そろそろ本気で考えたい! アラサー・アラフォーのお金の育て方

2022.8.3

自分の投資が正解とは限らない!? 投資優等生でも気づかない「リスクの罠」とは

自分の投資が正解とは限らない!? 投資優等生でも気づかない「リスクの罠」とは
「ミレニアル世代」とも呼ばれる今のアラサー・アラフォーは、やりたい仕事に就いたり年収が上がったりして人生に楽しさを感じる時期を過ごしています。その一方、特に独身の場合は、「このまま独身? それとも結婚?」「老後資金は結局いくら必要?」など将来への不安が頭の片隅から離れないことも……。

そこで、“辛口”FPがミレニアル女子のセキララな相談に応じ、今後の人生をハッピーに生きていくための資産運用についてアドバイス。今回は金融機関にお勤めの麗奈さんが登場。4年前につみたてNISAを始め、順調に資産を増やしてきた麗奈さんに、辛口FPはどんなアドバイスするのでしょうか。さっそくみていきましょう!
この記事はこんな方におすすめ!
相談者プロフィール

投資の優等生麗奈さん(仮名)
28歳女性。金融機関勤務。子どものころから堅実で、無駄な出費が大嫌い。出費を抑えながら、積み立て投資を続けてきた。現状に不満はないが、どうやら母の資産運用にモノ申したい様子。

辛口FP 花山院 扇子(かざんいん・おうぎこ)のプロフィール

花山院 扇子(かざんいん・おうぎこ)
奈良県出身のファイナンシャルプランナー。大学在学中、留学先で出逢ったフランス人実業家と結婚するも2年で離婚。無一文で追い出された経験から、お金の大切さに目覚めてFPに。その歯に衣着せぬアドバイスは厳しくも深い愛情に満ちており、顧客から尊敬と親しみを込めて「扇の君」と呼ばれている。
※本キャラクターは、高山一恵氏監修のもとに作成したフィクションです。実在の人物、団体とは関係ございません。

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母の資産運用が気がかり。リスクを取れば、その分お金が増えるのに……

麗奈さん「花山院先生、こんにちは!」

花山院「あら、麗奈さんね。いらっしゃい」

麗奈さん「実は先生に聞いてほしいことがあって」

花山院「どうしたの?」

麗奈さん「母に積み立て投資をすすめているのですが、全然聞いてくれなくて」

花山院「お母さまが投資をしてくれないの?」

麗奈さん「いえ、積み立て投資は始めてくれたのですが、ローリスクの投資信託ばかり買っているんです。私がすすめた外国株のインデックスファンドなら、もっと大きく増やすことができるのに……」

花山院「ちょっと待って! それは危険な発想よ」

麗奈さん「え……?」

花山院「困った子ね。そもそも、あなたはどんな運用をしているの? まずは麗奈さん自身の運用状況や家計についてチェックしてみましょう」

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無駄な出費は一切なし! 学生時代から堅実な生活を貫いてきた倹約家

麗奈さんの家計のバランスシート
花山院「最初に月々の収支を確認させて。まあ、とても堅実に暮らしているのね。無駄な出費がほとんどないじゃない」

麗奈さん「ありがとうございます。買い物をするときには、事前に何を買うか決めてから購入するようにしています。なので、コンビニでちょこちょこと買い物をすることもないです」

花山院「すばらしいわ。以前から堅実な生活をしてきたの?」

麗奈さん「そうですね。大学から一人暮らしを始めたのですが、学生時代は両親の仕送りでやりくりをして、アルバイト代はすべて貯蓄していました」

花山院「すでに経済観念ができあがっていたのね。月々の支出で気になっているところはある?」

麗奈さん「通信費と交通費です。通信費は格安スマホに変えたのですが、Wi-Fi代が高くて10,000円近くかかっているので、もっと安く抑える方法はないか探しています」

