高度経済成長から学ぶ モーレツ経済学高度経済成長から学ぶ
モーレツ経済学

2018.7.4
高度経済成長から学ぶ モーレツ経済学 でんぱ組.inc 藤咲 彩音 証券アナリスト馬渕 治好高度経済成長から学ぶ モーレツ経済学 でんぱ組.inc 藤咲 彩音 証券アナリスト馬渕 治好

高度経済成長期をふり返り、現代のヒントを探る本シリーズ。東京1964オリンピック後の1970年代、世界を舞台に躍進する日本を揺るがしたショックとは? コスプレ好きアイドルでんぱ組.incの藤咲彩音さんと、高度経済成長期生まれの証券アナリスト・馬渕治好先生による対談。第5話は1つ目のショック『ドル・ショック』の影響について学んでいきます!

#5 一億総中流を襲った『ドル・ショック』!

みんな貧乏ではないけど、お金持ちでもない!?“一億総中流”

馬渕:藤咲さんは「あなたの暮らしは上流、中流、下流のどれですか?」と聞かれれば、何と答えますか?

藤咲:う〜ん、そう聞かれると“中流”と答えるかも。すごくお金持ちではないですが、今の暮らしに不満はないですし。

馬渕:日本の内閣府が1950年代から『国民生活に関する世論調査』を行っているのですが、中流(中の下・中の中・中の上)と答えた人が約9割に迫ったのが、1970年だったんです。

藤咲:1970年というと、所得倍増計画などのおかげで、所得が10年前の3倍近くになったという頃ですよね。

馬渕:カラーテレビも見られるし、エアコンも買えるし、食べるものにも困っていないし、仕事もある。でも大金持ちではない…だから「私の暮らしは中流です」という人が大多数になったんです。日本の人口が約1億人だったので、『一億総中流』なんて言われました。

藤咲新・三種の神器も普及して、みんなが豊かになれたという雰囲気があったんですね。

馬渕:翌年の1971年前後は、チェーンのハンバーガーショップやファミリーレストランなどの1号店が続々とオープンした年。この頃からマニュアル化と冷凍技術が進んで、どの店でも同じようなサービスを受け、同じ味のものが食べられるようになったんです。

藤咲:私はジャイアントパンダが大好きなんですが、日本にジャイアントパンダがやってきたのもこの頃ですよね。

馬渕:1972年ですね。上野動物園にカンカンとランランがやってきました。当時は“パンダフィーバー”と呼ばれて、大行列ができたんです。実は私も見に行ったんですが、結局ジャイアントパンダの姿は見えず…覚えてるのは人だかりの凄さだけ(笑)。

藤咲:最近も、上野動物園でパンダのシャンシャンが話題になっていますよね。私も早く会いに行きたいです。ニヤッと笑っているような顔とか、お尻がモコモコしているところとか、かわいくてしかたがない!

『ドル・ショック』の不安が、インフレを引き起こした!?

馬渕:みんなが豊かになった一方で、1970年代にはショッキングなできごとが突発的に起きたんです。その1つが『ドル・ショック』。

藤咲:ドルってことは、アメリカが関係しているんですか?

馬渕:そうです。当時のアメリカの大統領がニクソンだったので、『ニクソン・ショック』とも呼ばれています。アメリカは、ベトナム戦争やアポロ計画など、お金をたくさん使っていて、景気は良かったんです。ただ、景気が良いので、海外からモノをたくさん買って輸入が増え、お金が国外に出てしまって経済が厳しい状況になりました。アメリカとしては輸入を減らして、輸出を増やしたかった。そこで、為替レートを見直すことを電撃的に発表したんです。

藤咲:為替レート…「1ドル=○○円」っていうアレですっけ?

馬渕:はい。第二次世界大戦後のアメリカは、敗戦国の経済を援助する姿勢を取ってきましたが、日本やドイツも経済が強くなってきたので適正な為替レートを設定しようとしたんですね。それまでは1ドル=360円の固定相場制でした。

藤咲:360円! いまだと、100円ちょっととかですよね?

