理想のワークスタイル

2021.2.10

#8 副業を始めて1年で、本業と同等の収入に。ハンドメイドを軸に多角的に事業展開する本田みえさんの「自らの力で人生を切り拓く力」

副業を始めて1年で、本業と同等の収入に。ハンドメイドを軸に多角的に事業展開する本田みえさんの「自らの力で人生を切り拓く力」

働き方が変わりつつある昨今、自分らしい働き方を既に実践している人に、仕事、生活、お金についてリアルな話を聞く連載企画「#理想のワークスタイルの見つけ方」。第7回は、ハンドメイド製品の販売やコーチングなどのサービスを手掛ける本田みえさんにインタビュー。メーカーに就職後、商品企画など花形の部署で活躍してきた本田さんは、やがて「会社員生活」に疑問を抱き、理想の働き方を追い求めるようになります。何度も試行錯誤を重ねた本田さんは、会社という組織に縛られず、自由に自分らしく働きたいと願うように。本田さんが見つけた「理想のワークスタイル」をご紹介します。

<プロフィール>
本田みえさん

1978年生まれ。大手グローバルメーカーに就職し、国内外のマーケティングや商品企画の仕事に携わる一方、コーチングを受けたり、ビジネススクールに参加したりしながら、将来の方向性について模索。2017年、会社勤めを続けながら、副業として母親とハンドメイド製品の販売をスタート。順調に売上を伸ばし、18年に独立。現在は、ハンドメイド製品の販売に加えて、ハンドメイド作家・講師向けのコーチングや企業へのマーケティングサポート、また、ファッションレンタルサービス会社でスタイリストとしても活躍中。
□コーチングを受けたことをきっかけに独立を意識 □会社員時代のマーケティングスキルを活かし、ハンドメイド販売をスタート □マーケティングは自分、製作は母と分業することで成功 □副業を始めて1年で、会社員の年収と同等の収入を実現 □独立後は事業を多角化することで安定化 □20代前半からスタートした資産運用が独立の礎に

マーケティングや商品企画の仕事に携わりながら、自己研鑽を重ねた会社員時代

会社員としての商品企画が天職だと、一時期は思っていた
会社員としての商品企画が天職だと、一時期は思っていた
ファッション好きや、洋服や小物を自作している方なら、「ハンドメイドで生計を立てられないかな」と思ったことが一度はあるのではないでしょうか。

本田みえさんは、大手グローバルメーカーに勤めながら理想の働き方を模索し、入社19年目に副業でハンドメイド製品の販売を開始。その翌年に独立を果たしています。そんな本田さんが理想のワークスタイルを獲得するまでの道のりをご紹介しましょう。

「学生時代、英語を専攻した私は、『海外に関わる仕事に就きたい』と思い、大手グローバルメーカーに就職しました。配属先の部署でマーケティングの仕事に携わったのですが、アシスタント的な仕事が多く、次第に焦りを感じるようになりました」

そこで、本田さんは女性向けのビジネス塾やイメージコンサルティングの講座に通うようになります。

「社外に目を向けたことで、さまざまな出会いがありました。会社に属さず、個人で仕事をしている女性もいて、『私も独立して仕事ができたら』と憧れたのをよく覚えています」

その後、本田さんは商品企画の部署に異動。サポート的な仕事から一転して、自らプロジェクトを動かすようになりました。

「リサーチした内容をもとに商品企画案をまとめ、開発職などさまざまな社員と意見をすり合わせながら企画内容をブラッシュアップしていき、商品をリリースする。これが、当時の私のミッションでした。初めての仕事でリーダー的な役割も求められたため、最初は戸惑いもありました」

けれど本田さんは、すぐに商品企画の仕事にのめりこむようになります。

「アイデアを考えるのがとにかく楽しかったんです。商品企画は私の天職かもしれないと思いました」

こうして、商品企画の部署で経験を積んでいった本田さんは、あるイベントで、運命の出会いを果たします。

私には夢が一つもない!? 大きな衝撃を受けた本田さんが行ったこと

仕事は楽しいのに夢が一つもないことに衝撃
仕事は楽しいのに夢が一つもないことに衝撃
「仕事の気分転換に何気なく参加したワイン会で、個人事業主の方と出会ったんです。いろいろと話を聞いてみると、自由に働きながら、会社員の私の何倍も稼いでいました。会社勤めを当たり前と思っていた私は、このとき初めて、自分の働き方に疑問を抱くようになりました」

