3つのキーワードで考える、これからのマネーとの付き合い方3つのキーワードで考える、これからのマネーとの付き合い方

2018.8.22
スペシャル対談 松井咲子タレント 岸博幸 経済評論家

【前編】松井咲子×岸博幸「2020年以降は、自分の身(お金)は自分で守る時代!?」

2018年7月27日に開催された、三井住友銀行汐留出張所「SMBC+ Money VIVA@汐留」でのトークセミナーの内容を前編と後編に分けてご紹介します。ゲストは、元AKB48でタレント・ピアニストとして活躍する松井咲子さんと、経済評論家で慶應義塾大学大学院教授の岸博幸さん。「キャッシュレス」「働き方改革」「人生100年時代」という3つのキーワードを軸にこれからのマネーとの付き合い方を考えました。前編は「キャッシュレス」「働き方改革」について。

「キャッシュレス」

フィンテックの進行で、日本でも現金がなくなる?!

まず1つ目のキーワード「キャッシュレス」から話していきたいと思います。松井さんは普段、お金の支払いをどうしていますか?

松井:私は基本的に現金ですかね。でも、コンビニでガムなどを買うときは、電子マネーでピッと支払っちゃいます。

:日本では松井さんのような現金派がまだ多いのですが、海外ではかなりキャッシュレス化が進んでいるんですね。中国などは、道端の露店でもスマホで決済できるほどなんですよ。

松井:そうなんですか!

:日本はどうかというと、だいたい100兆円くらいの現金が世の中に出回っているんですね。国のGDP(国内総生産)が約500兆円なので、およそ20%に当たります。海外はその比率がもっと低くて、例えば、アメリカは8%ほど。それだけ日本はキャッシュレス化が遅れているんです。

松井:かなり差がありますね…。

:一番キャッシュレス化が進んでいるのはスウェーデンで、GDPの1%ほどしか現金が流通していないんですよ。最近は「スウィッシュ」という決済のスマホアプリが普及していて、金額とお店の電話番号などの情報を入れるだけで瞬間的に支払いが済む。レジに並ぶ時間も少ないんですね。その便利さがウケていて、「キャッシュお断り」というお店もあるほどなんです。

松井:現金で支払えないのは困っちゃいます(笑)。ただ、私も駅の売店で買い物をするとき、レジで並んでいる間に電車が来て焦ることもあるので、支払いが早く済むのは嬉しいかも。ちなみに、どうして海外ではキャッシュレス化が進んでいるんですか?

世界的に「フィンテック」が進行しているからですね。フィンテックってご存知ですか?

松井:えっと、聞いたことはあるんですが、詳しいことは……、教えてください!

:簡単にいうと、金融の世界にデジタルが入って金融のあり方が変わることです。たとえば音楽の世界って、20年前はCDで音楽を聴いていたのが、ネットなどのデジタル化が進むことで、ダウンロードやストリーミングで聞くことが増えましたよね。

松井:確かにそうですね。

:要は、音楽業界はデジタルが入ってビジネスモデルが変わったんですよね。例えば、AKB48の握手会もそうですね。

松井:(笑)

:それがいろいろなジャンルで起きていて、一番熱いのが金融。スウィッシュなども一例で、ITでどんどん便利になると、間違いなくキャッシュレス化は日本でも進んでいくはずですよ。

今後進むと考えられているキャッシュレス化ですが、どんなメリット・デメリットがあるのでしょうか。

:メリットはたくさんあります。まず、お店側にとって、現金を扱わなくなるので、レジなど現金処理の設備がいらない、強盗も恐れなくていい。お客さんである私たちも、支払いが簡単になるだけでなく、現金を持ち歩いたり家に置いたりすることが減るので、泥棒やスリの被害は少なくなるはず。

松井:確かにそれは安心かも!

:しかも、お店側もさらにその人が何を買ったか、データでわかるようになる。すると、松井さんの買い物データを見て、松井さんの好みにあったサービスの情報を送れますよね。

松井:好みの情報が受け取れる! そういうメリットもあるんですね。

:反対にデメリットを挙げるなら、高齢者やデジタルが苦手な方はキャッシュレス化に追いつけない面があります。あとは、現金に比べてたくさん使ってしまうリスクも…。現金だとお金が減る“痛み”を実感するけど、カードなどではそれを感じにくいので、つい使いすぎてしまう。

松井:確かに、現金なら、お財布を見るだけでいくら使ったかわかるので「無駄遣いしないように」って思うかもしれませんね。

ただ、そのリスクを解消するために、最近はクレジットカードと連携するなど、スマホの家計簿アプリで自分の使った金額を「見える化」するサービスも増えていますよね。

松井:私も最近、家計簿アプリを使ってみたんです。やっぱりお金の使い方が見えるので、無駄遣いしないように意識できるし、安心につながると思いました。うまく使えば、キャッシュレスでも大丈夫かもしれません!