花山院「Wi-Fi代込みだと、どうしてもこのくらいになってしまうわよね。収支のバランス的には、十分抑えられている方だと思うわよ」

麗奈さん「花山院先生にそう言っていただけてうれしいです」
辛口FPメモ
<辛口FPメモ>
・現在の堅実な生活は、学生時代に確立したのね。
・事前に買うものを決めておくと、無駄な買い物をせずに済むのでオススメよ。
・日々のちょっとした買い物も、積み上げていくと意外と大きな出費になるものよ。
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つみたてNISAで想像以上にお金を増やせたからこそ、同僚や母にすすめたのに……

花山院「麗奈さん、お仕事は何をされているの?」

麗奈さん「新卒で金融機関に就職して、丸6年が経ちました」

花山院「仕事柄、金融の知識が身についているのね。本格的に資産運用を始めたのはいつ頃?」

麗奈さん「4年前です。それまでは財形貯蓄をしていたのですが、金利があまり高くないので、何か良い方法はないか検討していました。2018年に”つみたてNISA”がスタートすると知って、良いタイミングだと思い口座を開設しました」

花山院「つみたてNISA以外にも投資信託を買っているのね」

麗奈さん「もっと投資をすれば、さらにお金を増やせると思って。それで、去年の10月から特定口座で投資信託を積み立て購入しています」

※特定口座とは、投資商品を保有する際に用意されている口座のひとつ。金融機関が保有する投資商品の譲渡損益を計算して「年間取引報告書」を作成するため、確定申告が簡単になるなどのメリットがある。

つみたてNISAのポートフォリオ、投資信託(特定口座)のポートフォリオ
花山院「次にポートフォリオを見ていきましょう。すべて株式のインデックスファンドなのね。積み立てをしている投資信託は自分で選んだの?」

麗奈さん「SNSやテレビ番組、証券会社の積立投信ランキングなどの情報をチェックして購入する商品を決めました」

花山院「えらいわね」

麗奈さん「つみたてNISAの運用益が10%プラスになればと思っていたのですが、実際は30%もプラスと想像以上に大きくて、自分でもびっくりしています。こんなに増やせるのならと、同僚や母にもすすめているのですが……」

花山院「良い反応ではなかった?」

麗奈さん「同僚はお金がないからとやってくれないし、母は株式のみは怖いからと、債券が含まれているバランス型のインデックスファンドを購入しているし。先進国株のインデックスファンドの方が大きく増やせるのに……」

花山院「麗奈さん自身は、今後の資産運用で不安に感じていることはある?」

麗奈さん「特にありません。これからも積み立て投資を続けてお金を増やしていって、いつか都内にマンションを買おうかなと思っているくらいです」

花山院「そう。あなたの気持ち、わかったわ。ではいよいよ麗奈さんにアドバイスするわよ。心して聞いてちょうだい」

麗奈さん「よろしくお願いします!」
辛口FPメモ
<辛口FPメモ>
・預貯金をしっかり確保して、余剰資金で資産運用をしている点は評価できるわ。
・ポートフォリオが株式に偏っているのが気になるわね。
・資産を大きく増やせたことで、投資への意欲がさらに高まったようね。
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「リスク許容度」は人それぞれ。長く資産運用を続けたいなら、無理は禁物!

花山院「麗奈さん、あなたはとても堅実に生活しているし、投資についても自分で調べて、つみたてNISAや積み立て投資を始めている。そのリサーチ力と行動力は高評価に値するわ。

でもね、麗奈さんを想ってズバリ言うわね。あなたの”資産運用できてる度”は星5つ中……★★★☆☆よ!!」
あなたのできてる度はズバリ星3つよ!!
麗奈さん「えっ! 意外です。なんでそんなに低いんですか?」

