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2020.9.16

#1 カレーの魅力に惹かれ、元OLがカレー屋になるまで。阿部由希奈さんのキャリアとマネー事情(前編)

「kitchen and CURRY」店主の阿部由希奈さん

リモートワークが当たり前となった現在、「時間や場所にしばられず、自分らしく自由に働く」といった新しい働き方を模索したいという人が増えていますね。そこで今回、そんなスタイルをすでに実践している人に、仕事、生活、お金についてリアルな話を聞く連載企画「理想のワークスタイルの見つけ方」をスタート! 今の働き方にいたるまでの試行錯誤や、気になるお金事情まで、じっくり聞いていきます。

第1回は、スパイスと野菜にこだわった創作カレーが人気のカレー屋「kitchen and CURRY」店主の阿部由希奈さん。
飲食業の経験がない状態からカレーの仕事を始めたという阿部さんは、一見、人生の流れの中で、自然と“好きなこと”を見つけ、それを上手に仕事にしていったかのように見えますが、ここにたどり着くまでには、大きな試行錯誤があったそうです。

<プロフィール>
and CURRY 阿部由希奈さん
1984年生まれ。会社員時代にカレーと出会い、31歳でフリーランスとなり、イベントや間借りした飲食店でカレーを作って提供する “流しのカレー屋”としての活動をスタート。現在は世田谷区羽根木の「kitchen and CURRY」で、週2日レストラン営業も行っている。
ここがポイント! □地道な情報発信で得られたファンの存在が自信となり、カレー屋をスタート □会社員時代の仕事を続けながらのスタートで、お金とモチベーションのリスクヘッジをしながら独立 □店舗オープン資金500万円を借りるときにも、会社員時代の経験とスキルが活きた □独立後お金の価値観にも変化が。キーワードは「自己投資を惜しまない」 □相談相手は貴重。人との出会いを大切に

地道な情報発信で得られたファンの存在が自信に。飲食業界未経験のOLがカレーを本業とするまで

オリジナルチキンカレーとほうれん草チーズカレーの2種盛り
オリジナルチキンカレーとほうれん草チーズカレーの2種盛り
「女性がもっと自由に働くには?」をテーマに仕事を選んでいたという阿部さん。
会社員時代、1社目は求人系広告の会社で営業。2社目はWEB系の企業で人事として研修企画や採用業務を担当し、3社目は保育園の事業企画に従事。保育園設立のための事業計画を立て、行政やクライアントとやりとりをしながら開園までのディレクションを行いました。

仕事は充実していたものの、ハードに働いていたため、心身ともに疲弊。ゆっくり働きたいと考え、定時に終業するという約束で、知人の起業したスタートアップの企業に参画し、人事、広報、WEBディレクターを幅広く担当することに。
せっかくだから終業後に「何かできることはないかな?」と打ち込める趣味を探していたところ、ふと「そういえば、最近、週に3回くらいはカレーを食べているな」とハマり始めていることに気づき、これをテーマに何かしてみようと思い立ちました。

カレーを食べ歩き、「女子会ができるカレー屋さん」のお店紹介をFacebookで行うことから始め、次第に自ら「ビールで煮込んだ肉でカレーを作る」「メーカー別カレールーの比較検討をしてみた」などの企画を行うように。
「カレーといえばあの子」と自分を覚えてもらえるよう、それをブログやSNSでこつこつ発信していたといいます。カレーの研究にもさらに注力。
東京のみならず全国のいろんなカレー屋さんを食べ歩き、その研究をもとに、ルーを使わずスパイスのみで自作するなど、こだわりのカレーも作るようになりました。
高知県産の葉玉ねぎ
こだわりの野菜をたっぷり使うのが阿部さん流。こちらは高知県産の葉玉ねぎ
とはいえ、この段階ではカレー活動は趣味以上本業未満。終業後と休日の活動でした。
変化があったのは、間借りでカレー屋を開いたとき。

