年金保険料の滞納が続くと届く「特別催告状」とは?

・危険度は信号と同じで、赤い(ピンク)封筒が最も危険!

日本の公的年金制度には、国民年金と厚生年金があります。厚生年金は会社員や公務員が加入する年金で、自営業者などは加入できません。
これに対して、国民年金は日本に住む20歳以上の国民すべてが加入する年金です。自営業者や学生、無職の方、専業主婦なども例外ではありません。

国民年金保険料は月1万6,410円で、60歳までの40年間支払うことで、月約6万5,000円の年金を受け取ることができます。ちなみに、専業主婦(第3号被保険者)は厚生年金加入者全体で保険料を負担する仕組みになっているので、自分で保険料を支払う必要はありません。

この記事で紹介する「特別催告状」は、国民年金保険料の支払いに関係しています。年金保険料を支払うことは国民の義務ですが、経済的に苦しい、年金制度に不信感を抱いているなどの理由で未納のまま放置している方も存在します。

しかし、国はそれを放置しません。まずは電話や文書の送付、自宅訪問によって「納付督励」と呼ばれる支払いの催促が行われます。それでも未納が続く場合に、特別催告状が郵送されます。

特別催告状とは、日本年金機構から送られてくる年金保険料の請求書のようなものです。最初は封筒の色が青で、次は黄色、最後に赤い封筒で送られます。

特別催告状の封筒の色と危険度

封筒の色が示す危険度は信号と同じで、青はまだ余裕があり、黄色が要注意、赤(ピンク)は危険という意味です。封筒が青のときは未納状況の説明程度の内容ですが、赤になると、財産差し押さえの準備に入ることを説明するなど、強い警告に変わります。

赤になるまで放置していいということではありませんが、封筒の色とその危険度は覚えておいて損はないでしょう。

無視はNG! 支払えないと財産が差し押さえられる

・実際に年間1万4,000件の差し押さえが実行されている

「特別催告状が届いても無視すればいい」という方もいます。それまで何度か書類が送られてきても何も起こらなかったので、これからも何も起こらないということはありません。そのままにしておくと財産が差し押さえられる可能性があるのです。

2018年度の財産の差し押さえは、約1万4,000件もありました。 条件は年々厳しくなっており、今年は差し押さえ対象外だったとしても、来年以降もそうとは限りません。国民年金保険料は支払う義務があるので、未納のまま放置することは避けましょう。

特別催告状が届いてから差し押さえまでの流れは、以下のとおりです。

年金保険料未納による差し押さえまでの流れ
  • 厚労省「国民年金の未納者に対する対応」を基に、株式会社ぱむ作成。

最初の「納付督励」には、特別催告状の送付も含まれます。「最終催告状」は納付書とともに送られ、指定期限までに支払わないと財産の差し押さえが行われると警告するものです。2018年度は、約10万3,000件送付されました。

それでも未納が続く場合は「督促」に進み、督促状が送られてきます。延滞金がかかることや財産の差し押さえについて書かれており、本人だけでなく配偶者や世帯主にも送付されます。2018年度は、約6万6,000件送付されました。

そして最終的には「差し押さえ予告書」が届き、本当に財産を差し押さえられてしまいます。
差し押さえについての詳細はこちらの記事も参考にしてください。

【関連記事】年金の差し押さえ〜未納はNG! 実際に財産が差し押さえられることも〜

支払えないときは「猶予」や「免除」が使えるか確認する

・学生や失業した方、年収が低い方が使える

もし特別催告状が届いたら、すぐに全額支払うのが理想的ですが難しいこともあるでしょう。学生などで収入がない、家計が苦しいなどの事情がある方にも支払いを強制するわけではありません。

そんなときにおすすめなのが、年金保険料支払いの「猶予」や「免除」の手続きです。住民登録している市役所または区役所・町村役場の国民年金担当相談窓口に申請することで、年金保険料の猶予や免除が認められることがあります。
主な猶予や免除の条件はこちらの記事で詳しく解説していますので、あわせて確認してください。

【関連記事】年金の未納〜払わなくても良い?払わないとどうなる?〜

・猶予や免除期間分の保険料は追納できる

「猶予」や「免除」と「未納」はまったく違います。支払わないことを国から正式に認められているかどうかだけではなく、追納の可否も異なります。

猶予や免除期間の保険料は10年分まで遡って納付することができ、これを「追納」といいます。

年金保険料を支払わないと、将来の年金額が減るだけでなく、財産が差し押さえられるリスクもあります。差し押さえの条件は昔に比べ厳しくなっており、今まで大丈夫だったからといってこれからも大丈夫という保証はありません。

支払えるならすぐに支払う、難しければ猶予や免除申請し、生活を立て直してから追納するようにしましょう。

【関連記事】年金の追納〜年金保険料を追納すると受給額が増える仕組みを解説〜

納付は義務、どうすれば支払えるのか周囲とも相談を!

・まずは最寄りの年金事務所や役所に相談しよう

国民年金保険料の支払いは国民の義務で、避けられるものではありません。払えないからといって未納のまま放置していると、後で大変な目にあってしまいます。

「支払わずに済む方法はないか」ではなく、「どうしたら未納を解消できるか」と考えるようにしましょう。問題を先送りにしても何も解決しません。どんどん未納額が膨らんでいき、年金の受給額が減っていくことになります。

老後になって年金を受給する年齢になったとき、「きちんと支払っておけば良かった」と後悔しても遅いのです。今できることを考え、行動することが大切です。

そのためにはまず、最寄りの年金事務所や役所の年金窓口で支払いの相談をしましょう。どうするべきかを教えてくれますし、他に困りごとがあれば担当部署などにつなげてもらうこともできます。

未納が続いていると年金関係の窓口に行くことは気が引けるかもしれませんが、問題解決のためにも相談に行きましょう。

年金保険料の未納に限らず、借金など根本的に解決すべき問題がある場合は、弁護士に相談することをおすすめします。弁護士費用を払う余裕がない人は、「法テラス」を利用するといいでしょう。「法テラス」は、国が設立した法的トラブル解決のための総合案内所です。法律に関するあらゆる悩みに対し、無料で相談に乗ってもらうことができます。また精神的に不安定になっている人は、カウンセラーや医師に相談するのも手です。

年金保険料を支払えないのはなぜか、支払うために解決すべき問題は何か、自分はどこに相談に行けばいいかなどについて、一度考えてみましょう。力を借りる相手がわかれば精神的にも楽になりますし、1人で悩んでいるよりも問題解決に向けて前進することができるはずです。

まとめ

公的年金には、国民年金と厚生年金があります。国民年金保険料の未納が続くと、国から特別催告状が届きます。特別催告状の封筒の色は3つあり、危険度を表しています。青は危険度が低め、黄色は中ぐらい、赤(ピンク)は危険です。

特別催告状が届いた後は最終催告状、督促状、差し押さえ予告を経て、最終的には財産が差し押さえられてしまいます。財産の差し押さえは実際に行われているので、できるだけ早く支払うようにしましょう。どうしても支払いが難しい場合は、放置するのではなく、猶予や免除を申請するという方法もあります。

1人で悩まず、年金事務所や年金窓口などに相談することで解決の糸口が見つかるはずです。国民年金保険料の支払いは国民の義務なので、未納の解消に向けてできることからはじめていきましょう。

  • この記事は2020年1月現在の情報を基に作成しています。今後、変更されることもありますのでご留意ください。

記事提供元:株式会社ぱむ

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