お金のしくじり失敗談
2021.2.3
生活のメリハリがなくなる状況下で、ひと儲けしたいという気持ちで購入した投資信託。変動する株価を見ながら一喜一憂することは、ある意味自粛ムードで過ごす日々の刺激になったのかもしれません。
しかし、大切な自分の資産を育てていくという意味では、その刺激は仇になることもあります。私たちはどうしても「不確かなものであればあるほど、その可能性に賭けたくなる」ものです。それ自体は決して悪いことではありません。「投資」とは、将来成長することを見込んでお金をつぎこむという意味でもあります。ただ、山浦さんには2つの落とし穴があったのです。
1.投資方針を決めないまま、勢いで投資してしまった
投資をする際は、一括投資によって短期で利益確定したいのか、積立による長期目線の資産形成をしたいのか、目的を明確にして実行していくことがとても大切です。
振り返ってみれば、山浦さんが投資信託を購入した時期は、結果的には良いタイミングでした。ゆえに、短期間で含み益を体験するという幸運に恵まれましたが、その含み益を失いたくない気持ちが強くなり、その恐怖に勝てずに途中で売却してしまったのです。
短期で利益を出す目的なら、結果的に10%以上儲けられたのだから、ある意味目的を達成できているはずです。ただし、山浦さんはもともと長期目線の資産形成を希望されていました。投資の方針が明確になっていたはずなのに、それを無視して勢いだけで投資したことがしくじりの原因の1つだったのです。
2.「お金の器=リスク許容度」が100万円より小さかった
私たちには、その人の経済状況や経験値などにより、人それぞれ「お金の器=リスク許容度」というものがあります。たとえば、5%の値動きは、100万円の投資なら5万円、1万円の投資なら500円になります。500円の含み損なら耐えられても、5万円の含み損には耐えられないという場合は、100万円の投資額が自分のリスク許容度に合っていないと言えるでしょう。
まとまったお金で一括投資をすれば、含み益や含み損(いま売ったら利益または損失となる状態)が大きくなるわけです。山浦さんの場合、コロナ・ショック時の不安定な状況の中、激しい値動きでも精神的に耐えられるお金の限度額を超えてしまっていたのです。
一括投資をするなら自分のお金の器に合わせて金額を小さくする、もしくは積立感覚で分割購入していくなど、自分のリスク許容度にあった取引をすることが大切。また、100万円分の投資信託を全部売却せずに、一部残しておくという手もあったはずです。
リスクを分散する長期積立投資の基本「長期・分散・積立」
長期投資
短期間の値動きに惑わされず、最低でも1年~数年、理想としては数十年のスパンで資産形成を考えるようにしましょう。
短期間では、投資信託の価格(基準価額)が激しく上下することはよくあることですが、より長期間でみれば、1年毎の年間平均の値動きは、比較的穏やかになる傾向にあります。
分散投資
値動きのパターンが異なる投資対象の資産クラス(どこの国・地域なのか、株式なのか債券なのかなど)を分散しておくことで、資産形成のリスクを軽減することが可能です。
1つの資産に限定せず、複数の資産に分けて投資をすることで、その資産が抱えるリスクを集中的に受けなくてすむようになり、結果として全体のリスクが抑えられるようになります。
積立投資
その投資が必ず成功するという、投資信託のベストな購入タイミングが事前に分かるのであれば、それに越したことはありません。しかしながら、これは運用のプロであっても至難の業です。
まとまったお金で一括投資をした場合、タイミングを見誤ってしまうと含み損状態を耐え忍ぶという苦痛が出てきます。また、自分が買ったときの値段から上がるか下がるか、「結果は後のお楽しみ」という投資法では、ただのギャンブルに。資産形成とは程遠い投資となってしまいます。
このように、基本をふまえたうえで投資の目的を明確にし、自分自身で納得してから投資をするなら、一括投資でも構わないでしょう。ただし、もし本人が長期目線の資産形成をしたかったのであれば、長期投資に適したやり方で計画的に購入していく方法を選ぶべきです。
積立による資産形成は、少額投資非課税制度の「NISA」や「つみたてNISA」で行うことができます。前者は、最長5年間・年間120万円までの投資枠、後者は最長20年間・年間40万円までの投資枠に対して、運用で得た利益に20.315%の税金がかからなくなる制度です。
また、非課税にこだわらない場合や、年間の積立投資金額が120万円を超える場合には、課税口座である「特定口座」で積み立てる方法も。
今後、自分がどういった資産形成をしていきたいのかを決め、それに合った方法を選ぶようにしましょう。自分で判断するのが難しい場合は、ファイナンシャルプランナーや金融機関に相談してみるのも一つの手です。
※2021年2月現在の情報です。今後、変更されることもありますのでご留意ください。
執筆:野原 亮(のはら りょう)
おすすめ記事
本サイトの掲載情報は、各記事の掲載時点で当行が信頼できると判断した情報源をもとに作成したものですが、その内容および情報の正確性、完全性または適時性について、当行は保証を行っておりません。