退職金のない会社は3分の1!?

退職金がない会社の割合

昔(1997年頃)は、会社に退職金制度があることが当たり前でした。
しかし、東京都産業労働局によると、2020年の中小企業における退職金制度を導入していない企業の割合は34.1%にのぼるという調査結果がありました。退職金制度のない中小企業の割合が、およそ3社に1社ほどあるということです。

中小企業における退職金制度の有無_退職金5
  • 出典:東京都産業労働局「中小企業の賃金・退職金事情(令和2年版)」

また、退職金制度があっても退職金水準が徐々に低下している会社も多くなっています。

中小企業におけるモデル退職金の推移(大学卒・定年)
  • 出典:東京都産業労働局「中小企業の賃金・退職金事情」

「自分の会社には退職金制度がないので、違法では?」と思う方もいらっしゃるかもしれませんが、法律での支払い義務はないので違法ではありません。
ただし、会社の規程に「退職金制度あり」と記載がある場合には支払い義務がありますので、気になる方は就業規則を確認しましょう。

退職金制度を導入している、あるいは支給額が減ってきている一方で、企業型確定拠出年金(DC)を導入している企業は増えてきています。企業型確定拠出年金について詳しく知りたい方は、以下の記事もぜひ読んでみてください。

【関連記事】退職金と確定拠出年金の違い? 退職金もらえないとなる前に制度や活用方法を理解しよう

▼三井住友銀行の企業型拠出年金を知りたいへ
企業型確定拠出年金 : 三井住友銀行 (smbc.co.jp)

なかには、「退職金制度がない会社で働くなんて損だ」と思う方もいらっしゃるかもしれませんが、そうとも限りません。以下では、退職金のない会社で働く際のメリットをみてみましょう。

退職金制度のない会社で働く3つのメリット

@ 給与・賞与が高い傾向にある

退職金制度のある会社は、退職金を支払うために毎月の「給与」や「賞与」をおさえ、その分を別に積み立てて準備しています。
退職金制度のない会社ではその必要がないため、給与や賞与が高い傾向にあります。

A 転職をした(する)方に向いている

退職金は、同じ会社で長く働くほどもらえる金額が多くなります。
逆に転職をした(する)方にとっては、転職した時点から退職金の積み立てがスタートするので、もらえる金額が少なくなります。
転職をした(する)方は、退職金がなくても給与や賞与が高めの会社で働き、自分で退職金を用意する方が得だと言えます。

B 退職金カット・減額などの予期せぬ事態に影響されない

退職金制度があっても、会社の「業績悪化」や「倒産」などの予期せぬ事態により、退職金カットや減額になることがあります。
最初から退職金制度がない会社で働いていれば、このようなことに影響されることはありません。

退職金のない会社で働くデメリット

退職金制度がない場合、老後の生活は年金とそれまでの貯蓄だけが頼りになります。平均寿命が延びている関係上、老後に使えるお金が退職金として支給されないことについては、大きな影響があると考えてよいでしょう。
退職金が支給されない場合、年金はいくらもらえるのか、老後の生活費はどのくらいなのかをしっかり確認しておきましょう。
以下のページで将来の年金額を試算することができますので、ぜひ活用してみてください。

▼年金額をシミュレーションしてみよう!
三井住友銀行:年金シミュレーション

退職金がないと老後生活はどうなる?

夫婦の老後生活をシミュレーションしよう

会社に退職金制度がない場合、老後生活が不安になる方も多いでしょう。
そこでここでは、老後の収支を具体的にシミュレーションしていきましょう。

今回は、2人暮らしの夫婦を例にします。

  • 夫(65歳)、妻(60歳)の2人暮らしで、子供は独立
  • 夫は会社員として38年間勤務し、平均収入550万円
  • 妻は大卒後すぐ結婚し、専業主婦
  • 2人とも65歳から年金を受給し、日本人の平均寿命(男性81.25歳・女性87.32歳)まで生存すると想定

まずは、夫婦がもらえる年金額について計算しましょう。
今回の例で、夫婦が受け取れる年金総額は下記の通りです。

  • @ 夫の厚生年金受給額:190.8万円×16年間=3,052.8万円
  • A 妻の国民年金受給額:74.1万円×27年間=2,000.7万円
  • B 妻の遺族年金受給額:87.3万円×11年間=960.3万円
  • *夫の厚生年金受給額には国民年金分も含みます。
  • *遺族年金受給額は、夫の厚生年金(国民年金除く)の4分3です。

@+A+B=6,013.8万円…C

いくら年金がもらえるのかの詳細は、こちらの記事を参考にしてください。

【関連記事】年金の受給額〜わたしはいくらもらえる?年代・年収・職業別に解説〜

次に、夫婦2人の生活費について考えます。

生命保険文化センターの調査によると、夫婦2人の老後の最低日常生活費は、毎月約22.1万円です。
しかし最低限の生活費だと「人付き合い」や「趣味」などの余剰的なことは考慮されていませんし、突発的な出費にも対応する必要があるので、ある程度の余裕を持たせる必要があります。
今現在65歳以上の夫婦の生活費の平均は約27万円です。

今回の例では、2人とも日本人の平均寿命で亡くなることを想定しているので、夫の定年後から2人で一緒に生活するのは21年間です。

このことから、夫婦が一緒に過ごす21年間の老後の日常生活費は、下記の通りです。

{(27万円/月)×12ヶ月}×21年=約6,804万円…D

ここから更に、夫が亡くなってから妻が1人で生活することも考える必要があります。
今現在65歳以上の単身の生活費の平均は約16万円です。

このことから、残された妻が1人で生活するのに必要な金額は下記の通りです。

{(16万円)×12ヶ月}×11年間=約2,112万円…E

これらを踏まえ、夫婦が老後にいくら貯金しておく必要があるかというと、
(D夫婦2人の生活費6,804万円 + E妻の生活費2,112万円)- C年金総額6,013.8万円
=約2,902.2万円です。

今回の例はあくまで平均値として参考にしてください。

自分で自分の退職金を用意する制度、iDeCo

コツコツ老後資金を積み立てながら、税金も安くなる!

