
退職金のすべて。
2020.7.27
あなたの会社に退職金制度はありますか?
退職金はもらえるに越したことはないでしょう。しかし、今の日本では、「退職金制度がない会社」がじわじわ増えてきています。
退職金制度のない会社はどのくらいなのでしょうか。また退職金制度がない場合、老後に向けてどんな準備が必要なのでしょうか。
この記事では、退職金がない会社の割合や、どういった準備が必要かについて、わかりやすく解説していきます。
昔(1997年頃)は、会社に退職金制度があることが当たり前でした。
しかし2018年には、退職金制度のない会社の割合が、全体の約5分の1を占めています。
また、退職金制度があっても退職金水準が低下している会社も多くなっています。
「自分の会社には退職金制度がないので、違法では?」と思う方もいらっしゃるかもしれませんが、法律での支払い義務はないので違法ではありません。
ただし、会社の規程に「退職金制度あり」と記載がある場合には支払い義務がありますので、気になる方は就業規則を確認しましょう。
また「退職金制度がない会社で働くなんて損だ」と思う方もいらっしゃるかもしれませんが、そうとも限りません。
会社に退職金制度がない場合、老後生活が不安になる方も多いでしょう。
そこでここでは、老後の収支を具体的にシミュレーションしていきましょう。
今回は、2人暮らしの夫婦を例にします。
・夫(65歳)、妻(60歳)の2人暮らしで、子供は独立
・夫は会社員として38年間勤務し、平均収入550万円
・妻は大卒後すぐ結婚し、専業主婦
・2人とも65歳から年金を受給し、日本人の平均寿命(男性81.25歳・女性87.32歳)まで生存すると想定
まずは、夫婦がもらえる年金額について計算しましょう。
今回の例で、夫婦が受け取れる年金総額は下記の通りです。
① 夫の厚生年金受給額:190.8万円×16年間=3,052.8万円
② 妻の国民年金受給額:74.1万円×27年間=2,000.7万円
③ 妻の遺族年金受給額:87.3万円×11年間=960.3万円
*夫の厚生年金受給額には国民年金分も含みます。
*遺族年金受給額は、夫の厚生年金(国民年金除く)の4分3です。
①+②+③=6,013.8万円
いくら年金がもらえるのかの詳細は、こちらの記事を参考にしてください。
【関連記事】年金の受給額~わたしはいくらもらえる?年代・年収・職業別に解説~
次に、夫婦2人の生活費について考えます。
生命保険文化センターの調査によると、夫婦2人の老後の最低日常生活費は、毎月約22.1万円です。
しかし最低限の生活費だと「人付き合い」や「趣味」などの余剰的なことは考慮されていませんし、突発的な出費にも対応する必要があるので、ある程度の余裕を持たせる必要があります。
今現在65歳以上の夫婦の生活費の平均は約27万円です。
今回の例では、2人とも日本人の平均寿命で亡くなることを想定しているので、夫の定年後から2人で一緒に生活するのは21年間です。
このことから、夫婦が一緒に過ごす21年間の老後の日常生活費は、下記の通りです。
{(27万円/月)×12ヶ月}×21年=約6,804万円
ここから更に、夫が亡くなってから妻が1人で生活することも考える必要があります。
今現在65歳以上の単身の生活費の平均は約16万円です。
このことから、残された妻が1人で生活するのに必要な金額は下記の通りです。
{(16万円)×12ヶ月}×11年間=約2,112万円
これらを踏まえ、夫婦が老後にいくら貯金しておく必要があるかというと、
(夫婦2人の生活費6,804万円+妻の生活費2,112万円)-年金総額6,013.8万円
=約2,902.2万円です。
今回の例はあくまで平均値として参考にしてください。
平均寿命まで生きた場合、収支シミュレーションをするとマイナスになることがわかりました。
だからと言って悲観する必要はありません。
マイナスを補う方法のひとつとして、自分で自分の老後資金を用意する「iDeCo(イデコ)」という制度があります。正式名称は「個人型確定拠出年金」です。
iDeCoは、自分で掛金を支払い、自分で運用方法を選び、原則60歳以降に積み立て額を受け取ります。掛金は月5,000円からとお手軽で、掛金を支払ったときも、運用中も、受け取るときにも税金が安くなることが最大のメリットです。
運用方法は定期預金や保険だけでなく、投資信託のような投資性商品も選ぶことができ、運用結果により元本(掛金の総額)を上回り利益が出る可能性も、下回って損をしてしまう可能性もあるので注意が必要です。
そのため、「商品(運用方法)」や「金融機関」の選び方はとても大切です。まずは商品を決め、その商品を取り扱っている金融機関で口座を開くようにしましょう。
商品と金融機関の選び方の詳細はこちらの記事で説明しています。
【関連記事】iDeCo(イデコ)でおすすめの商品・金融機関はどれ? 具体的な選び方を解説
自分で老後資金を用意する方法として、iDeCoをご紹介しましたが、他にも下記のような準備方法があります。
■個人年金保険
保険会社に毎月掛け金を払い、一般的に65歳以降に「一時金」または「年金」としてお金を受け取ることができます。国からもらえる年金(公的年金)に対して、私的年金とも言われます。
iDeCoと似ていますが、iDeCoは運用次第で金額が変わるため、加入時に「将来いくらもらえるか」がわかりません。
円建ての個人年金保険であれば、加入時に「将来いくらもらえるか」がわかります。円建てとは、日本円で保険料を支払い、日本円で年金を受け取ることを言います。
■終身保険
終身保険は生命保険の一種で貯蓄性があり、解約すると解約返戻金があるものがほとんどです。この解約返戻金を老後資金として活用することも可能です。
■つみたてNISA
iDeCoのように毎月の投資が可能で、最低投資金額は金融機関により異なります。
年間の投資上限額は40万円です。
積み立てたお金は、老後資金として利用することができますが、運用期間が20年以内である点に注意が必要です。
iDeCoとの主な違いは、下記のとおりです。
・所得控除…iDeCoは掛け金全額が所得控除の対象ですが、つみたてNISAは対象外
・資産の引き出し…iDeCoは原則60歳までは不可ですが、つみたてNISAはいつでも可
・運用の非課税期間…iDeCoは60歳までですが、つみたてNISAは20年間
いずれにしても、退職金として自分でお金を用意する場合、開始時期は早ければ早いほど良いと言えます。
以下の図を見てもらうと、同じ金額を貯める場合、早い時期から始めた方が無理なく貯められることがわかります。
※この記事は2020年3月現在の情報を基に作成しています。今後、変更されることもありますのでご留意ください。
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