高度経済成長から学ぶ モーレツ経済学高度経済成長から学ぶ
モーレツ経済学

2018.7.11
高度経済成長から学ぶ モーレツ経済学 でんぱ組.inc 藤咲 彩音 証券アナリスト馬渕 治好高度経済成長から学ぶ モーレツ経済学 でんぱ組.inc 藤咲 彩音 証券アナリスト馬渕 治好

1970年代の日本を揺るがした2つ目のショック、『オイルショック』。中東の戦争を発端に不安定になった世界情勢は、当時の日本にどんな影響をもたらした? そこから学べる教訓とは? コスプレ好きアイドルでんぱ組.incの藤咲彩音さんと、高度経済成長期生まれの証券アナリスト・馬渕治好先生による対談、最終話では、『オイルショック』をひもときながら、今の時代につながるヒントを探ります!

最終話 高度経済成長期から学ぶ教訓

ウワサがウワサを呼んで、トイレットペーパーが街から消えた!

馬渕:1970年代は、『ドル・ショック』に続いて、もう1つのショッキングなできごとがありました。藤咲さんは、『オイルショック』って聞いたことありますか?

藤咲:学校で習いましたね! 確か、トイレットペーパーをみんなが買い占めたとか。

馬渕:そうですね。『オイルショック』には、第1次と第2次があって、第1次オイルショックが起きたのは1973年10月。中東で土地を巡ってイスラエルやエジプトなどが戦争をはじめて原油価格が高騰したんです。この当時には、イスラエルを支持する国には原油を売らないと決めました。

藤咲:日本は原油を売ってもらえたんですか?

馬渕:最終的には友好国として認められて売ってもらえたのですが、アラビアンライトという原油の値段は、1973年から1974年で約4倍に値上がりしました。「石油が足りなくなるかも!」と日本中がパニックになって、石油製品も値上がりしたんです。

藤咲:でもなんで、トイレットペーパー?

馬渕:ただ、よく考えると紙は石油から作られているわけじゃないですよね(笑)。実は、トイレットペーパーの買い占めは、1973年の11月1日、大阪の千里ニュータウンという団地を中心にした街のスーパーがトイレットペーパーの安売りチラシを撒いたことが発端だったと言われているんです。

藤咲:安売りチラシですか!?

馬渕:開店前にスーパーの前に行列ができたのですが、それが団地から丸見えだったそうで。みんな「何が起きたんだ!?」と。テレビでは、中東の戦争がはじまって、原油が高騰との話題。不安になって、行列を見た人がさらに並んで行列が延びて…10日分のトイレットペーパーが1時間で売り切れたそうですよ。

藤咲:確かに行列を見かけると、気になりますよね。まさか、スーパーの販売戦略!?(笑)。

馬渕:そのニュースが広がって、「トイレットペーパーがなくなるらしい!」というウワサになっちゃって。全国規模の大騒ぎになったんです。さらに「あの企業は売り惜しみをしている」というデマも流れたりして、日本中がパニックになっちゃったんですね。

藤咲:まさに、ウワサがウワサを呼んで、収拾がつかなくなる…。不安なときほど、そういうウワサって速く広がりそうですよね。

馬渕:当時は『ドル・ショック』後のカネ余りや『日本列島改造論』の影響でインフレーションが発生していましたが、『オイルショック』後の石油価格の高騰や便乗値上げなどで、物価はますます高騰。消費者物価は『オイルショック』が起きた1973年に約12%上がり、さらに1974年に23%アップしました。1973年に100円で買えていたジュースが、翌年には120円になったということです。

景気は悪いのに物価が上がる、最悪の事態に!?

藤咲:これまでも物価が上がったというお話はありましたよね。お給料が増えていれば、物価が上がってもみんなモノを買って景気も良くなると学びました。

馬渕:ところが、今回は、物価がものすごく上がったのに景気は悪かったんです。本来ならインフレーションが発生したら物価を下げる対策をしなくてはいけないのですが、そうすると景気もますます悪くなってしまう。インフレーション対策と景気対策、どちらを取るかの選択を迫られました。仕方がないので、まずは景気を悪くして、モノが買えないようになれば物価が下がるはずなので、その後に景気対策をしようと。

藤咲:具体的にはどんな対策をしたんですか?

