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#4 退職金の平均・相場は? 勤続年数・企業規模・業種・学歴別に紹介

退職金の額は、勤続年数や企業規模、業種、学歴によって異なります。退職金制度は法律ではなく勤務先の就業規則によって定められており、支給の要件や計算方法もそれに則っているからです。
そこでこの記事では、退職金の相場を勤続年数や企業規模、業種、学歴などのさまざまな視点から紹介していきます。
勤続年数・企業規模・業種・学歴別で見る退職金の相場
・勤続年数別で見る退職金の相場
まずは、勤続年数別の退職金の相場から確認しましょう。企業規模により平均が大きく異なるため、大企業と中小企業のデータを分けて紹介します。


いずれも勤続年数を重ねるほど、金額が高くなっていること、中小企業の退職金は、大企業の一般職よりも低いことがわかります。大企業にお勤めの方は、3年未満では退職金がもらえない場合が多く、3年目以降は、一般職であれば中小企業の1.5倍以上、総合職であれば2倍以上が相場です。
・企業規模別で見る退職金の相場
次に、企業規模別の相場を確認しましょう。以下の表は、勤続20年以上かつ年齢45歳以上の方の退職金の平均を企業規模別にまとめたものです。

企業の規模が大きくなっていくほど、退職金の支給額も増えているのが分かります。特に従業員数30〜99人の企業の自己都合による退職金の平均は、1,000人以上の企業の平均の半分以下です。
・業種別で見る退職金の相場
次に業種別で退職金の相場を確認していきましょう。

このように、業界によって大きな差があります。具体的には、定年退職では最低が銀行の1,042万円、最高が海運・倉庫の3,375万円、自己都合では、最低が銀行の99万円、最大が商事の1,548万円と、大きな開きがあることがわかります。
・学歴別で見る退職金の相場
最後に、学歴別の退職金の額を確認していきましょう。以下は、勤続20年以上かつ45歳以上の方の平均給付額をまとめたものです。

大学・大学院卒の方が、高校卒と比較して全体的に退職金の平均額が高いため、退職金の額は学歴にも大きく影響されることが分かります。
ここまで確認いただいたことで、ご自身の会社における退職金の相場が分かったのではないでしょうか。次は、実際に退職金の額を計算する方法をお伝えします。
わたしの退職金はいくら? 計算方法とかかる税金を簡単解説
・ポイント制でシミュレーション
退職金の計算方法にはいくつかの種類があります。ここでは、大企業を中心に近年導入する企業が増えている「ポイント制」を用いて計算していきましょう。
ポイント制とは、退職するまでに獲得した退職金ポイントに、ポイント単価や支給率をかけて退職金の額が決まる計算方法です。計算式は以下の通りです。
「退職金=退職金ポイントの累積 × ポイント単価 × 支給率」
ポイントは、勤続年数や業績、肩書、資格などによって加算される場合があります。
今回の試算では、勤続30年のAさんが自己都合退職する場合の退職金を計算してみましょう。
●退職時点でのポイント累積:1,450P
毎年付与されるポイント(25P × 30年)+職能・等級での加算ポイント(700P)
●ポイント単価:10,000円
●支給率:0.6
上記の条件で退職金の額を計算すると以下のようになります。
退職金=1,450P × 10,000円 × 0.6
=870万円
ただし、退職金は上記で計算した金額の全てを受け取れるわけではありません。退職金も給与と同じように税金がかかるためです。
・退職金にかかる税金の計算方法
受け取った退職金には、所得税や住民税がかかります。所得税や住民税は、年間の所得の額に応じて課税される税金ですので、退職金の額が高いほど課税される可能性が高くなります。
ただし、受け取った退職金の全てが課税の対象になるわけではありません。
たとえば退職金を一括で受け取った場合、勤務先に「退職所得の受給に関する申告書」を提出していれば、受け取った退職金の額から「退職所得控除」を差し引いた残りの半分に課税されます。
退職所得控除は、以下のように勤続年数によって変わる仕組みです。
●勤続20年以下の場合:40万円 × 勤続年数
※80万円に満たない場合は80万円
●勤続20年超の場合:800万円+(勤続年数-20年)✕70万円
先ほどのAさんの退職所得控除は、以下のようになります。
退職所得控除=800万円+(30年-20年)✕70万円
=1,500万円
退職金の額が870万円の場合、退職所得控除の範囲内となり、所得税や住民税などの税金はかからない結果となりました。
仮にAさんの退職金の額が2,000万円だった場合、(2,000万円−1,500万円)÷2=250万円となり、250万円に対して所得税は約16万円、住民税は25万円かかります。
退職金の計算方法や税金の詳細はこちらの記事で説明しています。
近年の退職金事情は? 「退職金があるから老後は安心」と油断するべからず!
退職金の相場や計算方法が分かっても「自分の場合はもらえるのだろうか」と不安になる方も多いと思います。実は、今後は退職金に頼らずに自分自身の力で老後の資金を確保する必要性が高くなりつつあります。
・退職金制度がある企業や退職金の支給額は年々低下している
退職金制度を導入している企業の割合や退職金の平均は、以下のように年々低下しています。

※退職金の平均支給額は、大学・大学院卒の方の1人あたりの定年退職における退職金の支給額
退職金制度がある企業の割合は、2003年と2018年を比べると約9%低下。退職金の平均は、2003年と2018年を比較すると711万円も低下しています。
退職金の導入率や支給額が低下した背景には、少子高齢化をはじめ、低金利の影響で会社が退職金の財源を作るために行う運用がうまくいかないことなど、さまざまな要因があるのです。
・退職金制度の内容も変化している
従来の退職金は年功型で「長く働くこと」が退職金の額を増やす方法でした。ところが、2000年前後から、ポイント制のような成果主義型の退職金を導入する企業が増加しています。
成果主義型は「結果を残すこと・昇進すること」によって退職金の額が増える仕組みですが、管理職になれる人数は限られます。会社は退職金制度を成果主義型に移行することで、退職金の支給額が全体的に下がるように調整したと言えます。
また近年は、企業年金制度に「企業型確定拠出年金(企業型DC)」を導入している企業も増えてきました。企業型確定拠出年金とは、従業員の退職金のために会社が拠出した掛金の運用先を、従業員自身が指定する年金です。
企業型確定拠出年金では、掛金の運用にともなうリスクを従業員が負うため、会社は運用で損失が出ても補填しなくてよくなります。そして、企業型確定拠出年金で多くの退職金を準備するためには、自分自身で投資をある程度勉強して運用する必要があるのです。
・退職金に頼らず自分自身で老後資金を準備することも大切
会社が退職金の額を減らしているということは、会社が退職金制度を維持することが難しくなっているといえます。そのため、老後の生活をより豊かなものにするには、自分自身でも老後の資金を貯めることが大切です。
例えば、iDeCo(イデコ、個人型確定拠出年金)に加入することで、老後資金を準備できます。iDeCoで拠出できる金額の上限は、勤務先の退職金制度によって異なるため確認してみましょう。iDeCoの上限額については、こちらの記事で確認できます。
【関連記事】iDeCo(イデコ)ってなに? ~基本をイラストで理解しよう~
また、老後資金を準備する方法は、iDeCo以外にも個人年金保険などの貯蓄性保険や、NISA(少額投資非課税制度)などさまざまな方法があります。あなたに合った準備方法を選んでみてください。
※この記事は2020年3月時点の情報を基に作成しています。今後、変更されることもありますのでご留意ください。