会社員時代、受け身な働き方を転換。一般職ながら売上にも貢献

会社員時代、受け身な働き方を転換。一般職ながら売上にも貢献

  • 受け身の働き方を変えたことから気持ちに変化が起きた

静岡生まれの静岡育ち。地元の短大を卒業後、ハウスメーカーに就職した山城さんは、建売住宅の販売部門で営業事務の仕事に携わるようになりました。

「周囲の人には恵まれたものの、仕事に関しては主体性がなく、上司の指示に従うだけでした。でも、一般職の私に対して、同期はみんな総合職。入社して数年もたつと同期は責任ある仕事を任され、仕事のやりがいを語るようになったんです。みんな仕事を頑張っているのに、私は何をしているんだろうと思うようになりました」

一般職の私にも、できることがあるかもしれない。山城さんはそれまでの気持ちを改め、自分にできることに一つずつ取り組んでいきました。まず、競合他社のチラシやWeb広告で、住宅物件の見せ方を研究。それまで営業担当がスマホで簡単に撮っていた物件写真を改善しようと、上司に交渉して経費で一眼レフを購入してもらい、自身で撮影していったのです。

「チラシやWeb広告の掲載内容を改善していったら、売上が向上したんです。自分にもできることがあるんだと実感できて、すごくうれしかったですね」

プライベートでは家庭菜園とアイドルに夢中になり、季節の野菜を育てたり、好きなアイドルの動画を鑑賞したり、また、さまざまなブログをチェックする生活。そんな山城さんに大きな転機が訪れたのは、入社7年後、28歳の時でした。

ブログを開設し、少しずつ収益が。時間や場所にとらわれない働き方に憧れる

地元にいた当時は“フリーランス”という言葉すら知らなかった

  • 地元にいた当時は“フリーランス”という言葉すら知らなかった

「大好きなブロガーさんが東京で講演を開催することを知り、アイドルに会いに行くような気持ちで参加しました。講演のテーマは“女性の働き方”で、『私の仕事はブログ』と話していたのが印象的でした」

ブログを書くことが仕事になるんだ! 山城さんにとって、それはとても衝撃的でした。帰路に就きながら「私もブログをはじめてみよう」と決意。やり方をインターネットで調べ、見よう見まねでブログを開設したのです。

「旅行や暮らし、美容など、自分の好きなことをブログに書いて、多くの人に読んでもらい、それでお金が入ってくる。『こういう働き方ができたらいいな』と思いましたが、当時の私は“フリーランス”という言葉も知らなかったし、“会社を辞めて独立できるのは、特別な才能を持っている人や、何年も修行を積んできた人だけ”という認識。とても自分が独立できるとは思ってもいませんでした」

それでも、ブログの収益が少しずつ入るようになり、「時間や場所にとらわれない働き方がしたい」という思いが日に日に募っていきました。今の会社では、大好きな家庭菜園も早朝か仕事終わりの深夜にしかできない。旅行に行きたくても、休みが取れないからいけない。「なぜ、会社に行かないといけないの?」――山城さんの頭の中は、自由に仕事をしたいという気持ちでいっぱいになりました。

決意の日は、ある日突然やってきたといいます。

「朝礼で、社員が順番で1分間スピーチをするという取り組みが会社で始まって、人前で話すのが苦手な私は、それが心の底から苦痛だったんです…。ある朝、本当に突然ですが、畑仕事をしながら『会社を辞めよう』と思い立ちました」

退職金を資金に独立。フリーランスのライターとしてスタートを切る

自分の気持ちに突き動かされ、見切り発車でフリーランスに

  • 自分の気持ちに突き動かされ、見切り発車でフリーランスに

「独立に向けた準備はほとんどしていませんでした。趣味にお金を使っていたので、貯金もほとんどありません。頼みの綱は退職金でした」

当時、ブログの収入はお小遣い程度しかありませんでしたが、「何とかなるだろう」と思っていました。不安よりも「フリーランスになるんだ」というワクワク感のほうがはるかに大きかったそうです。