馬渕:金利を上げたんです。当時、日銀の決めていた基本的な金利である公定歩合は、『オイルショック』前の1973年3月までは4.25%でしたが、段階的に5回引き上げて、1973年の終わりには9%になりました。金利が上がるとみんなお金が借りづらくなり、モノを買わなくなって、景気は悪くなるけど物価は抑えられるだろうと考えたんです。

藤咲:それで物価は下がったんですか?

馬渕:金利を上げる以外にもいろいろな対策を行いましたが、物価上昇は止まらなかったんです。『日本列島改造論』発表後の土地の高騰を抑えるために、日銀は、銀行に土地の購入や建築用の資金にお金を貸さないように制限しました。その結果1974年の着工数は前年の31%も減ってしまった。物価は下がらないのに景気はどんどん悪化して、みんなのお給料も減っていきました。

藤咲:お給料は減っているのに物価が上がるって、ものすごくツライ状況ですね。

馬渕:普通は景気が良くて物価が上がることをインフレーション、景気が悪くて物価が下がることをデフレーションと呼ぶのですが、景気が悪くて物価が上がるスタグフレーションという最悪の状況になりました。

藤咲:スタグフレーション! はじめて聞きました。

馬渕:1970年代の『ドル・ショック』や『日本列島改造論』、『オイルショック』などいろいろなことが重なって、戦後の1955年以降、はじめて経済成長がマイナスになりました。当時の物価は『狂乱物価』と呼ばれていますが、語感からも凄まじさが伝わってきますよね。その後、景気はゆるやかに回復しましたが、いわゆる高度経済成長は幕を閉じました。

藤咲:「狂乱物価」!? また、アニメっぽい言葉!(笑)。 でも、そのときの生活はきっとカツカツだったんだろうなあ…。

馬渕:そんな中みんなの価値観も変わっていきました。1950〜60年代は、科学技術も発達する、仕事もある、お給料も上がる…未来は明るいはずだ! と信じていた時代。でも、1970年代には、公害問題が出てきたり、『オイルショック』で省エネや省資源への関心が高まったりして、倫理的に正しい生き方をしようという考えも広がっていきました。

藤咲:今まではずっと前だけを見ていたけど、「あれ、このままでいいのかな!?」と立ち止まった感じですかね。

馬渕:そうですね。ベトナム戦争の反戦気運であるヒッピーのムーブメントが起きたり、反戦のフォークソングが流行ったりしたのもこの頃でした。

藤咲:1970年代のファッションも、フォークロアやサイケデリックが流行ったそうですが、そういう新しい価値観とつながっていたんですね。型にはまらないスタイル、私はすごく好きです。

モーレツだった高度経済成長期の教訓とは?

馬渕:1970年代に不景気が続いて、それまで日本の経済を引っぱってきた製造業は厳しくなりました。一方で、ファーストフードやファミリーレストランなどの新しい産業が生まれて、経済を支えるようになったんです。他にもコインランドリーが普及するなど、人手をかけずに安くサービスを提供できるような方向にシフトしていきました。

藤咲:ファミリーレストランやファーストフードは、今ではなくてはならない存在! 私もお世話になってます!

馬渕:新しい産業が日本を支えて、1970年代後半には、高成長はしていませんが、経済は安定しました。高度経済成長期を終え、日本経済が成熟したということだと思います。

藤咲:『ドル・ショック』とか『オイルショック』とか、ショッキングなことが次々と起きましたが、それらを乗り越えてオトナになったという感じ!?

馬渕:そうそう。そういう長い目で見る視点って、すごく大事なんです。これからだって、『オイルショック』に匹敵するようなことが起こらないとも限りません。2008年にはアメリカの住宅バブルがはじけた『リーマンショック』も起きました。さらに、アメリカの政策をはじめ各国の政治や経済の動きも世界の経済に影響を与えます。

藤咲:確かに、トランプ大統領になってより注目されている気がします。

馬渕:例えば、2016年のイギリスのEU離脱もその1つ。この年は世界に不安が広まって、世界全体の設備投資、住宅投資、建設投資のすべてが減ってしまいました。でも、経済成長を見るとマイナスではなくプラスだったんです。経済の状況は良くても、不安なできごとがあるとお金を使うのをやめておこうとなる。

