マネーの座談会マネーの座談会
イラストレーション:黒猫まな子
#4 住宅購入、増税前と後どちらがいい?
2019年10月から10%に上がる消費税。増税にまつわる気になる疑問を、2人の主婦とファイナンシャルプランナーの座談会で解決していきます。第4回はマイホーム購入について。家を買うなら増税前後、どちらがいいか考えてみましょう。
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FP豊田
お金の疑問を解決してくれる主婦の味方。
ファイナンシャルプランナー。 -
ショウコさん
社会人経験豊富でお金の知識も人並み以上のワーキングマザー。
3歳の男の子のママ。 -
ヒカルさん
お金の知識はあまりないけど、元気いっぱいな新米専業主婦。
1歳の女の子のママ。
2019年10月から住宅ローン控除が13年間に!
- 増税の影響が最も大きいのが、住宅かもしれません。今回は、消費税増税をきっかけに、景気が落ち込まないように対策されている内容を整理し、ベターな住宅購入タイミングについて考えてみましょう。
- わが家でも、そろそろマンションを買いたいねって話していたんですが、なかなか手が届かないと思っていたところで今回の消費税アップ。もう諦めの境地です(涙目)。
- 現在の住宅ローン控除は、年末の住宅ローン残高に応じて、最大で年間40万円(長期優良住宅は最大50万円)の減税が10年間です。増税後は、表1のように消費税率10%が適用される物件のみ、住宅ローン控除期間が3年延長されます。11年目以降は、①住宅ローン残高の1%か、②建物購入価格(一般4,000万円、認定住宅等5,000万円まで)の2%分を3で割った額のいずれか低い方になります。
- てことは...消費税が上がって増えた2%分は、11~13年目に税金で戻って来るっていう理解で大丈夫でしょうか。
- 返し方にもよりますが、基本的にはそういうことですね。
- なーんだ、それなら諦める必要ないわね!
- ただ、「13年間」に延びるのは、居住開始が2020年12月までだという点をお忘れなく。
- はーい、わかりました。
表1 増税後の住宅ローン控除(消費税率10%が適用される物件の場合)
居住開始時期 | 2019年10月1日~2020年12月31日 |
---|---|
年末残高限度額 | 一般住宅:4,000万円 長期優良住宅:5,000万円 |
控除期間 | 13年間 |
控除率 | [1~10年目] 1% [11~13年目] 以下の①②のうちいずれか少ない方の金額 ①住宅ローン残高×1% ②建物購入価格×2%÷3年 |
※出典:国土交通省「すまい給付金」より
※個人間売買の中古住宅は非課税
「すまい給付金」も拡大!
- 消費税が10%に上がると同時に、「すまい給付金」も拡大します。
- 何ですかソレ?
- 住宅ローン控除はそもそも、年末の住宅ローン残高の10%について、所得税や一部住民税から還付を受ける仕組みですが、購入する物件に対して年収が十分に高くない、つまり十分に納税をしていないと、還付の恩恵を受けられません。それを補うための仕組みが「すまい給付金」です。
- あらステキ!どのくらい拡大するんでしょう?
- これまでは、年収510万円以下の人に最大30万円の給付でしたが、増税後は、年収775万円以下の人に最大50万円の給付となります(表2)。
- これは、住宅ローンを利用して家を買った人が対象なのですね?
- 50歳以上で一定要件を満たせば、現金一括で購入した場合も対象ですが、原則としてはそうです。
- 「すまい給付金」が対象にならない住宅もありますか?
- 鋭いご質問ですね。消費税の対象とならない個人間売買の中古住宅は、対象外です。中古住宅でも、業者から購入する場合は消費税がかかりますので、対象です。ただしこちらも、2021年12月31日までに引き渡された住宅が対象なので注意してください。
表2 すまい給付金の拡大
(引渡し時期:2019年10月1日~2021年12月31日まで)
増税前(消費税率8%)
収入額の目安 | 給付基礎額 |
---|---|
425万円以下 | 30万円 |
~475万円以下 | 20万円 |
~510万円以下 | 10万円 |
増税後(消費税率10%)
収入額の目安 | 給付基礎額 |
---|---|
450万円以下 | 50万円 |
~525万円以下 | 40万円 |
~600万円以下 | 30万円 |
~675万円以下 | 20万円 |
~775万円以下 | 10万円 |
※出典:国土交通省「住宅関連税制とすまい給付金 制度概要パンフレット」より
「次世代住宅ポイント制度」も要チェック!
