人生の折れ線グラフ -「いままで」と「これから」-人生の折れ線グラフ
-「いままで」と「これから」-

2017.12.27

澤穂希インタビュー前編 「子育て」という人生の新しいステージへ

ライフイベントや環境の変化によって、刻々と変化していく人生の折れ線グラフ。長年、サッカー界を牽引してきた澤穂希さんの折れ線グラフはどのようなものでしょうか?今回は、2015年の結婚、現役引退から新しいステージに立ち、なお挑戦し続ける、澤さんの「今」に迫ります。

2015年「もうあと1年、今年だけ」と引退を決意

酒井:2015年、澤さんが引退されるというニュースを聞いて、今後どのような人生を歩まれるんだろうと思っておりました。そもそも、ご自身の引退とその後のキャリアについては、どのように考えていらっしゃいましたか?

:一時期、国際試合に出場するチームに呼ばれない期間が1年間ほどあって、そこで初めて「もういいかな」「引退しようかな」と考えていました。自分のモチベーションが上がらないというか、どこに気持ちを持っていけばいいのかがわからなくて。年齢とともに、ケガをしても治りが遅かったり、自分の思うような動きができなかったり。

酒井:メンタル面でもフィジカル面でもご自身でのコントロールが難しくなっていらっしゃった。でも、そのときは引退されなかったんですよね?

:はい、当時、お付き合いを始めたばかりの主人からも「もう一回がんばってみれば?」と言ってもらったことで、気持ちを切り替えることができました。ただ、同時に何年もこの状態を続けるのは難しいとも感じ、2015年のはじめに「もうあと1年、今年だけ」と決めました。

酒井:パートナーの支えの大切さを感じられたのですね。

:2015年の8月に結婚して、12月に引退。人生においてとても印象的な1年でしたね。翌年、主人の暮らす仙台に引っ越しました。

酒井:夫婦での新しい人生が始まったのですね。

:2015年の1年間は結婚について考えていました。この先の人生は、1人じゃないんだと。やっぱり、引退してからの人生のほうが長いわけじゃないですか。それまで自分の好きなことを続けてきましたけど、家族ができたらそれだけじゃいけないですし、お金も必要だから貯金もしなくちゃいけない。でも、結婚をして、子供ができるって、気持ちの面ですごく心強いです。

今は、育児が楽しくてたまらない毎日

酒井:人生の大きな節目として会社員ですと「定年」ということになるかと思いますが、ある調査データによると、「定年後に『期待すること』」という質問に対して、もっとも多かった答えが「時間が自由になる」、続いて「夫婦でゆっくり過ごす」「趣味に没頭する」でした。澤さんの場合ですと、引退後に期待されていたことってどんなことでしたか?

:私は、子育てを楽しみたいと思っていました。ずっと子どもが欲しかったというのもありますけど、今はもう育児が楽しくて楽しくてたまらないです! 今まで見たことのない景色ばかりです。

酒井:子育てって、大変なことも多いですが、楽しみも多いですよね。お仕事もされていらっしゃいますよね。

:子育て最優先ですが、少しずつ時間をみて仕事をしています。

酒井:何かサッカー以外の活動をしてみたいという気持ちはありますか?

:今は、育児のことしか考えられませんが…ただ、私はもし主人が60歳になって定年退職したとしても、2人で家にずっといるのはイヤなタイプなんですよ。たぶんじっとしていられないです(笑)。

お金は「自分」「家」「子供」の3つに分けて管理

酒井:ご結婚されたり、お子さんが生まれたりすると、お金への価値観も変わられることが多いのですが、澤さんはいかがでしたか。

:私は独身の頃からお金に対して堅実に向き合ってきたので、貯金は毎月ちゃんと続けていますね。今は、自分の使うお金、家のお金、子どものお金に分けて管理しています。

酒井:わぁ、偉い!きちんとされていらっしゃるんですね。

:みんなそうなんじゃないですか!?