本田さんは「会社の外でも自由に生きていける力を身につけたい」と強く思うようになり、個人事業主の方に紹介してもらい、「コーチング」を受けました。

コーチングとは、さまざまなセッションで目標達成に必要な知識やスキルを可視化し、目標達成を導いていく指導方法です。本田さんは体験セッションで「夢を10個書く」というテーマが与えられ、一つも書けないことに気づいて愕然としました。

「当時の私は30代後半で、仕事にやりがいを感じている一方、『このままここで会社勤めを続けていいのかな』という大きな不安がありました。なのに、夢が一つも思いつかなくて…。会社のために働いているだけで、自分のためではないんだ。自分の夢はないんだと気づいて、それがすごく衝撃でした」

夢がないのなら、できそうなことから考えていこう。そんな気持ちから、いろいろな人に会いに行ったそうです。

「本当にたくさんの方にお会いしました。2年くらいテーマが決まらなくて悩み続けましたが、ある方から『稼ぐことよりも、まずは好きなことをやってみたら』とアドバイスをいただいたことで、方向性が定まりました。私はファッションが好きで、仕事で携わっている商品企画も大好き。だから、ファッションの商品企画をやればいいんだ! と一瞬思ったんです」

しかし、すぐに本田さんは思い直します。

「とはいえ、30代後半の自分がファッション関連の商品企画に転職するのは、非現実的だと思いました。でも、大好きなファッションに関連した仕事をしたいという思いが諦められなくて、『ハンドメイド製品の販売を副業にするのはどうだろう』と思い立ちました。私の母はアパレル系の仕事をしています。自宅で仕事をしていた時期もあって、私は母が洋服を縫っている姿を見て育ちました。企画を私、製作を母、と二人で分業することでうまくいくのではないかと」

この「ハンドメイド製品の販売」が、本田さんが独立するきっかけとなりました。

母と二人でハンドメイド製品の販売をスタート。翌年には、会社員の年収と同等の収入を達成!

商品撮影用のカメラと、イメージコンサルティングの仕事で使用しているファブリック
商品撮影用のカメラと、イメージコンサルティングの仕事で使用しているファブリック
お母さまに相談し、夢に向かって踏み出した本田さん。アイデアを考えるのは自分、製作担当はお母さま。平日はお互いに仕事があるので、副業は週末だけ。そう決めてサンプルを一つ製作し、ハンドメイドマーケットアプリに出品したところ、その日のうちに売れたのです!

「『本当に売れた! 』という驚きで胸がいっぱいになりました。でも、その後の売れ行きはぽつりぽつりといった感じ。そこで、ターゲットを絞り、商品の写真を撮り直すなど、売れるための工夫を凝らしていきました。商品企画として、どうやったらものが売れるかを考えてきた知識をフルに生かして、商品企画、ブランディングを行った結果、徐々に売上が伸びていき、1年後には会社員の年収とほぼ同額の収入を副業で得るようになりました」

本田さんの中で、独立がどんどん現実的なものになっていきます。

「会社員と同等の収入を得られるのなら、このまま独立してもいいかもしれない。年齢的にも40歳間近で、『この時期が私のキャリアのターニングポイントになる』という思いもありました。そこで、自分がありたい姿を今一度考えてみたんです」

組織や会社に依存せず、自分の力でやりたいことを仕事にしているのが、自分がありたい姿だ――そう気づいた本田さんは、ハンドメイド製品の販売を本業にしていくために本格的に動き出します。

独立して活躍している方にリサーチして、経営方針を固める

起業家向け外見戦略セミナーの様子
起業家向け外見戦略セミナーの様子
独立を目指すことにした本田さんはリサーチを開始。会社を辞めて独立している方に会いに行き、話を聞いていきました。

「いろいろな方に話を聞いてわかったのは、どの方も複数の事業を行っていること。リスクを分散する意味でも、一つの事業に絞らない方が良いと思いました」

ハンドメイド製品の販売以外に、何ができるだろう。本田さんはこれまでの経験を生かせる事業として、「ハンドメイド製品が売れずに悩んでいる方に向けたコーチング」と、「企業向けのマーケティングサービス」の2つを展開していくことにしました。

「20年勤めてきた会社を辞めるのですから、もちろん不安もありました。でも、ハンドメイド製品の販売はすでに軌道に乗っていたし、もしもうまくいかなかったら、また会社員に戻ろうと思い、20年勤めた会社を退職し、独立の一歩を踏み出しました」

退職した直後にブログを始め、ハンドメイド製品の販売で苦労している方に向けて情報を発信していきました。1カ月ほどすると問い合わせが入り、徐々に依頼が増えていきました。現在はブログに加え、Twitterやインスタグラムでも情報を発信しています。