:松井さんのような若い世代は、始めからスマートフォンがある世界で育っているので、使ってみると、違和感なく使えるのでしょうね。やはり、今後、日本でも一気にキャッシュレスが進むかもしれませんね。

「働き方改革」

預金だけではダメ。「お金の管理」も改革しないといけない!?

では次に、「働き方改革」というキーワードについて考えてみたいと思います。働き方改革とは、どのようなものなんですか?

:細かい部分は色々ありますが、政府が目指しているのは、1つは長時間労働の是正ですよね。それにより、多くの人のワークライフバランス(仕事と生活の調和)を実現しようと。それとは別の目的もあって、「多様な働き方」ができる社会にしたいんですね。

松井:多様な働き方というのは?

:今は、人口が減っていて、労働者不足が大きな問題です。解決するには、高齢者や主婦の中で働く層をもっと増やしたいんですね。つまり、今まで働きにくかった人が働ける社会、多様な働き方が受け入れられる社会にしたいということなんです。

松井:逆に、働き方改革のデメリットってあるんですか?

:うーん、どこまで言っていいのか(笑)。僕は正直、この改革はあまり効果がないと思うんですよね。働き方改革で休みが増えるのは大切ですが、政府は同時に給料も上げたいわけです。ただ、給料を上げるには、企業や社員一人一人の生産性が上がらないといけないんですね。たとえば政府が「給料を上げろ」と言っても、企業はできないわけですよ、生産性が上がらないと。

松井:そうですよね。

:働き方改革により休みが増えても、それだけでは生産性は上がりません。一番大切なのは、増えた自由時間を何に使うか。高度なスキルや知識を身につけるとか、そうやって個人が生産性を高めないといけない。そこが一番大事なのに、政府が言うのは「残業時間が減る」「休みが増える」という点ばかり。だから、個人的には生産性を上げるための施策をセットでやるべきではないかと。

厳しいご意見ありがとうございます(笑)。とはいえ、この改革はワークライフバランスという言葉も出たように、自分のライフスタイルをどうするかという点にも関わってくる気がします。そこで聞きたいのですが、改革により「お金の管理」についても変えるべき部分はあるのでしょうか? たとえば、「給料の残りは銀行に預金する」方がまだ多いように感じますが、それで問題ないのでしょうか?

預金だけでは、間違いなく安心できないですね。というのも、今は日本全体の景気が良いのですが、それは長続きしません。むしろ、2020年以降はかなり景気が低空飛行になるかもしれない。

松井:え、そうなんですか……。

:しかも安倍政権では、「幼児教育の無償化」を掲げたり、社会保障を手厚くしようとしていますよね。でも、その方針が未来永劫続くとは考えられないんです。

松井:どうしてですか?

:理由は簡単で、日本は借金がおよそ1,000兆円あって、世界最悪のレベルなんです。財政赤字も、毎年30兆円以上出してるんですよ。しかも、2020年頃から“団塊の世代”がどんどん後期高齢者になる。この世代は人口が多いですから、年金などの支出が大幅に増えるんです。つまり、社会保障にかかるお金はもっと大きくなるということ。

松井:そうなると、日本はどうなっちゃうんですか?

:制度を維持するためには、どこかで社会保障の水準を引き下げざるを得ないですよね。ある試算では、年金の支給を今より2割ほど水準を下げないと維持できないとか。

松井:2割も! なんだか不安になってきました…。

:ですから、お金の管理がすごく大事になるんですね。景気が悪くなり、給料は上がらない。しかも社会保障の水準は下がる可能性がある。そこでは、自分の身を自分で守ることが大事なんです。

松井:具体的に、どうすればいいんですか?

:1つは、自分の生産性を上げて収入をアップする。そのために自分に投資する。それだけでは足りないので、もう1つは資産運用をしっかりしたほうがいいですね。この財政状況では年金などの水準がおそらく下がりますから、資産運用などをして「自分の身は自分で守る」ことができないとマズイかもしれませんね。

松井 咲子(まつい さきこ)

松井 咲子(まつい さきこ)

1990年、埼玉県生まれ。2015年までAKB48として活動。卒業後はテレビ、ラジオ、WEB、イベント等で幅広く活躍中。音大卒を活かし、音楽活動も積極的に展開している。また、ラジオ番組でのMC力には定評がある。

岸 博幸(きし ひろゆき)

岸 博幸(きし ひろゆき)

1962年、東京都生まれ。2001年、第1次小泉純一郎内閣の経済財政政策担当大臣だった竹中平蔵氏の大臣補佐官に就任。現在、慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科教授。政治経済についておもしろく誰にでも理解できるような解説が好評である。