馬渕:そうですね。それが、1971年の12月にまずは1ドル=308円になったんです。円高になればアメリカは輸入を抑制できるはずだと考えました。

藤咲:円高?ちょっとこんがらがってきました(笑)。

馬渕:経済で最初にぶつかる言葉ですね(笑)。
1ドル=360円から1ドル=308円になる、つまり、円から見た1ドルの値段が減ることになりますよね。
逆に考えると、ドルから見た1円の価値が上がるってことです。だから円高。
アメリカで1ドルで売られているものをこれまで360円で買っていたのに、それが52円少ない308円で買えることになる。買い物だと14%OFFですね。

藤咲:すごくおトクに感じます!

馬渕:そうですね。日本からするとアメリカのものは安く感じるので輸入したくなる。アメリカからすると、日本のモノが高くなってしまうので、日本から輸入しにくくなるというわけです。

藤咲:なるほど。すごくよくわかりました。

馬渕:しかし、状況は深刻で1ドル308円になってもアメリカの経済は厳しい状態が続きました。そして、1973年には完全変動相場制になりました。毎日変わるようになったんです。

藤咲:今の為替の仕組みは、『ドル・ショック』でできたんですね。でも、アメリカが輸入を減らせれば、日本は輸出が減ってしまうので、困ってしまう…?

馬渕:確かに輸出の伸びに少しブレーキはかかったんですが、輸出自体は増えていました。日本のモノは人気があったり、世界的に物価が上がっていたりして、日本の輸出は減らなかったんです。

藤咲:勢いがあったんですね!

馬渕:でも、思わぬ副産物がありました。「円高になったら、日本の景気が悪くなるから何かしなければ」と、当時の政府や日本銀行は思ったわけです。そこで、1970〜1972年に金利を引き下げました。借りやすくするので、「みんなもっとお金を借りて使ってください!」と。すると、たしかに景気は良くはなったのですが、カネ余りの状態になってしまったんです。

藤咲:カネ余り!? なんかうらやましい(笑)!

馬渕:市場に出回っているお金が増えている状態です。それ自体は悪いことではないのですが、結果として1973年〜1974年に急激なインフレーションになってしまいました。
お金が余っているから、みんながどんどんモノを買います。値段を上げてもどんどん売れるので、売り手もさらに値段を上げたんですね。ドル・ショックそのものより、こちらのほうが経済に影響を与えました。

藤咲:『ドル・ショック』を不安に思う政府やみんなの思いが、重なってしまったのですね。

馬渕:インフレーションが起きたきっかけは、もう1つあります。田中角栄さんが総理大臣になる前の1972年6月に発表した『日本列島改造論』。日本では東京や大阪などの大都市にお金が集中しすぎているので、地方を活性化して日本全体を作り変えようというものでした。

藤咲:『日本列島改造論』!? 当時の言葉ってやっぱりアニメっぽい(笑)。

馬渕:そうですね(笑)。当時は、新幹線をあちこちに開通させたり、高速道路を作ったり、まず交通網を整えようとしました。それで開発の候補地に挙がった地方では土地の買い占めが行われました。その結果、土地の値段が高騰し、インフレに拍車をかけてしまったんです。

藤咲:人気が出ると思ってどんどん値段が上がっていってしまったんですね。

円高や円安はどうやって決まる?今はどっち?

藤咲:『ドル・ショック』後に変動相場制になったというお話でしたが、そもそも円高とか、円安とかはどうやって決まるんですか?

馬渕:例えば、円とドルの関係で言うと、「日本の経済はこれから強くなる」「日本はいい企業が多くて株が上がりそうだ」と多くの外国人が思うとします。そうするとその人たちがドルを売って円に替えて投資をするので、日本にお金が集まってきて円高になるんです。

藤咲:経済が伸びてくると、通貨の価値も上がるんですね。やっぱり、日本にとっては円高のほうが良いんですか?