2017年春、山城さんは退職金を資金に、フリーライターとして新たなスタートを切ります。同時に、実家を出て一人暮らしを開始。見切り発車ではあったものの、山城さんの心は希望に満ちあふれていました。

「はじめはブログの仕事を中心に。ブログを読んでくださった企業から、PR記事の依頼が入り、それを皮切りに問い合わせが少しずつ増えてきました。独立して半年たった頃、Webメディアから声がかかり、寄稿も行うようになりました」

順調に仕事が増えていったものの、一方では、フリーランス特有の悩みもありました。会社員時代のように、決められた就業時間があるわけではありません。仕事をする時間も、休憩する時間も、すべて自分で決められるのがフリーランスの良いところのはず。

「独立1年目は時間管理ができなくて、自分はなんてダメな人間なんだと悩んでばかり。こんな自分を変えたくて早起きしてみたものの、結局眠くなって昼寝をしてしまい、夜更かししてしまうこともよくありました(笑)。自由にあこがれてフリーランスになったのに、自由な生活って意外と難しいんだと実感しました」

独立時に掲げた3つの目標。すべてをかなえた時、心がからっぽになった

2018年春、独立して1年がたった頃、山城さんはそれまで住んでいた静岡を離れ、上京。シェアハウスで暮らし始めます。仕事は順調に増えていたものの、上京当時はまだ収入が安定せず、資金繰りに苦労していました。そこで、「ブログでシェアハウスのことを紹介します」とシェアハウスのオーナーに交渉して新たな仕事を引き出すなど、収入アップに励んでいきました。

「フリーランスになった時、自分の中で目標を3つ掲げていました。一つ目の目標は、会社員時代よりもたくさん稼げるようになること。2つ目は、前職の会社から仕事のオファーをいただくこと。そして3つ目は、大好きなアイドルと仕事をすること。上京後、ありがたいことに、これらの目標をすべてかなえることができました」

独立2年目にして年収が会社員時代を上回り、前職の会社から声がかかってSNSのコンサルティングを行うことに。そして、大好きなアイドルを取材する機会まで得たのです。

目標がすべてかなったのだから、さぞかしうれしかったでしょう。そう山城さんにたずねると、「もちろんうれしかったけれど、目標がなくなったせいか、心がからっぽになってしまったんです」

燃え尽きてしまった山城さんは、いろいろなことを自問自答していきます。ライターの仕事からスタートしたけれど、本当にこの道でいいのかな。文章を書くことよりも、好きなことがあるんじゃないかな――。

頭の中をさまざまな思いが浮かんでは消えていきます。そんな山城さんに、ある人が手を差し伸べてくれました。

何度も自問自答した末に見えてきた“理想の働き方”

本を読んだり、ノートに書きだしたりしてアイデアを整理しているそう

  • 本を読んだり、ノートに書きだしたりしてアイデアを整理しているそう

「当時フリーランスとして一緒にお仕事をしていた今の会社の代表に、これからの働き方や、自分のやりたいことなど何度も話を聞いてもらいました。そうして、自分自身の未来について考えているうちに、挑戦したいことが明確になってきました」

振り返ってみると会社員時代、チラシやWeb広告を改善する方法を考えていた時、すごく楽しかったな。私が本当に好きなのは、文章を書くことではなく、商品やサービスをより良くしていく方法を考えることなのかもしれないな――。

2019年秋、山城さんは株式会社ブライトログに正社員として参加。現在はフリーランスの仕事と並行して、週4日程度勤務し、企業のブランディングやプロモーションに取り組んでいます。

「今の会社は、日本の古き良き文化を、デジタルとアナログの両軸で未来に繋げることをビジョンに掲げている会社。私も含めてメンバーは4人しかいません。けれど、全員が個性的で勉強家でとても愛のある人達。そんな尊敬する人に囲まれながら働くのは、すごく刺激的ですね」

