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FPが聞いた!お金のしくじり失敗談

2019.10.16

#2 「iDeCo」と「つみたてNISA」が家計を圧迫!? 投資をはじめてもお金が貯まらない!/37歳&36歳・会社員夫婦

iDeCoとつみたてNISAの不安に押しつぶされそうになる夫婦
イラストレーション:かわぐちまさみ

ファイナンシャルプランナーのもとには、日々さまざまなお金にまつわる相談が寄せられます。

この連載では、読者の皆さんに学びのある「しくじり(失敗談)」を、赤裸々にお届け。横山光昭さんの解説で、お金と上手に付き合うヒントを学びます。

第2回目の相談者は、共働きのご夫婦。会社員の青木祐也さん(仮名・37歳)と妻の美恵子さん(仮名・36歳)です。国がすすめる投資制度をフルに使ってみたら、家計にゆとりがなくなってしまったというお話です。

相談者:青木祐也さん(仮名)/妻・美恵子さん(仮名)

職業:会社員/会社員

年齢:37歳/36

世帯年収:約820万円(約520万円/約300万円)

お得な制度だから、やらなきゃ損?

「家も建てたいし、6歳の子どもの教育費もいるから、お金を貯めたい」とご相談に来た青木さん夫婦。預金も大切だと思っているようですが、以前から雑誌などでも紹介されている「つみたてNISA」や「iDeCo」などの積立投資が気になってきたそうです。預貯金の低い金利に比べ、3%、5%といった運用益が期待できるところに魅力を感じていました。

そんな時、会社の同僚が「年金だけじゃ暮らせないというし、iDeCoは得だからやったほうがいいよね」と話しているのを聞き、ますます関心が高くなり、iDeCo口座を開設したそうです。
「どうせやるなら」とそれぞれが限度額いっぱいの23,000円、つまり夫婦で46,000円の掛け金で運用を始めました。

始めてすぐに良い結果が出たわけではないようですが、「投資は長期が良い」と聞き、気長に構えていた青木さん夫婦。少しでも積立金額を多くした方がよいのではないかと考え、つみたてNISAも始めることにしたそうです。

旦那さんは、つみたてNISAの年間上限額の40万円を積み立てることを目標に、毎月33000円を積み立て始めましたが、だんだんと生活に使えるお金が減り、投資は大変だと感じるようになってきたようです。そのため、奥さんはつみたてNISAへの投資を断念したそうです。

家計を顧みず始めてしまったことで、赤字に!

わずかながら行っていた貯金もできなくなり、毎月の収支は赤字となってしまった青木さん夫婦。貯めるためのお金とはいえ、一家の支出は毎月7万9,000円増。貯めるために赤字を出し、今までの預貯金やボーナスから補てんする、本末転倒な状況になってしまいました…。

旦那さんは、Excelで収支の記録をつけ、「年間での収支がプラスになっていれば、それが貯蓄になる」と考えていました。投資を始める前の年は、約60万円プラスになっており、毎月の家計がギリギリでも、ここから長期投資の資金を出すことができれば問題はないと考えていたのです。しかし、実際はその60万円の一部を旅行や洋服の購入に使っていたようです。

そういった貯蓄の見通しの不十分さに加え、家計管理の甘さにも気が付いておらず、年間でしか家計を見ていないので、毎月赤字なのか、黒字なのか把握できていませんでした。

投資を始めるには、まず「毎月の家計の中から積み立てる金額を無理なく出せるかどうか」を確認することが大切です。もし、難しいようなら支出を見直し、無駄を削減して、積み立てるお金を作り出す必要があります。

青木さん夫婦は、何とか投資を継続したいと考えていたので、まず家計の把握に専念してもらいました。金額の実感をもってもらうため、Excelではなく手書きで支出状況を記録することをアドバイスしました。

そして、「必要な支出」「必ずしも必要ではない支出」の優先順位をつけ、必要でないものを削減していくことで、毎月の全体的な支出を下げていき、積立を続けることができました。

投資を始めるには段取りが大切。「貯める袋」にお金がたまってから

投資を始める時期については、2つの考え方があります。生活を守ることができるだけの貯蓄を作ってから始める場合と、貯蓄をしながらそのなかの一部のお金で投資をするという考え方です。
まず貯蓄を作ってから投資を始める場合、「使う」「貯める」「増やす」の3つの袋で考えます。

1つ目の「使う」は生活するための袋。毎月の給料が入ると増え、生活と共に減っていきます。生活にはイレギュラーな支出もありますから、そういう事態に対応できるよう、毎月の生活費の1.5か月を目安に入れておくようにしましょう。

家計を見直したり節約をしたりして、この「使う」の袋が1.5か月分以上になることが3か月ほど続いたら、次に「貯める」袋に入れていきます。この「貯める」袋はいわば生活防衛資金であり、万が一の失職や病気などによる収入減に備えたものです。最低限、半年分ほどの生活費があれば、次の仕事を見つけたり、体調の回復に専念したりできるでしょう。
教育費や自動車の購入費など、大きな出費が見込まれるお金はどの袋で貯めるのかよく聞かれますが、それは3つの袋と別に貯めておくことがオススメです。

2つの袋が準備できたら、いよいよ最後の「増やす」袋です。ここには、「貯める」の袋に半年分の生活費が貯まり、そこからあふれたお金が入ってきます。これが投資に回してもよいお金なのです。

ここまで準備するには時間が必要です。中にはこの貯蓄が準備できないために投資をあきらめてしまう人もいます。それはもったいないことです。投資には、時間も重要です。時間をかけると、複利の効果で投資した金額以上にお金が増えていきます。
ですから、特に若い人であれば「時間を味方につける」ことで、投資での資産形成が期待できると考えることもできます。貯蓄をしてから始めることにこだわるのではなく、貯蓄と投資を同時に「並走」させる方法です。

具体的には、毎月の貯蓄の金額の一部、例えば毎月3万円を貯蓄に回せるのでしたらその一部の1万円や、5千円を投資に回すという始め方もおすすめです。
投資に興味関心を持ち、始めることはとても大切なことです。しかし、お得だ、節税だというメリットだけしか考えずに始めると、青木さんのように失敗につながる場合があります。

実際に投資を始めてみると、今までよりも相場などに興味がわく人が多いようです。そうすると、お金に対する関心も強くなり、自分のお金の使い方や家計なども気になり始めます。次第に節約をしてみたくなったり、支出に疑問がわいたりし、無駄のない家計づくりをしようとし始めるケースも多いものです。つまり、投資を始めてみると、強い家計づくりができ、より強い投資につなげていけるようになる、という相乗効果もあるのです。
横山 光昭(よこやま みつあき)

家計再生コンサルタント、株式会社マイエフピー代表
横山 光昭(よこやま みつあき)

お金の使い方そのものを改善する独自の家計再生プログラムで、家計の問題の抜本的解決、確実な再生をめざし、個別の相談・指導に高い評価を受けている。これまでの相談件数は23,000件を突破。各種メディアへの執筆・講演も多数。著書は60万部を超える『はじめての人のための3000円投資生活』や『年収200万円からの貯金生活宣言』を代表作とし、著作は110冊、累計330万部となる。 個人のお金の悩みを解決したいと奔走するファイナンシャルプランナー。