HOME > 定年後のリア充診断 > 定年後、住宅を思いがけず負債にしてしまうのはどんな人?

現役時代から備えたい 
定年後のリア充診断

2019.8.28

12

定年後、住宅を思いがけず負債にしてしまうのはどんな人?

定年後「住宅を負債にしない対策」について考える中年夫婦

「人生100年時代」が到来すると言われる今、定年後に充実した時間を過ごすには、豊かな生活を送るためのお金、そして家族や社会と上手に向き合うための心がけが必要です。ファイナンシャルプランナー井戸美枝さんによる定年後のリア充診断、第12回目のテーマは「資産であるはずの住宅を負債にしない対策」について。現役時代から心がけておきたいヒントとともにご紹介します。

あなたの
「住宅の負債指数」をチェック!

 

 

資産であるはずの住宅が、負債化するのはどういう場合?

「マイホームは資産である」。
一般的にはそのような認識があると思います。
では、親の持ち家を相続する場合はどうでしょう?
もしくは、自分の持ち家を子が相続する場合は?

もちろんローンを完済した住宅は、純資産です。相続して子がそこに住めば、大きな価値を得られるでしょう。
また、好立地や好条件の住宅であれば、多少の手間がかかっても、売却や賃貸に出して活用することも可能です。

一方、相続する者同士の話し合いが思うように進まない、売却しようにも買い手がつかないなどの要因で、せっかくの住宅を活用せずに放置している、という話も多くあります。

2018年、全国の住宅に占める空き家率は、13.6%と過去最高でした。これは、相続された住宅が放置されていることも一因です。

そのような住宅は、やがて負債になりかねません。

住宅は、ただ所有するだけでも、さまざまな経費がかかります。
固定資産税、自治会があればその会費、マンションなら管理費や修繕積立金、戸建てなら庭の樹木の剪定費や修繕費など。

これらの経費が、仮に毎年10万円かかるとします。
居住するための経費であれば安く感じるかもしれませんが、自分が住まない住宅を管理・所有する場合だとどうでしょう。
利用しない不動産にまとまったお金を払うのは、難しいと感じる人も多いのではないでしょうか。

親や自分の持ち家は、長年住み慣れて思い出も詰まっており、家族にとってはお金には代えられない価値を持つ場合があります。
しかし、親や自分が亡くなった後、誰も住む予定のない住宅(利用しない不動産)を持ち続けることは、いたずらに費用を発生させてしまうのです。

※出典:「平成30年住宅・土地統計調査」より

持ち家を負債にしないためにできることは?

このように、住宅が負債となる背景の1つに、ひとつ屋根の下に暮らす「家族」の変化があります。

私たちは結婚することで「夫婦」になり、子ができれば家族が増えます。
子が独立すれば、生活は夫婦二人に戻り、もし配偶者が亡くなれば、一人になります。

数十年前は、子が社会人になったり結婚をしたりしても、親と同居することが多かったでしょう。しかし現在では、仕事や学業などに応じて、子が親元を離れて別々に住むことも珍しくありません。そのまま、親の住む家には戻らないケースが増えています。

親の住宅に子が住まない場合、前述したように、その扱い方によっては、大きな負債にもなり得ます。
資産であるはずの住宅を負債化しないためには、このような長期視点での環境変化などに、上手に対応する必要があります。

それでは、親の立場から、子にとって住宅を負債にしないためには、どうすればよいのでしょう。

相続を考えるなら、不動産を、実物資産ではなく預貯金のような金融資産に代えておくことも一つの手です。
相続時の不動産の値下がりに対する心配や、手続きの手間が軽減されます。分配しやすいので、兄弟姉妹間でのもめ事も少なくなるかもしれません。

そして、「終の住処」を考えるときには、持ち家から、賃貸住宅や高齢者向け施設に住み替えることも、1つの選択肢にしてみましょう。

老後に夫婦二人になることが想定されるなら、買い物や医療機関などに便利な場所に住み替えるのも良いでしょう。
最終的に独居となることも想定するなら、医療や介護を受けやすい、都市中心部の賃貸住宅が理想的だと私は思います。

賃貸の更新や家賃値上げなど民間賃貸に不安があれば、公団・公社などの公的な賃貸物件を利用することで先々の賃貸料金の見通しが立ち、多少の安心が得られると思います。

資産であるはずの住宅を、負債にしないためには、今、ご自分が親の立場である人も、子の立場である人も、これら様々な選択肢をまずは認識しておくことが大事です。

この先の住宅について、家族で話し合っておくこと。

将来のことは、予測がつかないことばかりです。子の就職や結婚がどうなるか、自分たち夫婦がどのくらい長生きして、どんな暮らしをしていくのか。
想像はしていても、すべてが予定通りに進むわけでもありません。

それでも大切なのは、元気なうちに、ある程度の予想をつけて、持ち家をどう扱うかを家族で話し合い、互いの意思を確認しておくことです。
持ち家を売却したり、そこから転居することは、時間も労力もかかる大変な作業ですが、その心づもりを持っておくことも大切です。

また、時とともに親と子の状況や考え方は変わるものです。1度話して終わりということではなく、お盆や正月など、顔を合わせる機会に話しておくと良いでしょう。
今回ご紹介した視点を持っておくことで、より柔軟に話し合いを進めることができるのではないでしょうか。

※2019年8月現在の情報です。今後、変更されることもありますのでご留意ください。

井戸 美枝(いど みえ)

井戸 美枝(いど みえ)

CFP®、社会保険労務士。社会保障審議会企業年金部会委員。経済エッセイストとして活動。「難しいことでもわかりやすく」をモットーに、数々の雑誌や新聞の連載記事の執筆をはじめ、講演、テレビ、ラジオ出演などを通じ、生活に身近な経済問題、年金・社会保障問題を紹介。近著に『定年男子 定年女子』共著(日経BP社)、『100歳までお金に苦労しない定年夫婦になる』(集英社)、『届け出だけでもらえるお金』(プレジデント社)など。