「行きつけのたこ焼き屋さんで、『そんなにカレーが好きなら、うちの店でカレー屋をやってみたら?』とお声がけいただき、間借りでカレーの販売をさせてもらったんです。
当時は会社員だったため、月1回程度の出店でした。出店してからはカレー研究にもさらに精を出し、国内では飽き足らず、インドまでカレー研究の旅に出かけましたね」
 
すると、「珍しい素材の組み合わせの創作カレーが食べられるらしい。しかも素材に合わせてレシピを開発するから、毎回違うカレーになるそうだ」と、SNSでカレー好きのインフルエンサーたちから注目されるようになり、お店に行列ができるように。
さらに、イベント出展やコラボレーションの話が舞い込んでくるようになります。

こうしてカレーを仕事にできるという手ごたえをつかみ、さらに人事とWEBディレクターで一定の収入が得られる仕事も決まり、生活の見通しが立ったタイミングで、三足のわらじを履く形で独立。その後もSNSでの発信は継続。
おいしさはもちろん、珍しい食材の組み合わせで、見た目の美しさにもこだわったカレーは個性的で、SNSとの相性もバツグンでした。

「フェンネルとアーモンドのフィッシュカレー」「島らっきょキーマ」といったオリジナルカレーを日々アップするにつれ、ライターやメディアにも注目されるようになっていきました。次第に、カレーの仕事は順調に軌道に乗り、 “流しのカレー屋”として注目を浴びるように。
さらに、テレビ出演の話や大きなイベントの話も舞い込んでくるようになると、カレーの仕事の比重が大きくなっていきました。

「順調に仕事が増えていたこともあり、もっと広いキッチンでカレーを作ったり、重要な宣伝ツールであるSNS用に、より映える写真を撮りたいと考え、拠点となるお店を持つことを決意しました」

経済的なリスクをとってお店を持つことにした阿部さん。ここから阿部さんの仕事のスタイルや経済事情は急スピードで変化をしていくことになります。

会社員時代の仕事を続けていたから、リスクをとってやりたいことに挑戦できた

お店のオープン時にも会社員時代の経験が生きたと語る阿部さん
店舗を持つと、レストラン営業ができるだけでなく、仕込み作業やレシピの開発も理想的な環境でできるようになります。可能性が広がる反面、初期費用や家賃といったコストが大きくかかる現実もありました。

「手持ちの資金だけでは無理だなと思って、工事費や備品の購入費として金融機関から500万円借りました。この時、役に立ったのが会社員時代の経験です。
保育園の事業企画に携わっていた時期には、新規事業立ち上げの目的や事業化プロセスなどを伝える事業計画書を膨大に作成しており、金融機関に提出する資料の書き方は身につけていました。

また、スタートアップの会社では、自分の仕事により会社にいくらの貢献ができ、かかった経費がどれくらいなのかといった、基本的な経営の考え方、キャッシュフローの回し方を経営者の近くで学べたので、現実的な事業計画と返済計画を立てることができ、資金の融資を得ることができました。
毎月8〜9万円の返済と同時に家賃を支払えるかは不安でしたが、カレー以外の定期的な収入(人事とWEBディレクター)がある限り、マイナスにはならないよう試算して決断しました。
安定した仕事を確保したうえでフリーランスになれれば、お金の面でも気持ちの面でも安定する分、ここぞという時にはリスクも取りやすくなります」

こうして、拠点となる「kitchen and CURRY」を開設したのが2018年の夏。

会社員時代からSNSで発信していたことにより、すでに約10,000人のフォロワーが投稿をチェックしている状態。イベントや間借り出店時からファンになっていた人にとっては、待ち望んだお店のオープンでした。
週2回程度、お店を営業してカレーを出すようになると、一躍人気カレー店となります。

そんな順風満帆に見える阿部さんの歩み。一方で、自営業としてつきまとうお金の問題ではやはり苦労もあるようで…?後半に続きます。

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