花山院「ポイントは2つあるわ。一つは、麗奈さん自身の心についてよ」

麗奈さん「心?」

花山院「麗奈さんがつみたてNISAを始めたのは2018年。コロナショックで株価が暴落した時期もあったけれど、すぐにV字回復したわよね」

麗奈さん「おかげで、大きく増えました」

花山院「じゃあ今後、もし株価が暴落した時、麗奈さんは耐えられる?」

麗奈さん「はい。コロナ時も平静でいられたし、大丈夫だと思います」

花山院「まあっ、自分を過信しちゃダメよっ!」

麗奈さん「えっ!」

花山院「麗奈さんはリーマンショックやITショックを経験していないでしょう? 何なら、90年代前半に起きた日本のバブル崩壊も知らないでしょう?」

麗奈さん「はい。バブル崩壊時には生まれていませんし……」

花山院「コロナショック後はすぐに株価が回復したけれど、長い歴史を見ていくと、長期にわたって株価が低迷したことは度々あるの。せっかく積み立てた投資信託の評価額が数年間マイナスになっても、麗奈さんは耐えられる?」

麗奈さん「それは……」

花山院「でしょう? だからこそ、自分自身の心と向き合うことが大切なのよ」

麗奈さん「なるほど」

花山院「それから、もう一つのポイントは、リスク許容度は人それぞれということ。リスク許容度は、その人の年齢や資産の状況、投資経験などから判断することができるんだけど、ご年配のお母さまがリスクを取りたがらないのは当然のことよ」

麗奈さん「!!」

花山院「お母さまの年齢や投資経験などから判断して麗奈さんよりもリスクを取ることはできないと思うの。例えば、若いうちは大きく資産を減らしてしまったとしても立ち直るまでに十分時間はあるけど、年齢を重ねると若い時ほど回復を待てる時間的余裕はないでしょう。それと、投資をする時には、どれだけリスクに耐えられるのか気持ちの部分も大切なの。きっと、お母さまは長い人生のなかで自分はどこまでなら耐えられるのかリスクに対する考え方が自然と身についているんだと思うわ。きちんと線引きをして、『これ以上のリスクは怖いから』とローリスクの商品を選んでいる」

麗奈さん「私、もしかしたら母の心に寄り添えていなかったのかもしれません……」

花山院「やっとわかってくれたわね」

麗奈さん「リスクに対する意識はきちんと持っていたつもりでしたが、先生のアドバイスを聞いて心を改めました。母も私も、常に自分の心と向き合いながら、無理のない範囲で資産運用を続けていくことが大切なんですね。先生、ありがとうございました!」

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花山院 扇子による今回のまとめ
リスク許容度は年代と共に変化するもの。例えば20代で独身の麗奈さんのリスク許容度と、結婚して家庭をもった30代のリスク許容度は、おのずと違う。年齢や資産状況はもちろんだけど、常に自分の心と向き合いながら、「今のリスク許容度はこれで大丈夫かな?」と確認することが大切。資産運用において、自分を過信するのは絶対にダメよ。

麗奈さんは「都内にマンションを購入したい」と言っていたけれど、住宅ローンは月々の手取り金額の25%以内が理想とされているの。都内は物件価格が高いから、30%~35%を目安にするといいわ。良い物件が見つかったら住宅ローンの額を想定して、頭金の金額を割り出してみて。頭金の額は、基本的には物件価格の10%〜20%程度が目安よ。住宅ローンを適切な額で設定できるよう、つみたてNISAや積み立て投資で頭金をしっかりためてちょうだい。

最後に、ポートフォリオの見直しもぜひ行ってほしいわ。今のポートフォリオは株式に偏っているから、リスク分散のためにも債券やリートなど株式以外の金融商品も検討してみて

いずれにしても、麗奈さんは投資の優等生とも呼んでもいいくらいに高いマネーリテラシーをもっているわね。今後、彼女がどのくらい資産を増やしていけるのか、私も楽しみにしているわ。

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※2022年8月現在の情報です。今後、変更されることもありますのでご留意ください。

監修:高山 一恵

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