酒井:いえ、意外と人によりますよ(笑)。分けて管理していないと、いつの間にか減っていた、なんてことも。いつ頃から、そんなふうに分けて貯金しておこうと思われたのですか?

:お金に関しては、子どもの頃に親が苦労している姿を見ていたので、昔からきちんと貯金はしていましたね。でも、すごいケチケチするのもイヤなので、使うときは、バーンッと使ったりします(笑)。

酒井:そんな意外な一面も!

:現役時代も、例えば欲しい時計やジャケットがあったら、毎月ちょっとずつ貯めて、何かで優勝したときのご褒美として買ったりしていました。

酒井:目的のためにコツコツと貯めて、買うところがいいですね。計画的でしっかりしていらっしゃる。もしかすると、株や投資などの運用もされていますか?

:いえ、やっていないです。私は慎重な性格なので、もしやるとしても、きちんと勉強してから始めたいですね。

指導者でなく、サポートする側で、子供たちに夢を与える活動がしたい

酒井:現役の選手たちに、引退後の心構えのようなことをお話されたりはしますか?

:後輩たちには、「いつか絶対に引退するときは来るから、やりきったと思えるまでは現役は続けたほうがいい」と伝えています。中途半端な気持ちのまま引退すると、引きずるんですよ。絶対にまたやりたくなる。私は、現役を退いてから全然サッカーをやっていないんです。やりたいと思う気持ちがなくなるぐらい、本当に最後までやりきったので。

酒井:その言葉には重みがありますね。サッカーでも頂点を極め、引退されて結婚生活や子育てを楽しまれている。澤さんのようなライフスタイルに憧れる後輩の方も多いでしょうね。

:「いいなー」とはよく言われます(笑)。でも、ちゃんと将来のために準備してましたからね! って。自分の欲しいものや、なりたいものがあって、迷っているときは絶対にやってみたほうがいいんですよ。やりたくなかったら迷わないわけですから、不安や恐怖心があったとしても、まずやってみることが大切だと思います。

酒井:一歩踏み出す勇気ですよね。

:何かしらの行動に移さないと。待っているだけじゃ、何も変わらないですから。

酒井:まだ澤さんのセカンドキャリアは始まったばかりですけど、この先の目標や夢などはありますか?

:子どもが20歳になったら、主人は自然に囲まれた別荘でゆっくりしたいと言っています。温泉とかに浸かりながら。でも、私自身は、ゆっくりしたいけれど、やっぱりアクティブには過ごしていたいですね。週に何回かは東京に行って仕事したり。

酒井:お仕事はやっぱりサッカー関係ですか?

:現役時代のさまざまな経験を生かしていきたいです。選手の気持ちもわかるので、メンタル面の配慮など役立てることはあると思います。

酒井:指導者の澤さんも見てみたいですね。

:女子サッカー選手は現役引退後に指導者の道に進む人が多いですね。でも、私は今の時点で指導者にはあまり興味がないのと、向いていない気がするので、サポートする側の方がいいかなぁ。子どもたちに夢を与えられるような活動はこれからもしていきたいですね。

澤 穂希(さわ ほまれ)

1978年生まれ、東京都出身。15歳で日本代表に初選出され、男女合わせて日本サッカー史上、歴代トップの205試合出場と83得点を記録。2015年8月に結婚し、同年12月に現役を引退。現在は一児の母。

衣装:

澤 穂希(さわ ほまれ)

酒井 富士子(さかい ふじこ)

株式会社回遊舎 代表取締役。上智大学新聞学科卒業後、日経ホーム出版社(現、日経BP社)に入社。「日経ウーマン」「日経マネー」副編集長歴任後、リクルートに入社。「赤すぐ」(赤ちゃんのためにすぐ使う本)副編集長を経て、2003年から現職。近著に『60代の得する「働き方」ガイド』がある。

酒井 富士子(さかい ふじこ)