馬渕:円高になると日本は海外のモノを安く買えます。一方で輸出品が値上がりしてしまって、海外にモノが売れなくなる。つまり、良い面もあるし、悪い面もあるんですよね。

藤咲:私が韓国やベルリンでブランドものの口紅が安く買えたのも、円高だからだったのかな! でも、海外の人が日本に旅行に来て爆買いしているという話もありますよね?

馬渕:それは、円高・円安というより、1つは企業努力によってコストを抑える100円ショップやディスカウントショップなどが増えたからだと思います。日本では、少ないお金でも豊かな生活を送れるようになったんです。

藤咲:確かに! 今の日本では、お金を工夫して節約しながら、かなり楽しく暮らせる気がします。

馬渕:話を戻すと、私の考えでは、今の為替レートは、実力より少し円安になっていると思います。最近は1ドル=110円くらいですが、実力だと1ドル=94〜95円くらいが妥当だと思います。

藤咲:どうして実力より円安なのですか?

馬渕:やはりイメージとして「アメリカの方が景気がいい」「アメリカの方が今後経済が強くなりそうだ」と思っている人が多いということだと思いますよ。

藤咲:今の実力だけでなく、これからどうなるかっていう予測や気持ちも、為替レートに影響してくるんですね!

馬渕:そうですね。変動相場なので、今後も円が高くなったり、ドルが高くなったりするので、預金も、円だけでなくドルやその他の通貨を組み合わせておくと、バランスが取れるかもしれませんね。

藤咲:円以外で預金?考えたことなかった。

馬渕:銀行などで取り扱っています。普通預金と違って、手数料がかかったり、それこそドルが安くなることもあるので注意は必要ですが、ほかの投資に比べわかりやすいので、資産運用の入門には良いかもしれませんね。

藤咲:へー。まずは、ニュースの為替情報を明日からちゃんと見てみよう!
(最終回へ続く)

藤咲彩香のモーレツ!アイドル論 藤咲さんが当時流行したファッションに身を包み、学んだ内容からアイドル活動につながるヒントを見つけていきます。 藤咲彩香のモーレツ!アイドル論 藤咲さんが当時流行したファッションに身を包み、学んだ内容からアイドル活動につながるヒントを見つけていきます。

〈 その国の経済の予測や雰囲気で為替が変わるように、お国柄でライブの盛り上がりが変わる? 〉

通貨の価値が、その国の経済の予測や雰囲気で変動するという話を聞いて思いだしたのが、海外公演。ファンの雰囲気も国によって全然違うんです。例えば、ジャカルタのファンはめちゃくちゃ熱烈。コール&レスポンスやヲタ芸も気合いが入っていたり(笑)。インドでは、交通状況が悪くて3回のライブ予定が2回になるというハプニングも。マイペースな感じがすごくいいなと思いました。まだまだ行ったことがない国がたくさんあるので、ライブをしに訪れたいですね!

第5回のファッションは、1970年代に流行したフォークロア。第5回のファッションは、1970年代に流行したフォークロア。

藤咲 彩音(ふじさき あやね)

藤咲 彩音(ふじさき あやね)

2011 年にでんぱ組.inc に加入。両親の影響で 1 歳からコスプレイヤーとして活動。
趣味がスポーツでフルマラソンをこれまでに2回完走。ブランド「Pzzz」のプロデュースも手掛けている。2017年には舞台「ギア-GEAR-」East Versionにて舞台初挑戦。2018年4月から新体制初となる全国ツアー「コスモツアー2018」を開催中。

馬渕 治好(まぶち はるよし)

馬渕 治好(まぶち はるよし)

1981年東京大学理学部数学科卒。日興コーディアル証券(現・SMBC日興証券)国際市場分析部長を経て独立、現在ブーケ・ド・フルーレット代表。内外諸国の経済・政治・投資家動向を踏まえ、株式、債券、為替、主要な商品市場の分析を行なう。データや裏付け取材に基づく分析内容を、投資初心者にもわかりやすく解説することで定評がある。