藤咲:みんなの不安な気持ちが、守りに入らせるんですね。

馬渕:こういうできごとは、いつ、どこで起きるかは分からないけど、いくらでも起こりうると考えておくことが大事なんです。

藤咲:いざ起きたときにも、冷静でいられそうですもんね。

馬渕:今はグローバル化が進んで、お金の流れも世界でつながっています。例えば、ギリシャが財政難になったとき、いろいろと騒ぎになりましたが、直接関係がないような日本の株も下がったんです。不安が世界中を伝わるんですね。

藤咲:不安って、伝線するんだ…。

馬渕:グローバルな不安が起きてもそれが与える影響が国によって違ったりするので、資産運用を考えるなら、いろいろな国の資産を持っているといいと思います。株式だけでなく、国債など株とは違う動きをするものを持つのも手ですね。

藤咲:先ほどお話ししてもらった投資信託なら、例えば毎月5千円を投資の専門家がいる運用会社に預ければ、いろいろな株や債券を少しずつ買って運用してくれるんですよね。

馬渕:そうですね。1つのファンドを買えば、例えばアメリカの株、ヨーロッパの債券…といろいろと分散してくれるものもあるので、それを利用するのも手です。そして、もう1つ大事なことは、一喜一憂しないこと。すぐに手放さないで、長期的に持つということですね。

藤咲:それは、けっこうムツカシイかも! ○○ショックと言われると、すごく不安になりそうです。

馬渕:『リーマンショック』のときも世界中のマーケットが荒れましたが、振り返って見ると一時的なことでした。10年後、20年後に備えようという資産運用なら、投資先を分散して長期で持つという方法がおすすめなんです。

藤咲:なるほど〜! 高度経済成長期にタイムスリップしていたつもりですが、過去と現在がつながってきて、すごくおもしろいです。私は政治や経済の勉強は苦手だったんですが、なんだか好きになりました! テストのための勉強より、めちゃくちゃおもしろかったです!

馬渕:そう言ってもらえて、うれしいです(笑)。

藤咲:お金の価値は上がったり、下がったりすることがあると分かり、お金に対する見方も変わりました! 一喜一憂しなくてすむように、しっかりとお金のことも考えてみますね!

藤咲彩香のモーレツ!アイドル論 藤咲さんが当時流行したファッションに身を包み、学んだ内容からアイドル活動につながるヒントを見つけていきます。 藤咲彩香のモーレツ!アイドル論 藤咲さんが当時流行したファッションに身を包み、学んだ内容からアイドル活動につながるヒントを見つけていきます。

〈 でんぱ組.incは、どんな景気にも負けない分散型アイドル!? 〉

ショッキングなできごとは、いつどこで起こるかは分からないけど、お金を株や債券などいろいろな商品に分散して持つことが大事、ということを今回学びました。そう考えると、私たちでんぱ組.incは、まさに、どんな景気にも負けない分散型のアイドルかも!? アニメ、ゲーム、漫画、ダンス…いろいろなジャンルのオタクが集まっているのは強みになるはず。だからこそ、私は他の人と同じことをするのではなく、自分の好きなことを貫きたいですね。それが私のオリジナリティになるから。大好きなジャイアントパンダのような愛されキャラになれるよう、これからもキャッチーな歌や踊りを届けたいと思います!

最終話のファッションは、1970年代に流行したフォークロア。最終話のファッションは、1970年代に流行したフォークロア。

藤咲 彩音(ふじさき あやね)

藤咲 彩音(ふじさき あやね)

2011 年にでんぱ組.inc に加入。両親の影響で 1 歳からコスプレイヤーとして活動。
趣味がスポーツでフルマラソンをこれまでに2回完走。ブランド「Pzzz」のプロデュースも手掛けている。2017年には舞台「ギア-GEAR-」East Versionにて舞台初挑戦。2018年4月から新体制初となる全国ツアー「コスモツアー2018」を開催中。

馬渕 治好(まぶち はるよし)

馬渕 治好(まぶち はるよし)

1981年東京大学理学部数学科卒。日興コーディアル証券(現・SMBC日興証券)国際市場分析部長を経て独立、現在ブーケ・ド・フルーレット代表。内外諸国の経済・政治・投資家動向を踏まえ、株式、債券、為替、主要な商品市場の分析を行なう。データや裏付け取材に基づく分析内容を、投資初心者にもわかりやすく解説することで定評がある。