お金を管理することの大切さを思い知った“ある出来事”

「見切り発車でフリーランスになった」と話してくれたことからもわかるように、山城さんは決してお金の管理が得意ではないそう。それでも、「独立する」と決めた時から、自分なりにお金の管理について考え、取り組んできました。

独立するタイミングで先輩ブロガーから紹介してもらった税理士と契約し、領収書の管理や月の売上のまとめ方など、一つひとつ丁寧に教えてもらいました。同時に、売上の見込みも毎月立てるようになりました。

「独立後、月にブログを何本書けるか推測し、そこから売上の見込みを立てていきました。ただ、書いた分だけ稼げるわけではないので、あまり意味のない見込みでしたね(笑)」

そんな山城さんでしたが、上京して間もないころ、ある出来事が起こり、考えを改めたといいます。

「突然、顔の片側がしびれてしまったんです。病院に行っても原因不明。整体院で診てもらって、環境の変化に対する反応が原因であることがわかりました」

長い人生、いつ何が起こるかわからない。この先もずっと元気でいられるとは限らないことを思い知りました。

結婚も、お金について考える良いきっかけとなりました。「2019年秋に結婚したのですが、家庭を持ったことで “夫に何かあった時、私が支えていくんだ”という責任感が芽生えました」

以来、フリーランスの仕事で得た収入は預金するように。この習慣は、今も続いています。

ハウスメーカーを退職して3年がたった今、山城さんの収入は安定し、会社員時代のそれを大きく上回るようになりました。

<山城さんの年収の推移>

山城さんの年収の推移

決断を他人に委ねず、自分で考えて一歩踏み出そう

正しい生き方を決めつけず、柔軟性を大事にしてほしいと山城さん

  • 正しい生き方を決めつけず、柔軟性を大事にしてほしいと山城さん

最後に、かつての山城さんと同じように、自分らしい働き方を探したいと思っている読者に向けて、メッセージをいただきました。

「短大を卒業して就職して、数年たったら結婚して、子育てしながら働いて――。かつての私は、そんな人生を思い描いていました。でも、仕事もプライベートも、その人なりのタイミングがあると思うんです。何歳になったら結婚して、子供を産んでキャリアはこうで…と決めつけてしまうと、心が苦しくなってしまうかもしれません。実際に私がそうでした。

だから、もしも挑戦したいことがあるのなら、勇気をだして進んでみるのもひとつの選択肢だと思います。でも、大切にしてほしいのは、自分で決めること。『誰かが言ったから』と、決断を他人に委ねてしまうと、うまくいかなくなったときに絶対後悔するし、それを他人のせいにしたくないじゃないですか。これは私自身にずっと言い聞かせていることだったりもします。年齢や周りの人に流されずに自分の人生はしっかり自分で選択していきたいですね」

そんな山城さんに「今の生活を点数化するとしたら?」と聞いたところ「モチベーション的には100点ですが、現実は3点ですね」と厳しい答えが返ってきました。

「特に仕事に関しては、自分にできることがまだまだ少なくて、理想とは程遠い状況です。もっと勉強して経験も積んで、尊敬する方々に早く近づけるよう頑張っていきたいですね」

フリーランスの仕事が軌道に乗るまで、お金の苦労はあったし、やりたいことが分からなくなって悩んだ時期もあるけれど、それでも楽しいことのほうがはるかに多かったと振り返る山城さん。人との出会いや、自分の気持ちと向き合うことを大切にし、その時の自分にとって最善の方法を選択してきたからこそ、フリーランスになった後、また会社員になるという選択肢も自然に湧き出てきたのかもしません。そんな柔軟性が、キラキラと輝く人生を築いていくために、何よりも必要なのかもしれませんね。

<山城さんのモチベーショングラフ>

山城さんのモチベーショングラフ

  • 2020年10月現在の情報です。今後、変更されることもあるのでご留意ください。
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