平均寿命まで生きた場合、収支シミュレーションをするとマイナスになることがわかりました。

だからと言って悲観する必要はありません。
マイナスを補う方法のひとつとして、自分で自分の老後資金を用意する「iDeCo(イデコ)」という制度があります。正式名称は「個人型確定拠出年金」です。

iDeCoは、自分で掛金を支払い、自分で運用方法を選び、原則60歳以降に積み立て額を受け取ります。掛金は月5,000円からとお手軽で、掛金を支払ったときも、運用中も、受け取るときにも税金が安くなることが最大のメリットです。

運用方法は定期預金や保険だけでなく、投資信託のような投資性商品も選ぶことができ、運用結果により元本(掛金の総額)を上回り利益が出る可能性も、下回って損をしてしまう可能性もあるので注意が必要です。

そのため、「商品(運用方法)」や「金融機関」の選び方はとても大切です。まずは商品を決め、その商品を取り扱っている金融機関で口座を開くようにしましょう。

商品と金融機関の選び方の詳細はこちらの記事で説明しています。

【関連記事】iDeCo(イデコ)でおすすめの商品・金融機関はどれ? 具体的な選び方を解説

▼動画でもわかりやすく解説!
三井住友銀行のiDeCo

老後資金の対策は早く始めよう!

iDeCo以外のおすすめ対策法

自分で老後資金を用意する方法として、iDeCoをご紹介しましたが、他にも下記のような準備方法があります。

■副業やダブルワーク

定年後にもらえる退職金がなく老後資金に不安が残る場合は、現役のうちから副業やダブルワークなどを行って収入を得る場所を増やすことも重要です。
ライティングやWEBデザインなど、スキルを活かせるものや、お小遣いサイトやポイント活動などスキマ時間を使って取り組むことができるものもあります。
いつまでにいくら貯める、という目標を立てて、取り組みやすいものがあれば取り組んでみるのがよいでしょう。

■個人年金保険

保険会社に毎月掛け金を払い、一般的に65歳以降に「一時金」または「年金」としてお金を受け取ることができます。国からもらえる年金(公的年金)に対して、私的年金とも言われます。

iDeCoと似ていますが、iDeCoは運用次第で金額が変わるため、加入時に「将来いくらもらえるか」がわかりません。
円建ての個人年金保険であれば、加入時に「将来いくらもらえるか」がわかります。円建てとは、日本円で保険料を支払い、日本円で年金を受け取ることを言います。

▼個人年金を考えている方へ
三井住友銀行の個人年金保険

■終身保険

終身保険は生命保険の一種で貯蓄性があり、解約すると解約返戻金があるものがほとんどです。この解約返戻金を老後資金として活用することも可能です。

▼万が一のことがあった際の保障を一生涯確保できる!
三井住友銀行の終身保険

■つみたてNISA

つみたてNISAとは、2018年1月よりスタートした少額投資非課税制度です。少額から積立投資を始めることができるため、投資経験の少ない人も資産運用を始めやすい非課税制度です。長期・積立・分散投資によってリスクを抑えた運用ができることも特徴です。
iDeCoのように毎月の投資が可能で、最低投資金額は金融機関により異なります。
年間の投資上限額は40万円です。
積み立てたお金は、老後資金として利用することができますが、運用期間が20年以内である点に注意が必要です。

iDeCoとの主な違いは、下記のとおりです。

  • 所得控除…iDeCoは掛け金全額が所得控除の対象ですが、つみたてNISAは対象外
  • 資産の引き出し…iDeCoは原則60歳までは不可ですが、つみたてNISAはいつでも可
  • 運用の非課税期間…iDeCoは60歳までですが、つみたてNISAは20年間

いずれにしても、退職金として自分でお金を用意する場合、開始時期は早ければ早いほど良いと言えます。
以下の図を見てもらうと、同じ金額を貯める場合、早い時期から始めた方が無理なく貯められることがわかります。

3,000万円貯めるための積み立て額は月いくら?

▼「つみたてNISA」制度のポイントを詳しく知りたい方へ
三井住友銀行のつみたてNISA

まとめ

今回は、退職金なしの会社で働く場合のメリットや、どういった準備が必要かについて解説しました。

「うちの会社は退職金がないから損だ!」と一概に判断せず、 給与や賞与、働く期間などを総合的に見て判断することが必要です。

予期せぬ倒産・業績悪化などもありますから、むしろ会社から支給される退職金を最初からあてにせずに、自分で老後資金を用意する方が結果的に良かったということになるかもしれません。

退職金制度のない会社で働く方は、 iDeCo(イデコ)などを活用して早めに老後資金の準備をはじめましょう。

  • この記事は2020年3月現在の情報を基に作成した内容を、2022年12月に更新して掲載しています。今後、変更されることもありますのでご留意ください。

小野寺 徳美(おのでら なるみ)

2児の母の経験から、家庭の節約術などを得意とするファイナンシャルプランナー。大学時代には地理学を専攻し、マーケティングについての研究を行う。その時の経験から派生し「顧客が求めるものは何か?」「どのように最適な形にするか?」といった分析・考え方を得意とする。ファイナンシャル・プランニング技能士2級。

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