お金も時間も自由に使えて、自分らしい生活を送ることができる「おひとりさま」。日本では年々未婚率が上昇していることもあって、おひとりさまのライフスタイルが注目を浴びています。実際、公私ともに充実しているおひとりさまは多いけれど、一方では、「このままずっとひとりで生きていけるのかな」「貯蓄が少なくて老後が心配」など、今後の人生に不安を感じている人がいるのも事実です。
そこで、“辛口”FP がおひとりさまの相談に応じ、今後の人生をハッピーに生きていくための資産運用についてアドバイス。今回は、都内で一人暮らしをしている大造さんが登場です。収入はそれほど多くないものの、すでに3,500万円もの金融資産を築いている大造さんは、あることが気になって仕方がないようです。そんな彼に辛口FPはどんなアドバイスするのか、さっそくみていきましょう!
祖父母が遺した築60年の一軒家で一人暮らし。そろそろ建て替えが気になって……?
大造さん「あの……」
花山院「……」
大造さん「……あ、あのっ!」
花山院「あら。お客さん?」
大造さん「は、はい。大造と申します」
花山院「ごめんなさい、気づかなくて」
大造さん「い、いえ、よく言われるんです。声が小さいって」
花山院「そうなの?」
大造さん「はい。そうなのです」
花山院「で、今日はどうしたのかしら」
大造さん「あ、はい。それが僕は今、祖父母が遺してくれた一軒家で一人暮らしをしているのです」
花山院「素敵じゃない」
大造さん「でも、気になることがあって」
花山院「何が気になるの?」
大造さん「築
60年で古いから、建て替えしなきゃいけないのかなって。僕、そんなに稼いでないから不安になってきて……」
花山院「それで私のところに来たのね。じゃあ、詳しく話を聞いてみましょう」
大造さん「はい。よろしくお願い致します」
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花山院「まずは月々の収支を教えてちょうだい。今はアルバイトで生計を立てているの?」
大造さん「僕は理系の大学院に通っていたのですが、リーマンショックで一気に不況になってしまって、就職できなかったのです」
花山院「そうだったのね。支出はどうかしら。あら、あなた、全然お金を使ってないじゃない! 本当にこの数字で合っている?」
大造さん「合っています。食費は節約のため、数か月に一度、オンラインショップでお米と大豆を30キロずつ購入しています」
花山院「トータルで月に3万円もかかっていないのね」
大造さん「所得が低い分、医療費の負担軽減がありますし、住民税も非課税です。外出はほとんどしなくて、たまに好きなキャラクターに会いにテーマパークに行くくらいです」
花山院「私のFP人生で最も支出のかかっていない相談者だわ」
大造さん「褒めてくれていると受け止めました。ありがとうございます」

- <辛口FPメモ>
・食費が6,000円だなんて、ちゃんと食べているのかしら。とても心配だわ……。
・収入があまり高くない分、支出を徹底的に抑えているのね。
・それでも、趣味にお金を使っているのね。とにかく、ホッとしたわ。
金融資産は3,500万円超え。だけど家の建て替えが気になって、老後のことまで考えられない!!
花山院「じゃあ、今度は資産運用の状況もみていきましょう。あら、すごいじゃない! たくさん貯蓄しているのね」
大造さん「ほとんどお金を使わないので」
花山院「それでもすごいことよ。資産運用もしっかり行っているし」
大造さん「大学生の頃、親に勧められて始めました」
花山院「いい親御さんじゃない」
大造さん「仕送りや親が投資資金にくれたお金を元手にして、試行錯誤しながらも自分なりに株や投資信託を買うようになりました。たまに行くテーマパークは株主優待を使っているので、ほとんどお金がかからないんです」
花山院「賢いわね。いずれにしても、ここまで貯めたのだから大したものだわ」
大造さん「でも、家を建て替えることになったら、破綻するのは目に見えています。僕はアルバイトだから、そもそも住宅ローンが組めるかわからないし」
花山院「そうかしら」
大造さん「たぶん、僕はこのまま独り身だと思うんです。だから本当は老後のことを考えて、少しでも収入を増やしたい。でも僕はコミュニケーションが苦手で、なかなかうまくいかなくて……」
花山院「そう。わかったわ、大造さんの気持ち。じゃあ、老後のことも含めて、これからアドバイスするわよ」
大造さん「よろしくお願いします」

- <辛口FPメモ>
・親御さんの援助があったとしても、ここまで貯めたのは本当にすごいことよ。
・一般NISAも特定口座の投資信託も、信託報酬が安くて分散投資ができる「インデックスファンド」を選んでいるあたり、安定的に資産を増やそうとしてきた相談者の思いが伝わってくるわ。
将来の年金額を確認して、老後の収支をイメージ。一つひとつ確認して、将来に備えるのよ!
