2019年の転職者数は過去最高、転職者比率も2年連続増加

総務省が公表しているデータによると、転職者は年々増加傾向にあり、2019年は351万人と過去最高となりました。就業者に占める転職者の比率も、ほぼすべての年代で2018年と比較して2019年は増加。年代に関わらず転職する人が増えていることになります。
転職の理由としては、「より良い条件の仕事を探すため」が最多で、2011年以降は増加傾向に。「会社都合」ではなく、自分で転職を選んで、挑戦しようとする人が増えていることが伺えます。

転職者数及び転職者比率の推移
  • 総務省統計局「労働力調査(詳細集計)2019 年(令和元年)平均(速報)」を基に筆者作成。

転職・退職するときには、保険や税金などのさまざまな手続きが必要になるので、書類の記入など会社からの指示に従いましょう。

そして、企業型DC(企業型確定拠出年金)とiDeCo(個人型確定拠出年金)を利用している人は、自分で手続きをしないと損をする場合もあります。特に会社で加入している企業型DC加入者は全国で約720万人いますが、自分が加入者であることを忘れてしまっている場合も。手続きが必要かをしっかりと確認しましょう。

転職・退職時に必要な企業型DCやiDeCoの手続きとは?

企業型DCやiDeCoに加入している場合、自分で行うべき手続きが必ずあります。手続きの内容は、現状加入しているものと転職後に加入できるものによって異なるので、自分がどのパターンに当てはまるか確認しておいてください。

企業型DCに加入している場合 iDeCoに加入している場合

特に注意しなければいけない人は、企業型DCに入っていて、転職先に企業型DCがない場合、またはフリーランスや無職になる場合です。

企業型DCは、退職後6ヵ月を超えて何もしないでいると、現金化(商品の解約)されて運用ができなくなり、現金化された資金は国民年金基金連合会に自動的に移換されて、移換手数料(移換時)、管理手数料(毎月)が自動的に資金から控除されます。

つまり、資金はどんどん減っていく一方で、極端な場合では資金が無くなってしまうことも。6ヵ月以内にiDeCoに移換する必要がありますので、必ず忘れないようにしましょう。

退職後6ヵ月以降も、手続きをして資金を移換すれば運用を復活することができますが、余計な手数料が取られてしまいます。
積極的に新しい運営管理機関(金融機関)候補の情報を調べて、できるだけ早く手続きをしましょう。

  • 2022年10月からは、企業型DCとiDeCo両方への加入が可能になります。

【関連記事】
会社員も利用しやすくなる? iDeCo新制度のポイントとは

銀行窓口でもOK! 企業型DCからiDeCoへ移換する方法

では、転職後に企業型DCに加入できず、企業型DCからiDeCoへ移換する場合はどうすれば良いのでしょう。運用する口座は、必ずしも前と同じ運営管理機関(金融機関)である必要はありません。自分が使いやすい機関を選びましょう。ただし、選べるのは1人1口座のみとなっています。

【ステップ1】運営管理機関を選択

企業型DCからiDeCoへの移換手続きは、普段利用している銀行などの身近な金融機関で行うことができます。金融機関によって商品のラインナップ、手数料、サービスが異なるので、慎重に検討したいですね。対象となる金融機関は、iDeCoの公式サイトで検索できるので、参考にしてください。

選ぶ際は、管理手数料がいくらかをチェックし、希望する運用スタイルの商品が一定数あるかを確認しておきましょう。たとえば、元本確保型の数や種類、元本変動型の本数がどれくらいあるか。株式、債券、リートなどの投資信託、バランス型の投資信託にはどのようなものがあるかなど、自分が運用したい商品、気になる商品がどのぐらいあるかを調べておきます。
また、商品選びやWebサイトの見方などについて相談しやすい環境であることも重要です。電話や窓口などリアルで相談したいかどうか、その場合は自分が利用しやすい曜日や時間帯に対応してもらえるかどうかも確認しておきたい点です。

【ステップ2】iDeCoに移換してその後の掛金を拠出

ステップ1で選んだ運営管理機関に必要書類を提出して移換手続きをします。
移換する資金をどの商品にいくら移すのかを決めると同時に、今後の掛金を商品ごとにどんな割合で振り分けるのかを決めます。今までのお金の配分割合と、これからの掛金の配分割合は同じでなくてかまいません。
商品選びと商品ごとの配分割合は今後の資金の動きに大きく影響を与えるので、計画的に考えておきたいもの。ここでも運営管理機関選びのポイントである「相談しやすさ」が重要となるでしょう。

身近な金融機関である銀行でもiDeCoを取り扱っています。都市銀行は運営管理手数料が高いと思われがちですが、手数料0円のコースを用意している銀行も。「いつも使う銀行」でiDeCoへの移換を検討してみるのもおすすめです。

■手数料0円三井住友銀行のiDeCoはこちら

  • みらいプロジェクトコースの運営管理機関手数料

人生の節目にこそ、お金について改めて考えてみよう

転職・退職時は、新しい環境に慣れる必要もあり、慌ただしく過ごす場合が多いでしょう。そのなかでも、企業型DCに加入していた人は、手続きの方法を理解して期限内に書類などを提出することを忘れないようにしましょう。手続きが遅れてしまうと、不要な手数料を毎月支払うことになります。

企業型DCやiDeCoなどの確定拠出年金は、転職・退職などで働き方が変わっても、移換をすれば、継続的に税金の優遇制度を活用しながら自分の年金をつくっていける便利な制度です。
iDeCoは無職の人や専業主婦も加入することができます。今後の転職やライフスタイルの変化を理由にiDeCoの利用を躊躇している場合は、移換できるメリットを知った上で、最低掛金額(5,000円/月)からはじめておくのも1つの手です。

フリーランスや無職になる場合は、確定拠出年金以外にも、社会保険や税金など自分でやるべき手続きが多くあります。早めに済ませてすっきりした気持ちで、新しいスタートを切りたいものです。
転職や退職は、人生の転機。社会保障や税金、年金など、支払うべきお金について考えるとともに、今後のお金についても考える良いきっかけにしてもらいたいと思っています。

  • 2020年12月現在の情報です。今後、変更されることもありますのでご留意ください。

小野みゆき(おの みゆき)


中高年女性のお金のホームドクター。社会保険労務士・CFP・1級DCプランナー・年金マスター。企業で労務、健康・厚生年金保険手続き業務を経験した後、司法書士事務所で不動産・法人・相続登記業務を経験。生命保険・損害保険の代理店と保険会社勤務を経て2014年にレディゴ社会保険労務士・FP事務所を開業。セミナー講師、執筆、家計・年金・労務相談などを中心に活躍中。

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