マーケティングは代理店に登録し、依頼のあった企業に対してサービスを提供。そして、ハンドメイド製品の販売は引き続き、お母さまの協力を得ながら無理のない範囲で広げていきました。

独立して2年が経った今、本田さんは「やりたいことしかやっていないし、理想の働き方ができているせいか、ストレスを全く感じないんです」と、最高の笑顔を見せてくれました。

独立がきっかけで気づいた「資金を準備することの大切さ」

特にオフィスは構えていない。カフェで仕事することも多い
特にオフィスは構えていない。カフェで仕事することも多い
本田さんは、資金面に関しても十分に準備をして独立に臨みました。独立すると決めたときから無駄遣いを控え、貯蓄にいそしんだのです。

加えて、20代のころから資産運用をしていたこともあり、独立にあたって十分な資金がありました。

「投資をしている職場の先輩の影響を受けて、投資信託や日本株、FXなどで運用をしてきました。会社員時代は多い時で年収の3割ぐらいを投資資金に充てていました」

当初は自己流でしたが、FPをしている知人にもらったアドバイスをもとに投資の方針を定めたことで、安定的に利益を得られるようになったそうです。

「独立にあたって、収入が減ることに備え、一度現金化しました。でも、現金で持っているのはもったいないので、近い将来、また投資に充てたいですね」と資産運用への意欲を見せてくれました。

「会社員は基本給があり、毎月必ず給料をもらうことができます。でも個人で仕事をする場合は、毎月入るお金に凸凹があるのが普通です。一定の資産があると、収入が少ない月も不安なく仕事ができます。独立して、生活のベースとなる資産を持つことの大切さを実感しています」

また、本田さんは新しいことに挑戦するという意味でも、資産運用の重要性を語ってくれました。

「新しい事業を始めようと思ったときや、既存の事業を拡大したいと思ったときも、資産があるからこそチャレンジできます。独立を考えている方にはぜひ、早い時期に資産運用を始めてほしいですね」

会社員時代は自由に使えるお金が年間で300万円ぐらいありましたが、いまは200万円ほど。でも、独立したことで有意義にお金を使えるようになったそうです。

<本田さんの年収推移>
本田さんの年収推移の図
「会社員時代はストレス発散で浪費することが多かったですね。でもお客さまから製品やサービスの対価としてお金をいただくようになったことで、私の中でお金の価値が上がったように思います。今は、自己投資に使ったり、応援したいと思う人やサービスに投資したりなど、お金を使う意義を深く考えて使うようになりました」

夢は大きく、行動はシビアに。独立を成功させるために必要なのはバランス

イメージコンサルティングの事業も拡大していきたいそう
イメージコンサルティングの事業も拡大していきたいそう
最後に、「今のご自身に点数をつけるとしたら? 」と問いかけてみました。

「自分で自由に時間を管理し、理想の働き方が実現できているという点では満点ですが、やりたいことがまだ残っているので80点ですね。今後は、ハンドメイド製品の販売で積極的に海外展開していきたいし、新しく立ち上げたイメージコンサルタントの仕事も軌道に乗せていきたいと思っています」

<現在の売上比率>
本田さんの現在の収入の割合のグラフ
東京で生活を送っている本田さんは、「ライフスタイルも変わっていくかもしれません」と語ります。「日本だけでなく海外も含めて、今よりも自由に移動できるようなライフスタイルにできたらいいですね」

自らの力で理想のワークスタイルを獲得した本田さん。かつての本田さんと同じように独立を考えている方に向けて、力強いメッセージを贈ってくれました。

「すぐに大きなチャレンジをするよりも、今の環境を大きく変えない範囲で独立につながることにチャレンジした方がうまくいくと思います。最初は小さな一歩でも、踏み出してみると、いろいろなことが見えてきます。そこで感じたこと、学んだことを生かして、大きなチャレンジにつなげてみてください。理想は大きく描き、実行に関しては資金繰りも含めてシビアに見極めていく『バランス』が大事ですよ」

本田さんが歩んできた道のりから見えてくるのは、常に自分で考え、試行錯誤しながらも前に進んできた行動力です。自分で考え、調べ、行動し、そしてあきらめずに努力を続ける。そんな芯の強さと、高い戦略力が、本田さんの成功の秘訣かもしれませんね。

<本田さんのモチベーショングラフ>
本田さんのモチベーショングラフ

※2021年2月現在の情報です。今後、変更されることもあるのでご留意ください。

シリーズの記事一覧を見る >

本サイトの掲載情報は、各記事の掲載時点で当行が信頼できると判断した情報源をもとに作成したものですが、その内容および情報の正確性、完全性または適時性について、当行は保証を行っておりません。