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2019.9.18
アメリカの中央銀行に相当する、連邦準備制度理事会(FRB)では、アメリカの金融政策を決める「連邦公開市場委員会(FOMC)」が年8回開かれています。FOMCでは、景況判断や政策金利の上げ下げなどの方針が発表されます。
2019年7月31日のFOMCでは、アメリカの政策金利を0.25%引き下げて、年2.00~2.25%にすることが決まり、大きなニュースになりました。実に、10年7カ月ぶりの利下げでした。
今回の利下げは、米中貿易戦争による景気悪化に先手を打つ目的で、「予防的利下げ」とされています。直近の個人消費や実質GDP成長率、株価ともに堅調な中での利下げだったからです。
景気悪化につながる事態が起きてから、具体的に指標に現れるまでには時間差があるため、「予防的利下げ」で先に利下げをすることで低金利の資金を供給し、市場の安心感を高める、といった効果があるようです。
FRBのパウエル議長は記者会見でこの取組について、「政策の微調整であり、長期引き下げ局面の始まりではない」と述べましたが、2015年12月以降の利上げ路線が終了し、利下げ路線に転じたのかどうか、今後の動向が気になります。
利下げ発表後の8月14日、アメリカの債券市場で「長短金利逆転(逆イールド)現象」が起きました。一時的に「期間2年の米国債の金利」を、長期金利の指標となる「期間10年の米国債の金利」が下回ったのです。
金利は通常、期間が長いほど貸し倒れリスクが高まるため、短期よりも長期の方が高くなります。これが逆転するのが「逆イールド現象」で、アメリカでは過去30年間に3回発生し、その1~2年後に毎度景気が悪化したことから、景気後退の予兆とされています。直近ではリーマン・ショック前の2007年に発生しました。
しかし、「逆イールド現象」はあくまでも経験則で、景気後退につながるメカニズムは解明されていません。世界経済は来年も成長を続けるという見方も依然としてあります。
米中貿易摩擦(2018年以降、世界の2大経済大国としてアメリカと中国が互いに追加関税をし合う2国間の貿易問題)という火種はあるものの、アメリカが利下げ路線に転じていなければ、まだ景気後退とは言い切れません。しかし、個人消費が落ちたり、実質GDP成長率がマイナスになったり、株価が下がり続けるなど景気後退を示す指標が出てくると、景気後退を認めざるを得なくなります。
近年の世界経済を牽引していたのはアメリカの好景気でもあったため、アメリカの景気後退は、世界経済にも大きな影響を与えかねません。アメリカが利下げ路線に転じれば、日銀も追加の金融緩和策を取ることを表明しています。
グローバルに投資をしている外国人投資家は、利下げの影響でアメリカ株が下がると、日本株を売って損失を埋める動きをしがちです。外国人投資家が日本株を売れば、日本の株価が下がります。そうでなくても、世界的な景気後退という認識が広がれば、そもそも株を売る人が増え、当然、株価は下がっていくことが予想されます。
日本もすでに景気後退の傾向が見られる中、2019年10月1日からは消費税増税も重なり、景気が冷え込むのではという見方もあり、私たちの生活にも影響が出てくることでしょう。
※ 2019年9月現在の情報です。今後、変更されることもありますのでご留意ください。
執筆:ファイナンシャルプランナー 豊田 眞弓(とよだ まゆみ)
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