花山院「大造さん、あなたは親の援助を受けながらも、基本的には自分一人の力で暮らしてきた。しかも、今では多くの金融資産を築いている。それは本当に素晴らしいことだし、誇っていいわ。だから、正直に今のあなたの状況をジャッジさせていただくわね。
あなたの”資産運用できてる度”は星5つ中………★★★☆☆よ!!」
大造さん「そ、それはなぜにして、そのような評価が?」
花山院「インデックスファンドをメインに、堅実に資産運用をしながら、3,500万円もの資産を築いてきたのは、評価に値することだからよ。ただ気になるのが生活費、特に食費が低すぎるわ」
大造さん「大豆と卵でちゃんとタンパク質を取っていますよ」
花山院「お願いだから、お肉や魚も食べてちょうだい」
大造さん「わかりました。前向きに検討します」
花山院「それから、お家の建て替えのことが気になっているみたいだけれど、住宅ローンの審査は年収だけではないのよ。金融資産なども含めて、トータルに判断するの」
大造さん「そういうものなんですか?」
花山院「確かに、正社員になって年収が増えたほうが信用度は上がるけれど、だからと言って過度に心配するのは良くないわ。それに、金融機関によって審査の基準が違うのよ」
大造さん「じゃあ、まずはいろいろな金融機関にあたってみるのが大切なんですね」
花山院「そういうこと。それから老後のことだけれど、まずは、将来どれくらいの年金を受け取れるか確認してみましょう。日本年金機構のねんきんネットなら、将来の年金受取額が試算できるわよ。そして、将来の年金受取額で生活していけるか、イメージするのよ」
大造さん「なるほど。僕の年収的にそんなに受け取れないと思いますが、それでも、今の生活費なら年金で生活していけるかもしれません」
花山院「そうそう、その調子よ」
大造さん「先生にアドバイスをいただいたおかげで、もやもやしていた視界が開けたような気がします。まずは金融機関に相談してみることから始めてみたいと思います。そして、ご飯もしっかり食べて、自分らしく楽しく生きていくつもりです。先生、ありがとうございました」
辛口FPからのアドバイス:何事もバランスが大切! 適度に節約をしつつ、人生を謳歌するのよ!!
今回の相談者のように、アルバイトで生計を立てている人は決して少なくないように思うわ。でもね、正社員で働くにしても、パートやアルバイトを選ぶにしても、「本人が幸せであるか」が大切だと思うの。
ただし、相談者が心配していたように、アルバイトの場合は大きなローンを組む時にどうしても信用度が低くなってしまいがち。人生、いつ何が起こるかわからないのだから、万が一の出費に備えるためにも、日々の資産運用で金融資産を増やす努力が必要よ。
最後に、老婆心ながらも言わせて。相談者のように、徹底的に節約すれば多くの資産を貯められるかもしれない。でも身体を壊してしまったら、元も子もないのよ。だから資産運用でお金を増やしつつ、バランスの良い食事を摂って、適度に趣味を楽しんで、人生を謳歌してほしいわ。
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※2023年3月現在の情報です。今後、変更されることもありますのでご留意ください。
高山 一恵(たかやま かずえ)
ファイナンシャルプランナー(CFP)、一級FP技能士。株式会社Money&You取締役。
全国での講演活動、執筆、マネー相談を通じて、女性の人生に不可欠なお金の知識を伝えている。女性向けWEBメディア『FP Cafe®』や『Mocha』も運営。また、『Money&You TV』や「マネラジ。」「Voicy」などでも情報を発信している。 主な書籍には、「はじめてのNISA &iDeCo」(成美堂出版)「1日1分読むだけで身につく お金大全100」(自由国民社)」「はじめのお金の基本」(成美堂出版)「マンガと図解 はじめてのFIRE」(宝島社)などがある。
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https://moneyandyou.jp/