定申告を行う。
  • 2年目以降
    会社員の場合は会社の年末調整で、税務署から届く書類や銀行の残高証明書などの必要書類を勤務先に提出する。自営業者など源泉徴収対象外の人は確定申告を行う。

消費税10%が適応される住宅の場合、特例によって2020年12月までに入居すれば控除期間が10年から13年間に拡充されています。

また、新型コロナウイルス感染症の影響で期限内に入居できない場合、「住宅ローン減税の適用要件の弾力化」による特例もあるので確認してみましょう。

住宅ローンの控除可能額は、年間の最大控除額が上限40万円となっています。そのうち所得税分が年末の住宅ローン残高の1%(上限40万円)、所得税分の控除額が少なく引ききれない場合は、住民税分が前年の課税総所得金額の7%(上限13万6,500円)。11年目〜13年目については、以下の@Aのうちいずれか少ない方の金額が3年間控除されます。
@ 「住宅ローン等の年末残高の合計額(住宅の取得等の対価の額又は費用の額)」(上限4,000万円)のうち、少ない方の金額の1%
A 「住宅取得等対価の額−消費税額」(上限4,000万円)の2%÷3

上限額まで控除されないケースもあるので、自分の住宅ローン残高と所得税額・住民税額をもとに、どれくらい戻ってくるかしっかり確認しておきましょう。

住宅ローンの初年度控除額の試算
  • 取得時の適用消費税10%、住宅ローンは金利1%・返済期間35年、令和2年12月引渡・入居、返済開始月も12月の場合、扶養家族0人(共働き想定)で試算。
  • 年収は月給・賞与を合わせた額面。

控除で戻ってきたお金に、わが家なりの活用計画を

住宅ローン控除で還付されたお金は、どうするのが良いのでしょうか。
繰り上げ返済に充てたり、今後の修繕費用として貯蓄したりする人もいるでしょう。固定資産税の支払いに充てる、家族のご褒美として旅行に行くというのも良いでしょう。もちろん、いろんな使い道に分けるという方法もあります。

住宅ローン控除の還付では、毎年最大40万円のまとまったお金が戻ってくるので計画的に活用したいものです。
まずは、現在の家計の収支や今後の資産計画を考えたうえで、控除で戻ってきたお金がすべてすぐに使う必要のあるものなのか、そうでないのかを考えることが大事です。

もしもすぐに使う必要のない、貯蓄に回せるようなお金であれば、資産運用で積み立てながら増やしていくという視点もあります。住宅ローンの控除が終わる10〜13年後には、まとまったお金になりますから、子どもの教育費や老後資金の足しにもできますし、繰り上げ返済や家の修繕費に充てても良いでしょう。その際は、税制優遇のある制度を活用するのがおすすめです。

運用するなら、つみたてNISAやNISAで

控除で戻ってきたお金で資産運用を行うときは、節税効果があるつみたてNISAやNISA(少額投資非課税制度)を活用してはいかがでしょう。

つみたてNISAは年間上限40万円×20年間、NISAは年間120万円×5年間非課税枠内であれば、利益や分配金に対して課税される20.315%が全額非課税になるという優遇制度です。現金化したい時は、売却をすることで必要なときに現金化できます。

リスクが心配な人は、より低リスクと言われる、株式・債券へ投資しているバランス型ファンドなどへの積立投資を検討してみても良いでしょう。
実際にどの程度の減税になるか、事前にシミュレーションしてみればイメージが沸きやすくなります。

【関連サイト】iDeCoやNISAでのあなたの減税額をチェック「メリットを確認!税軽減シミュレーション」

  • 想定される運用利回りが分からない場合は、3%と入力してみましょう。

シミュレーションする際、どれくらいの利回りを想定すれば良いかは難しいところです。たとえば、私たちの年金の1割を各資産にバランス良く運用しているGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)では、過去20年間の累積収益率は約3%になっています。このGPIFの運用実績である3%を基準に考え、以下のようなイメージをもってシミュレーションすると考えてみると分かりやすいでしょう。

  • 2001年度〜2020年度第2四半期
  • 運用利回り1%:安定運用/債券中心
  • 運用利回り3%:バランス運用/バランス型ファンド
  • 運用利回り5%:積極運用/株式中心

また、今回紹介した住宅ローン控除や、資産運用の非課税制度のほかにも、「節税」につながる控除はいくつかあります。
たとえば、老後の年金を積み立てる「企業型確定拠出年金(企業型DC)」や「iDeCo(個人型確定拠出年金)」、生命保険、医療保険や地震保険など支払った保険料に応じて控除される「保険料控除」、地方自治体への寄付をしながら節税もできる「ふるさと納税」などです。

住宅ローン控除を考えるこのタイミングを機に、自分がどのような控除の対象になって、どれくらい節税できるのかを一度洗い出してみてはいかがでしょうか。そのうえで、利用できそうな制度はどんどん活用してみましょう。

そして、住宅ローンの還付で戻ってきたお金や節税で増えた手取り分の使い道についてよく検討していただいたうえで、より賢い資産形成につなげてください。

  • 2020年11月時点の情報です。今後、変更されることもありますのでご留意ください。
野原 亮

野原 亮(のはら りょう)
確定拠出年金創造機構 代表


明治大学政治経済学部経済学科卒業。現東証1部上場の証券営業・株式ディーラーとして従事。その後、営業コンサル会社を経てFPとして独立。中小企業の確定拠出年金を中心とした福利厚生の社外担当として活動、上場企業等の金融研修なども担当している。証券外務員1種、ファンナンシャル・プランナー(AFP)、企業年金管理士(確定拠出年金)、公的保険アドバイザー。書籍に『スピードマスター 1時間でわかるiDeCo〜50代からの安心投資』(技術評論社・2020年)『ポイントですぐにできる!貯金がなくても資産を増やせる「0円投資」』(日本実業出版社・2021年)がある。

個人Webサイト:https://fpsdn.net/fp/rnohara/

事務所Webサイト:https://kakuteikyoshutsu.com

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