「積立投資の先輩」に突撃取材! 投資を始めたきっかけや商品の選び方、気になる運用益などに切り込む企画「#私の積立スタイル」。投資を始めた人の話とFPの高山先生のアドバイスに耳を傾ければ、きっとあなたにあった運用の形が見つかるはずです。
第5回は、コンサル会社に勤務するYさんに話をお聞きしました。独身で実家暮らしのYさんにとって、子育てなどのライフイベントはまだイメージできない様子。そこで、独身の今だからこそできる投資について、高山先生からアドバイスをいただきました。
Yさん
27歳、コンサル会社の営業職。神奈川県にある実家で暮らしている。積立投資を始めたきっかけは、SNSで若手投資家の記事を読んだこと。
START
先取り貯蓄はしていたものの、投資は口座開設で止まったまま……
――Yさんは社会人になってから貯蓄を始めたそうですね。
Yさん「はい。もともと趣味の音楽や旅行にお金を使うくらいで、学生時代のころから散財することはありませんでした。社会人になってもその意識は変わらず、コロナ禍でさらにお金を使わなくなったくらいです。実家暮らしなので、生活費なども少なく済んでいます」
――貯蓄はいかがですか?
Yさん「毎月5万円を別の口座に移して、使わないようにしていました」
――投資への興味は?
Yさん「父から投資をすすめられたこともあって、以前から興味はありました。そこで、まずは株を買おうと思って証券会社に口座を開いたのですが、どの銘柄を買えばわからず……。開設から1年以上は放置してしまいました」
高山先生「口座開設や銘柄選びなどで迷ってしまうのは、初心者の方によくあることかもしれませんね」

- 高山先生のワンポイントアドバイス
・毎月決めた額を貯蓄したいなら、Yさんのように別の口座に移したり、先取り貯蓄をしたりするとよいでしょう。
・口座開設には申請から1~2週間ほどかかるので、投資の意欲が落ち着いてしまい、放置してしまう方もしばしば。積立投資は早くから始めるほど複利効果が狙え、お金が増えるスピードが加速します。投資の目的を思い出して、まずは行動することが大切です。
HAPPENING
SNSで若手投資家の記事を読み、つみたてNISAをスタート!
――そんなYさんが投資を始めたきっかけは?
Yさん「コロナが流行し始めた2年前(2020年)、SNSである投資家の記事を読んでスタートしました。もともと『将来は年金がもらえないかも』という漠然とした不安がありましたし、コロナ禍も相まって、今のうちから備えることが必要だなと。放置していた口座の存在を思い出し、つみたてNISAを選びました」
――初めての投資に不安はありませんでしたか?
Yさん「僕は納得しないと動けないタイプなのですが、その記事はとてもわかりやすく、投資の仕組みを理解できました。特に、つみたてNISAは税制が優遇されるなどメリットが多いし、国の制度で長期運用に適していることを知って、自分に合っていると思いました」
高山先生「最初から長期運用を考えていたのですね。今もSNSで情報を集めていますか?」
Yさん「はい、投資家やFPの先生が発信している情報をチェックしています。自分なりに調べて真偽を見定めながら、取捨選択していますね」

- ▼高山先生のワンポイントアドバイス
・つみたてNISAは税制優遇の恩恵を受けながら、長期、積立、分散投資ができるので、安定した資産形成につながります。初心者におすすめの制度です。
・投資にまつわる情報は、正しいものから誤っているものまでさまざま。SNSなどで積極的に情報収集するのもよいですが、すべてを鵜呑みにするのではなく、自分の中できちんと整理、納得することが大切です。
TURNING
つみたてNISAの次は、米国株? iDeCo?
――つみたてNISAのポートフォリオを教えてください。
Yさん「SNSの情報を参考に、米国株インデックスファンドと全世界株インデックスファンドを1.5万円ずつ積み立てています。値動きを確認するのは1週間に1回程度ですが、すでに12万円ほどの利益が出ていました。預金するだけだと資産がほとんど増えないので、すごく嬉しいです」
――今後、挑戦してみたい投資はありますか?
Yさん「つみたてNISAと預金、実家に入れているお金やその他の出費を合わせても、毎月5~6万程度のゆとりがあります。このお金で米国株取引にも挑戦してみたいのですが、銘柄選びに迷ってしまいそうです」
高山先生「順番としては、つみたてNISAと同じように税制の優遇があるiDeCoをおすすめします。所得税や住民税が軽減され、その方の所得や掛金にもよりますが、一般的に年間で数万円節税できることが多いですよ。なお、企業型DCに加入している場合、iDeCoを同時に始めるには様々な条件を満たす必要があります。ただし、2022年10月からは併用条件が緩和されるため、企業型DCに加入していてもiDeCoに加入しやすくなります。今から加入の計画を立てつつ、米国株はその次の投資方法として考えるのがよいでしょう」
Yさん「iDeCoの名前はよく聞くのですが、そんなに節税できるとは知りませんでした!」
高山先生「ただし、運用した年金を受け取れるのは原則として60歳以降。20代のYさんには遠い未来のように感じられるかもしれませんが、老後資金のことも考えて今から積み立てておくとよいですよ」
Yさん「まさに、投資を始めたきっかけが『老後資金に対する不安』という僕にはピッタリですね」

