お金のしくじり失敗談
2019.11.27
ファイナンシャルプランナーのもとには、日々さまざまなお金にまつわる相談が寄せられます。
この連載では、読者の皆さんに学びのある「しくじり(失敗談)」を、赤裸々にお届け。横山光昭さんの解説で、お金と上手に付き合うヒントを学びます。
第3回目の相談者は、会社員の小塚智也さん(仮名)。投資信託などでコツコツと積み上げるより、「ハイリターンを狙いたい」と個別株式投資をやってみることに。予備知識なしではじめてみたものの、思っていたより利益が出なかったという方のお話です。
小塚さんは結婚5年目。子どもが生まれてから、マイホームの購入資金や子どもの教育資金を貯めておかなくては、と思うことが多くなりました。
ところが、普通預金の金利は0.001%と超低金利※。もっと効率よく貯めるために良い方法はないか、調べるようになったそうです。
※2022年6月現在。
雑誌やインターネットでは「投資信託はリスクが少ない」という情報を多く見かけます。
小塚さんも預貯金よりは利益が出そうだと思い、2年ほど前に投資信託の口座を開設し、積み立てを開始しました。
コツコツ積み立てていましたが、2年経っても思うように増えません。
「もう少し儲けられる方法はないものか」と思い始めた頃、会社の同僚が株を買って、短期間で倍近い金額の利益が出たという話を聞いたそうです。
投資信託は、毎月1万円など無理がない金額を自分で決めて積み立てることができましたが、個別株は100株を1単元として売買されるため、購入するにも有名企業だと1単元数百万円かかることもあります。
しかし、大きな利益を得るには思い切りが必要なのだと考え、個別株の投資も始めてみることにしました。
小塚さんは、どの企業の株を購入するか悩んだ末、証券会社サイトのランキング上位に入っていて、かつ自分が購入できそうな30万円ほどの株を購入。
購入直後は、毎日少しずつ上がっていた株価。多少下がる日があってもまたすぐに上がるため、投資信託よりもお金が増えるように感じ、さらにもう一銘柄の購入を決意します。
結果、株2つで合計100万円ほどの支出になったそうですが「金額が上がった時に売れば、利益になるので問題ない」と前向きに考えていました。
しかし、急に一方の株価が今まで見たことのない価格にまで下がってしまい、2つの株を合わせても、購入金額に満たないほど損をしている状態になってしまいました。
結婚前に貯めたお金と、家計をやりくりして貯めたお金を資金にしているので、マイナスにしたくはありません。
この頃から小塚さんは、常に株価が気になるようになりました。
仕事の合間に、頻繁にスマホで株価をチェックし、仕事に集中できない状態に陥ってしまったそうです。
「儲けたい」と思って投資を始める人は多いでしょう。しかし個別株は、初心者が大きく儲けられるほど簡単なものではありません。
投資で利益を得る確率を高めたいなら、まずは投資信託などで投資の基礎部分、つまり資産運用の中核として長期に渡って安定的に運用する部分を固めることがおすすめです。
投資信託では資産があまり増えないと小塚さんは感じていましたが、「2年」という短い期間では、増え幅が少ないのは当然のことです。投資信託は、10年、15年など長期的に運用することで、複利の効果も受けて、大きく利益を増やすことが可能になるものです。
小塚さんは、個別株で損をしてしまいましたが、この体験があったことで、投資信託の仕組みや特徴を理解したそうです。
2年、3年の短期で結果を出そうとせず、コツコツ積み立てながら投資をする方が、自分には向いていると感じた小塚さん。
個別株など他の投資に興味が湧いたら、少額の資金で挑戦するという方針に変えることで、仕事にも集中できるようになりました。
投資初心者は、まずは比較的ローリスクな投資信託から始めることがおすすめです。ローリターンではありますが、長期的に積み立てながら保有することで、時間を味方につけてリスクを分散し、ゆっくりと増やせる可能性が高い投資方法です。
投資信託の値段のことを、「基準価額」といいます。基準価額は一日に一度、投資信託が運用している金融商品の総額(純資産総額)を、投資家が保有する口数(総口数)で割って算出されます。
個別株のように、その時の需要と供給の関係に影響されて変動するものではありません。
そのため、価格変動をこまめに気にする必要がないという点も、会社員の方などが取り組むには、最適と言えます。
また、投資信託には、大きく分けて以下3つのタイプがあります。
・インデックス型
日経平均株価や東証株価指数(TOPIX)などの株式指標と連動することを目標にしているタイプ。
・アクティブ型
日経平均株価や東証株価指数(TOPIX)などの株式指標を上回ることを目標にしているタイプ。
・バランス型
世界中の株式や債券、REIT(不動産投資信託)といった様々な投資先がパッケージされているタイプ。
中でも、「インデックス型」の投資信託は、株式指標と共に動くので、シンプルでわかりやすいというメリットがあります。「アクティブ型」と比べるとコストが安いため、長期に渡る資産運用に向いています。
このような種類の投資信託で、まずは基礎を固めたうえで、個別株など投資にチャレンジする、というバランスが大切です。
もし個別株などをするなら、投資信託の安定運用を9割、残る1割でその他の投資という割合を目安として考えてみましょう。
資産運用の考え方を学び、たとえ少額でも実際にやってみることは、家計やお金のやりくりを見直すきっかけにもなります。
そうして出来た余剰金でさらに投資額を増やし、安定した投資を継続していけば、だんだんと自分に合った資産形成ができるというメリットもあります。
※ 2019年11月現在の情報です。今後、変更されることもありますのでご留意ください。
執筆:横山 光昭
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