- もう1つ、消費税が10%に上がるタイミングで、「次世代住宅ポイント制度」という制度もスタートします。該当すればさらにおトクです。
- あら、他にもあるんですね。どういう内容ですか?(目がキラーン)
- 消費税10%が適用される、エコ住宅や耐震住宅など一定性能を備えた住宅を新築したり、所定のリフォームをしたときにポイントがもらえます。
- 新築の購入でも、中古のリフォームでもいいんですね?
- はい。リフォームの場合でも、内容に応じてポイントがもらえます。
- どんなポイントなの?
- 「1ポイント=1円」換算で、商品と交換できるポイントです。新築で最大35万ポイント、リフォームで最大30万ポイントです。中古住宅を買ってリフォームする場合はポイント2倍になります。また、若者・子育て世帯によるリフォームは上限が45万ポイント、一定の既存住宅の購入に伴うリフォームの場合は上限を60万ポイントに引き上げられる特例もあります。
- すごい!どんな商品に交換できるんですか?
- 省エネや環境への配慮に優れた商品や、防災・健康・子育て・家事負担の軽減などに役立つ商品、あるいは地域振興に有効な商品などです。具体的な内容は、もう少しするとはっきりすると思います。
- もらったポイントを、価値ある商品に交換できるなら、ありがたいですね。
- ただしこちらも、請負契約や着工時期、引渡し時期などを確認する必要があります。詳細は国土交通省のサイトを確認してみてくださいね。
- はい!確認してみます!
表3 次世代住宅ポイント制度
住宅の新築(貸家除く)の場合
時期 | 2020年3月に請負契約・着工、2018年までに完成済み新築は2019年12月までに売買契約 |
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発行ポイント数 | 1戸あたり上限35万ポイント |
対象 | 以下の①~④いずれかに適合する場合、1戸あたり30万ポイント ※性能を引き上げたり、家事負担を軽減する設備(ビルトイン食洗機など)を設置したり、耐震性のない住宅を建て替えた場合はポイント加算 ①エコ住宅 ②長持ち住宅 ③耐震住宅 ④バリアフリー住宅 |
住宅のリフォーム(貸家を含む)の場合
時期 | 2020年3月までに請負契約・着工 |
---|---|
発行ポイント数 | 1戸あたり上限30万ポイント |
対象 |
①窓・ドアの断熱改修開 ②外壁、屋根・天井または床の断熱改修 ③エコ住宅設備の設置 ④耐震改修 ⑤バリアフリー改修 ⑥家事負担軽減に資する設備の設置 ⑦若者・子育て世帯が既存住宅を購入して行う一定規模以上のリフォーム工事 など ※若者・子育て世帯によるリフォームは上限が45万ポイント、一定の既存住宅の購入に伴うリフォームの場合は上限を60万ポイントに引き上げ |
※出典:国土交通省「次世代住宅ポイント制度の概要について」より
金利や不動産価格の変動などにも注意!
- 3つの制度があるから、消費増税前の購入を焦る必要はないってことですか?
- 増税分が住宅ローン控除で相殺されるなら、すまい給付金の拡大や次世代住宅ポイントの分はプラスと考えられるので、「増税前に」と焦る必要はありません。ですが、住宅ローン控除が13年間利用できるタイミングは「2020年12月31日までに居住開始」のため、増税後の購入については、新築や業者からの中古購入の場合はそのスケジュールが肝になりますね。
- うちはダンナと相談して、新築なら住宅ローン控除13年狙います。
- 狙うって、すごい真剣(笑)。大丈夫?
- ヒカルさんの言う通りです。狙い過ぎると、業者にせかされて買うことになったりするので、制度に振り回されずに判断してくださいね。
- はい。他に何か注意することってありますか?
- 住宅ローンの金利や不動産価格の動きなども、長期的には有利・不利に影響します。金利はしばらく低そうですが、不動産価格が今度どうなるかは、誰にもわかりません。それ以上に、物件は「出会い」なので、予算の範囲で納得できる物件に出会えるか、たくさん見ることをオススメします。資金計画をしっかりたてて、予算の範囲で検討することをお忘れなく!
- はい、今夜しっかりダンナと話し合ってみます。
- うちも親と夫に相談してみようかな~。
- よい物件と出会えることを祈ってます!
まとめ
消費増税後も住宅取得を促進するために、手厚い負担軽減のための制度が用意されています。そのため、増税前に駆け込み購入に走る必要はないようです。こうした制度だけでなく、金利動向や不動産価格の動きなどにも注意を払いつつ検討しましょう。資金計画と納得できる物件と出会えるかどうかで購入のタイミングを見極めてください。
※2019年6月現在の情報です。今後、変更されることもありますのでご留意ください。
執筆:ファイナンシャルプランナー 豊田 眞弓(とよだ まゆみ)