- ▼高山先生のワンポイントアドバイス
・米国株に投資しているインデックスファンドのみだと、万が一米国株が暴落したときに資産のダメージが大きいので、世界中の株式に投資しているインデックスファンドを加えることで、資産の目減りリスクを抑えられるでしょう。
・iDeCoは年金制度の一つで、自分で掛金額や運用先を選び、資産を形成していきます。掛金の全額が所得控除になり、所得税、住民税や住民税が軽減されるなどのメリットがあります。
FUTURE
「将来への備え」を今から行うために、積立投資を活用しよう!
――積立投資を続ける上で大切にしていることは?
Yさん「特別なポリシーはないのですが、一つだけ大切にしていることがあります。それは、値動きを見て一喜一憂しないことです。また、僕はまだ結婚していないし、子育てやマイホーム購入などのライフイベントは30代以降になると思っています。それでも、今のうちにできることを自分なりのペースで準備していきたいです」
高山先生「Yさんは、長期投資を行う上で最も大切なポイントをわかっていらっしゃいますね。今から将来を考えて備えるのは、とてもよいこと。合わせて、『自分が理想とする人生』をイメージしておくとよいかもしれません」
Yさん「ありがとうございます。理想の人生を歩んでいけるよう、これからも投資を積極的に活用していきます!」

- ▼高山先生のワンポイントアドバイス
・独身の方は、今後の人生をイメージしてみては。子育てやマイホーム購入にどれくらいお金がかかるか予測しておくと、貯蓄や投資の目標が立てやすくなります。
・毎月の預金額は、手取りの2割程度を目標にするとよいでしょう。5年続ければ、年収分の貯蓄ができます。
高山先生のSUMMARY
将来に対して漠然とした不安があるなら、まずは行動!
初めての投資で「つみたてNISA」を選び、値動きにも一喜一憂せず、じっくり構えて投資を続けていきたいとおっしゃっていたYさん。SNSで下調べを行い、投資の仕組みや特徴を十分に理解し納得してから始めるなど、模範的な動きをされています。
一喜一憂せず心にゆとりをもって投資を続けていくこと。これから投資を始めたいと思っている方も、この点をぜひ心掛けてください。
また、Yさんが投資を始めたきっかけは「将来への不安」といいます。特に若い世代の方は、コロナ禍により先行き不透明な時代になったことで、備えへのマインドが高まったのではないでしょうか。何から始めたらいいのかわからずに手がつけられていないという方こそ、長期で行うことでメリットが大きくなる積立投資をまずは選んでみてはいかがでしょうか。
Yさんは20代とまだ若いので、これから先、20年30年と積立投資を続けていくことで、資産を大きく増やせるでしょう。「今後のライフイベントを想定して、独身の今のうちにできる準備をしていきたい」と話していらっしゃいましたが、コツコツ派のYさんなら、きっと理想の人生を実現することができると思います。
※2022年3月現在の情報です。今後、変更されることもありますのでご留意ください。
高山 一恵(たかやま かずえ)
ファイナンシャルプランナー(CFP)、一級FP技能士。株式会社Money&You取締役。
全国での講演活動、執筆、マネー相談を通じて、女性の人生に不可欠なお金の知識を伝えている。女性向けWEBメディア『FP Cafe®』や『Mocha』も運営。また、『Money&You TV』や「マネラジ。」「Voicy」などでも情報を発信している。 主な書籍には、「はじめてのNISA &iDeCo」(成美堂出版)「1日1分読むだけで身につく お金大全100」(自由国民社)」「はじめのお金の基本」(成美堂出版)「マンガと図解 はじめてのFIRE」(宝島社)などがある。
Money&You:
https://moneyandyou.jp/